第十一話
「ほざけ!ガキのくせによ!」
アルハンドリア目掛けて騎士の剣が振り下ろされる
今にもその剣がアルハンドリアを切り裂くかと思われた瞬間
「何!?」
急激に剣が赤熱、そのまま刃の中程から蒸発してしまった
あまりの出来事に固まってしまった騎士にアルハンドリアが声をかける
「何ぼうっとしてるんだい♪」
「へ?な、あ…ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」
アルハンドリアが騎士に触れるとたちまち騎士の身体が高温の炎に包まれる
その炎の余りの温度に装備していた鎧はドロドロに溶け、それすらも騎士にダメージを与える
やがて炎が収まるとそこには苦痛にもがいているような姿勢で力尽きた騎士の、人型の炭が残されていた
「さぁて、次は誰の番だい♪」
「くっ…」
アルハンドリアが一歩踏み出すと、騎士達は無意識に一歩後ろに下がる
無意識の内に勝てないと理解してしまったのだ
やがて1人の騎士が錯乱し、アルハンドリアに向かって走り出した
「ああぁぁぁ…うわあああああああああ!!!!!」
「煩いよ♪」
騎士はアルハンドリアに触れる事すら出来ず、瞬時に燃え上がり塵となる
そこで完全に騎士達の心は折れてしまった
我先にと逃げ出そうとする騎士、しかしアルハンドリアがそれを許すはずもない
全ての騎士が炭と塵になるまでには、それ程長い時間はかからなかった
「さぁてアベルくん、君にはボク達が暮らす{ユートピア}に来てもらいたいんだけど、いいかな♪」
「いいかな…って、いきなり言われても…」
「まぁまぁ、向こうで二人も待ってるからさ♪」
そう言うとアルハンドリアはアベルの背後に空間の歪みを発生させ、その中にアベルを蹴り飛ばした
「これでよしっと♪」
グレン達騎士団とシグの戦いは佳境に差し掛かっていた
騎士達の剣はシグによって破壊され遠くからちまちまと魔術による牽制を行っていた
グレンのみが装備を破壊される事なくシグと戦いを続けていた
一方シグも幾度となく傷付き限界が近づいていた
「はぁ…はぁ…」
「どうした!息が上がっているぞ!」
グレンの剣がシグの足を斬りつける
傷はすぐに塞がるが、シグは限界が近いと感じる
「キリがないな、総員!包囲陣形!」
騎士達が素早い動きでシグを取り囲む
「これで終わりだ!上位魔術!《ハイ・ホーリー・レイン》!」
シグの足元に巨大な白く輝く魔法陣が浮かび上がり、シグの動きを縫い止める
「まずっ…」
シグ目掛けて無数の光の矢が降り注ぐ
やがて光が収まった時、そこにシグの姿は無かった