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第五十七話


 メシューレ教会の人に捜索に必要な道具や食料、あとハコを用意して貰えるよう頼んで例の隠しルートへ神殿騎士の案内で向かう。

 古代遺跡と言うには大昔に存在した都市の跡地で当時の建造物が派手に壊れているものの辛うじて形は残っている。

 かなり大きな都市だったんだろう。学校の社会科の資料集には世界各地の歴史的建造物として過去の都市跡が残っているが、負けず劣らずどころか一つ一つの建物が壊れていてもデカいせいかこちらの方が圧倒的と言えた。魔法が関わっているせいだろうか。

 こんなことでもなければ観光気分で探検とかできただろうに。

 あとこの女が邪魔。


「来んな」

「犀川さまが心配してくださってクリスは大変嬉しいです。けど、ついて行きます」


 心配はしていない。寧ろベニオや蓮の貞操が心配だった。

 三木に続いて相川まで一緒に行くと言い出した。時間が惜しいので古代遺跡の隠しルートへ行くまでの間を歩きながら来るなと言っているのだが軽く流されている。


「私がいれば色々と便利ですよ。イ・ロ・イ・ロ、と」

「息を吹きかけようとするな引っ付こうとするな」

「パイセン、もうこの人殴って気絶させたらどうですか?」

「一人でも後を追って来そうだからやらない」


 それに目を離していると何をしているのか不安になる。それならいっそ目の届く範囲にいた方が安心できる。

 隠しルートの入り口前にまで到着して一旦足を止める。岩でできたデカいトカゲみたいなのが首を伸ばしていて神官騎士達を威嚇していたので蹴り壊す。


「はぁ……分かった。スッゲー嫌だけど来るなら来い」


 言いながら、なんか穴の向こうから続々とモンスターが来ていたようなので岩トカゲの残った胴体を蹴ってモンスター達を奥に押しやる。


「ただし、妙な真似はするなよ。屁理屈言ったら地面に埋めて置いてくからな。他の娘にちょっかいもかけるな」


 相川に向き直り注意するその後ろで、隠しルートの穴に向かって蓮が光輪を出現させてレーザーかビームっぽいモノを撃ちまくり、最後にベニオが真っ赤に光る球を投げ入れる。


「勿論、わかっています。犀川さまに恥をかかせません」


 モンスターの悲鳴が消えてジューシーな臭いが漂い始める中、俺は溜息を吐く。信用できねえ。


「はぁ……」


 溜息を吐いたタイミングでメシューレ教の神官が探検道具や食料が入ったリュックを持ってきてくれた。後は荷車だけだ。

 待っている間、現在いる場所を見回す。天井が完全に崩れて壁も無く、いくつかの柱が倒れているがメシューレの神殿の広場に似たデザインの場所だった。神殿都市はこの遺跡の影響を受けたのか。


「待て」


 壁に描かれた半壊した壁絵を眺めていると、丹羽が高圧的な物言いをしながらやって来た。

 場所が喧嘩をしたあの広場と似ているのでデジャヴはあったが、今回は攻撃してくる気配がない。

 丹羽の後ろにはクラスメイトの何人かに加えて俺が殴った教師がいる。魔法で治療したのか鼻血は止まっているが治療直後のせいで鼻が若干赤い。だからそんな睨まれても怖くないんだが。


「俺達が先に行く」

「先に行くって、え? お前らも来るのか?」

「いいや違うな。俺が行き、お前がついてくるんだ」


 何言ってんだこいつ。紅緒も中二病モードだと首を傾げる発言をするが少なくともコレよりはマシだったぞ。


「……えーっと、そこの先生はどうした?」

「こいつも連れて行く。せいぜい役に立ってもらわないとな」

「ふーん。でもお前が須藤を助けに行こうとしてるなんて正直意外だ」

「どうして俺が奴を助けるためにわざわざ動かないといけない。今まで誰も発見できなかった道を転移者が見つけるなんて都合が良いと思わないのか? 何かある筈だ。そんな事も分からないのか?」

「そう……」


 人を煽る病気か何かか?


