第十六話
黒髪で紺のワンピースに白いエプロンという正統派メイドかと思ったら実は炎を撒き散らす赤銅の闘士で角生えててイカれた伯爵に忠義か盲信を尽くす側近ポジ――ではなく単にヒャッハー勢だったという。
何言ってるか分かんねえな。角生えてるからヤバい鬼女でいいだろ。
そんな鬼女の足首を掴んで俺は地面に叩きつけた。地面に少しヒビは入るが、両腕で頭をガードする鬼女はこっちにガンつけてくる。
危険察知し、俺は鬼女を横に投げ飛ばす。直後、彼女の全身から炎が噴き出る。そしてそのままジェット噴射でこっちに急接近しながら手から出した炎の剣で斬りかかってくる。
炎をそのまま掴む気にはなれない。しゃがんで避けながら奴の懐に飛び込む。
が、鬼女が炎で駒のように回転して蹴りを放ってくる。空中であろうと姿勢を変え、ジェット噴射で回し蹴りだろうと直蹴りだろうとノーモーションで放ってくる。
凄いと思うがそれ以上に気になるのが、俺が掴んで投げ捨てる際ついでに折ってやった足首を庇う様子がない。
治ってるのか痛みを我慢してるのか。どっちにしろ面倒だ。
炎を纏う鬼女が蹴りから炎の剣を持っていない方の手で中段から拳を放つ動きを見せた。それに合わせて俺も拳を放つ。
鬼女の拳が開き、手の中に隠れていた炎の塊が膨れ上がった。このままでは腕を焼かれる!
ならまあ突っ込もう。元から避けられそうにないのが来たらそのつもりだったし。
炎が噴射される直前に、そのままねじ込むように突っ込ませた拳が鬼女の手に当たる。
俺の拳が蓋代わりになったのか行き場を無くした炎のエネルギーが荒れ狂い、最終的に踏ん張りが利いていなかった鬼女の体が勢いに負けて後ろへと吹っ飛ばされる。
「アッツ、火傷した!」
ちょっと肉の焦げた臭いを感じ取りつつ、我慢して吹っ飛んだ鬼女を追う。走りながら手を開閉して感触のみで動くか確かめる。痛いが動く。なら問題はない。
吹っ飛んだ鬼女が炎を撒き散らして空中で態勢を整える。炎の余波で俺に牽制しているが、こんなの大縄跳びと変わらん。飛び越えて、空中で止まった瞬間に蹴り飛ばす。
鬼女の体がサッカーボールみたいに壁まで吹っ飛んで激突する。
「痛……っ」
右足に痛みを覚える。
顔面を蹴ってやったのだが、顔を傾けて角で切りつけられた。角そのものが高温なのでちょっと触れただけでも火傷する。
あーあー、制服がボロボロだよ。
制服のスペアは決して多くない。だからあまり燃えたりされると困る。
苛立ちをぶつけるように俺は近くにあった石柱を蹴る。飾りかアトラクションの一つか闘技場内には障害物程度の柱が等間隔に円状に並んでいる。三つの円柱と一つの台座で構成されている柱は下部分がだるま落としの如く飛んで、上に重なっていた円柱が隙間を埋めるべく落ちる。
壁に半分めり込んでいた鬼女は柱の一部が飛んでくるのを見ると、曲線を描く壁に沿ってジェット噴射で避けた。
俺は続いて円柱を蹴りを放った時の勢いのまま回転して裏拳で二つ目を、もう一度回転して三つ目を殴り飛ばす。最後に台座部分を地面から引き抜いて投げた。
二つ目は飛ぶ鬼女の後ろを通り過ぎて壁に激突、三つ目はイイ所までいったのか鬼女は跳ねて避ける。だが最後の台座は避けきれずにぶつかって壁とサンドイッチになった。
「うぉおおおおおおっ!!」
投げ終わった時点で走り出していた俺は台座ごと鬼女を蹴った。俺の跳び蹴りは台座を破壊し鬼女の鎧の板金を粉砕する。
「――キ、アアアアァァアアッ!」
「何だその声ビビるわ!」
金切り声を上げながら鬼女が壁から身を剥がして殴り掛かってきた。当然俺も殴り返す。
鬼女は炎が得意らしいが、殴り合いは俺の方に分がある。炎なんぞ熱いの我慢すれば一撃で致命打にならない分決定力に欠ける。でもアッツい!
