第九話
シグは目の前の騎士団長、グレンの脅威度を上方修正する
「グレン・レイカーか、成程、騎士団長の名は伊達ではないか」
「当然!こちらも名乗ったのだ、そちらも名乗ったらどうだ?」
「…シグ=ブラッド、ダンピールだ」
「只の人ではないとおもっていたがまさかダンピール、ハーフヴァンパイアの{亜人種}とは…」
グレンは自身の剣を構える
「何の目的があっての事かは知らんが、この場で死んでもらうぞ」
次の瞬間、グレンは一瞬でシグの懐に潜り込み首を飛ばそうとする
シグは思いきり後ろにのけ反り辛うじて回避する
「まだまだァ!」
グレンはシグの胴に蹴りを入れる
肺の空気が一気に抜け、シグは思わず動きを止める
「ぐはぁっ…」
その隙を突いてグレンがシグの心臓を貫いた
「どうだ?まだ生きているか?」
グレンの問いにシグは静かに答える
「…ああ」
突如シグの周囲に幾つもの紅い玉が浮かび上がる
「〝血棺〟…行け」
それらの玉が一斉に不規則な軌道でグレンに迫る
「やはり殺しきれんか!《ハイ・グラビティ》!」
グレンを囲むように高重力力場が生成され、その中に入った玉が次々と自重で潰れ、元の血液へと戻る
「やはり魔術を…」
「まだ終わらんぞ!《ホーリー・レイ》!」
グレンの目の前に魔法陣が浮かび上がり、そこから数多の光の矢が飛び出しシグに襲い掛かる
「それはマズい!」
咄嗟に目の前に血の壁を作り出し光の矢を防ぐ、しかしグレンが壁を回り込みシグに斬りかかる
シグは再びナイフを作り出しで受け流し、返す刀でグレンの腕を斬りつけた
「はっ!やるな!」
グレンは傷など無いかのようにシグに剣を向ける
「生憎と貴様よりも強い奴を何人も見てきたからな、覚悟してもらおうか!《ブースト》!」
瞬間、グレンの姿が一瞬で消え、直後にシグの両腕が宙を舞う
「おのれっ!」
シグは先程のように両腕から血の触手を生やし、グレンに攻撃を仕掛ける
グレンはそれらの攻撃を全て躱し、確実にシグに攻撃を当て続ける
一撃一撃のダメージはすぐさま回復出来るが、余りの攻撃速度にシグの回復が追い付かなくなり始めた
やがて蓄積したダメージにシグが膝をつく
「貰った!」
グレンがシグにトドメを刺そうと剣を振り下ろした瞬間、どこからか飛んできた矢によって剣の軌道をずらされる
「何だ!」
「悪いな、遅くなっちまった」
そこには、弓を構えグレンに狙いを定めたアベルが立っていた