「フン……調子に乗るなよ。確かに今はお前の方が強いのかもしれないがそれも今だけだ。あまり天狗になっていると追い抜かれた時に無様を晒すぞ」

「経験者は語るですね」

「やめなさい」


 ベニオが娘を嗜める母親みたいに蓮を止めるが遅く、丹羽は鋭い視線を蓮に向けた。その視線を遮って俺は割り込む。


「俺達は準備が終わっていない。先に行っててくれ」

「貴様に指図される言われはない。まあ、愚鈍な奴に合わせるつもりもない」


 丹羽が隠し通路に向かって歩き出し、不意に止まる。とっとと行けよ。


「甘ちゃんの三木は兎も角、まさかクリスまで行くつもりとはな」

「…………?」


 露骨に「貴方誰ですか?」と言いたげに首を傾げるクリス。それに構わず丹羽は続ける。


「そいつらとより俺と一緒に来い」

「あなたと一緒に行く理由がありません」

「……俺はあの男に一度負けはしたが――」

「そういうのは結構です。私、有言実行より無言実行する殿方の方が好感を持つ女なので。男ならまず証明してください」


 絵として切り出せば純真な少女が無垢な笑顔を浮かべているだけにしか見えない。本当にそんな感じで他意もなしに笑顔を浮かべているので質が悪い。


「…………」

「俺の顔見たってしょうがないだろ」

「女ばかりを侍らせて貴族にでもなったつもりか?」

「はぁ? あっ、マジだ。クリスやるから誰か男をこっちに寄越してくれ」

「余裕のつもりか。その澄ました顔をいつか剥がしてやる」


 丹羽は仲間と教師を連れ立って一足先に隠しルートの入り口を通っていった。いや、相川はマジで連れてけよ。


「お前、何を企んでやがる」

「企むだなんてそんな。私はただ異性の好みを言っただけですよ」


 レイプ未遂女が何か言ってる。これだから目を離すのも見張るのも嫌なんだ。

 苦い顔をしていると、神殿騎士達が荷車を牽いてやって来た。

 荷車には材木や壊れた武具が載っている乗っている。荷車を停止させ離れる神殿騎士と入れ替わりにベニオが近付いて手を翳すと、荷車と廃材が光に包まれ形を変える。

 光が止んだ後にはフルアーマー荷車がそこにはあった。


「えっ、ええぇ? 何のスキル?」

「ベニオさんは便利キャラだから。それより乗りましょうか」


 蓮は驚く三木の背を押して荷車の上に乗る。荷車の中には手摺など掴まる箇所が多く設置されている。簡易な木製荷車がシャフトも金属製に変わっていてスプリングまであるとなれば驚くのも無理はない。

 国境沿いの山で穢れ退治にダンジョンも潰していたが、中には既存のダンジョンもあってそこからコアを勝手に分割して自分の物にしていたのがベニオである。


「もしかして、これで? 楽しそうですけど、私は絶叫マシンの類は乗ったことがないので少し不安です。思わずしがみついてしまったらごめんなさい」

「いざとなったら三木さんガード」

「はい? え? 絶叫マシン? ガード? あの、これから何をするの?」


 相川は察したようで荷車に乗り、ベニオも続く。三木だけが何も分かっていない。


「しっかり掴まってろよ」


 説明すると何言ってんだコイツ、と思われそうなので三木は女子に任せて俺は荷車の取っ手を掴む。ポケットから魔法のコンパスを取り出して行く方向を確認すると、針は隠し通路の方に向いていた。


「それじゃあ出発な」

「何を――きゃああああああっ!?」


 三木の悲鳴が上がるのも構わず俺は荷車を牽いて通路を駆ける。

 古代遺跡の隠されていた通路とかその奥に眠る財宝とか俺だって興味が無い訳ではないが、今回は人命救助が目的なので速度優先だ。だからって俺一人行っても傷の手当てとかできないし、何よりどこまで続いているのかも不明だ。

 だから必要な人材を荷車で運ぶ。


「なぁ!?」

「バイバーイ!」


 先に進んだ丹羽一行を追い越した時に蓮が手を振って一行を揶揄う。向こうの文句が発せられるも早くその場から離れて奥に進む。途中で走りながらコンパスで進む方向を確認する。

 内部は埃が積もっているものの不自然なほどに綺麗で経年劣化を感じさせない。所々で地面をくり抜いただけの壁や天井はあるがそれは俺がメイン通りから外れた道を通っているだけで、巨大な都市が丸ごと地面の下にあるようだった。


「前からモンスターが来てる。しっかり掴まってろ」


 モンスターは基本無視なのだが、進行上にいるなら少し相手をするしかない。と言っても弾き飛ばす訳だが、荷車を牽いているので乗客に注意を促す。すると後ろから光線が連続で発射され前方にいた狼に似た四足モンスターが射抜かれる。


「ダンジョンモンスター内の経験がこうして活きるなんてちょっと複雑ですね」

「壁や床から出てこないだけあの時よりもマシよ」


 そう呟くのは蓮とベニオだ。そういえばダンジョンモンスターの中では走ってはいなかったが俺がこうして荷車を牽いてその上に乗っていた学生達がモンスター達を撃ち殺していた。


「このままなら日帰りできますかね」

「いや、そう上手く運ばないみたいだぞ」


 コンパスで方角を確認しながら前方を見る。広い空間、というか大きな崖になっていた。一応、向こう側の壁が見えるのぜ荷車を抱えてジャンプして空気を蹴って行けば届く距離だ。だが、崖の下から生き物の気配がする。


「構えとけ」

「もももも、もっ、もうちょっと心の準備を!」

「三木さん、慣れてください」

「犀川さまのお背中、逞しいです」


 荷車からの悲鳴に似た懇願と蛇みたいな熱視線を無視して俺は崖からジャンプする。

 崖下から怪光線が隙間無く発射されていた。完璧にタイミングを読まれた上に隙間無い砲撃は流石に予想外だった。


「あっぶねぇ!?」


 思わず反射で怪光線を蹴る。光線は風船が膨らんで破裂したように消滅するが、消え去る光の中から巨大な蛇の首が複数伸びてきて口を大きく広げる。

 複数の頭を持つ蛇に食われる前に向こう側の崖に飛び移って入り口に飛び込む。

 走りながらチラリと背後を見ると、巨大な蛇の首が一つだけ崖からこちらに顔を突き出してデカい卵を吐いていた。


「うわっ、キモッ!」

「このまま走り続けて!」


 蓮が光輪を曲げて螺子状にした槍を発射して目敏く卵を狙い撃ちすると、割れた卵の中から手足を生やした蛇人間が体を抉られた状態で出てきて倒れた。

 次々と吐き出される卵から大量の蛇人間が生まれ、こっちに走り出す。


「陸上部みたいな走り方でこっち来てます!」

「まぁ、シュール」

「もう何が何だか。私は何を見ているの? ここどこ?」

「この子、何処かで休ませた方がいいんじゃないの?」

「振り切ってからな」


 俺は全然平気だが三木の精神状態がちょっと危ない。

 可哀想だが蛇人間が追って来なくなるまで我慢してもらうことにした。


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