などと痛みを我慢してたら鬼女の目が光って視界が完全に炎によって遮られる。
「させっかァ!」
目眩しで逃げるか別方向から攻撃を仕掛けるつもりだったのだろうが、火に構わず勘で手を伸ばす。何かを掴んだと感触と同時に手に凄まじい熱が伝わってきた。形と手応えからして角だ。
右手が焼けるのも構わずそのまま壁の方に向かって力を入れる。視界を覆う炎が掻き消えた向こうには俺に角を掴まれ壁に顔を押し付けられている鬼女がいた。
鬼女の目が再び光る。寸前で壁に更に押し付ける事で視界を防ぎ、鬼女を壁に押し当てながら俺は走る。
闘技場の壁が抉れ逃しきれなかった衝撃が破片と共に飛び散っていく。
角が焼き石みたいに熱いわで最悪だが、止まる気はない。鬼女はまだ戦う気なのだから。
壁に押さえつけられ引き摺られながら鬼女は手をこちらに向ける。炎かと思い左腕で顔を庇った瞬間に爆発が起きた。
「――ツゥッ」
火だけでなく爆発そのものも起こせるらしい。今まで経験した事のない突き刺さるような熱と骨まで響く衝撃だ。だが我慢できる範疇だ。
「我慢比べだァ!」
左腕で乱射される爆発をガードしながら鬼女を引き摺り回す。
爆発する火の玉の連射に間が発生する。大玉の溜めと気付き、より離れるものかと意地で力を込める。直後、大爆発が起きた。
自分も巻き込む程の火力に俺の体が吹っ飛ばされる。衝撃波で全身の骨が悲鳴を上げて痛いのと熱いのが混じった激痛が肉を叩いた。
一瞬だけ真っ白に染まった視界が回復しまず見えたのが地面だった。何度か地面をバウンドしたところで両足を地面につけて踏ん張る。何メートルか地面に二本の線を引いて漸く止まった。円形の闘技場内において壁側にいる鬼女と中央からほぼ真反対の壁近くまで飛ばされた。
「まさか腕とれてないよな?」
放すつもりはなかったんだが、鬼女との距離が離れたのが不思議で思わず両腕の無事を確かめる。爆発をガードしていた腕はジューシーと言うにはエグい臭いはしているが原型を留めちゃんと動く。
右腕は……手に角が握られたままだった。取れたのは俺の手じゃなくて鬼女の角だったか。
手放そうと思ったが、右手が開かない。肌が角と癒着してしまっている。無理に剥がせば肉も一緒に持っていかれそうだ。
「殴るだけだし後で良いか」
『よーくーなーいーでーすっ!!』
いきなり横から池野の絶叫が聞こえた。空中にフレームが開いていて池野がギャンギャン騒いでいる。
『何あれファンタジーなんだからもっとそれらしい戦い方しましょうよってレベルじゃなくて何でそんなマッスル任せなんですか!? というか火の中飛び込むとか頭おかしいですよ!』
散々な言われようである。ただ池野の後ろの方では避難して来た中学生達が増えてきた。加えて言うと、強面の連中が縛られて隅の方に打ち捨てられている。顔腫れてるけど大丈夫かアレ。
『どいて』
『ぶっ』
ベニオが池野を押し退けて姿を現わす。正確には横からフレームにしがみついてた池野を引き剥がした。あいつ最後に舌噛んだ感じだったがいいのだろうか。
『トモヒコ、闘技場の亀の方はミハエルさんが戦力を貸してくれたから対処できそうだわ』
「出来そうなのか。スゲェな」
相手は巨大生物なのに。いや巨大だからか?
観客席を見れば襲ってきた連中を全員倒したのかミハエルさんが数人の闘士達に指示をしてバリアの前に陣取っていた。魔法陣らしき物が浮かんでいるのでバリアを何とかする気らしい。
『バリアにも穴を開ける準備をしているわ。あなたは逃げに徹しなさい。優勢に見えて火傷だらけだし、熱での体力消耗も馬鹿にできない。それにいくら開くても密閉空間では酸素に限りがあるわ。燃焼が起きてるなら尚更よ』
「酸素か。道理で息苦しいと思った……」
闘技場内は鬼女の炎で熱くなっている。だからかと思っていたが、そうか酸素か。
『どれだけ残っているか分からないけど、これ以上呼吸を多くしても酸素の減りが早くなるわ』
「つっても、向こうさんが許してくれるか分からねえよ」
爆煙が晴れた向こう側、根元から折れた角の部分から血を流す鬼女の姿があった。
鎧ボロボロで殴った手応えもあったのに大きな負傷と言えばそれぐらいだ。ただ血が止まらずに治ってないところを見るとやせ我慢しているのか。
ゆらりとした動きで立っている鬼女。ベニオは救援が来るまで大人しくしていろと言ったが、向こうがどう動くかだろ問題は。殴って戦闘不能にできれば早かったのだが、体の細さの割に異常な程タフだ。
「…………陽炎……ゆらゆらと……」
「……は?」
警戒していたら鬼女が何か喋り出した。
「揺らめく、畦道に……」
「――お前日本語喋れたんかい!」
だったら喋ろよ! 会話しろよオイ!
俺の突っ込みを無視して鬼女はブツブツと何かを言い続ける。
『あ、あれ? 日本語?』
『違うわ。そう聞こえてるだけよ』
「は? なにどういう事? 訳分からん」
『脳が言葉として認識し処理しているだけで、あれは何か特定の言語を喋ってるんじゃない! 気を付けて、何かするつもりよ!』
「何かって何だよ!?」
どう注意しろと言うのか。そうこう戸惑っている内に鬼女の声? は続く。
「伸びる影法師からも陽炎が。其は地の底から昇る煉獄の炎、黄泉へ誘う底なしの穴。顕れ出でよ、宵の焔」
次の瞬間、鬼女が纏う炎が黒色へと変化した。
『なんか中学生が奇をてらって考えたみたいな詠唱し始めたと思ったら露骨にヤバそうなの出たァーーッ!』
池野がキャンキャンと煩い。
火の色程度などナトリウム燃やしながらナトリウムランプ当てれば黒く見えるが、そういう手品師が使いそうな演出じゃないよなコレ。
鬼女を注視するが、見るからに様子がおかしい。元々正気じゃなかった可能性を無視しても、顔に表情がない。
「あ? 燃えてる?」
鬼女が纏う黒い炎が背後の壁と足元の地面を燃やしていた。そりゃあ火なんだから燃えるだろうとは思うが、砂ってあんな風に燃焼したか?
それに温度が下がった気もする。少なくとも熱気に包まれていた闘技場内の熱が下がった。
疑問に思っていると、どんどんと黒い炎が鬼女を中心に拡がって節操なしに触れた物を燃やしていく。俺が投げた石の柱も木のように燃えていた。
『この炎は……触れては駄目よ! 貴方達も、そこから距離を取るの!』
ベニオの焦りを含んだ声が闘技場内に響く。
『それは材質関係なく何でも燃やしているわ! マナも一緒に! あの炎を受ければ、マナの防護を無視して焼き殺される!』
ベニオの指摘に下、バリア前にいたミハエルさん達が離れる。壁を伝いバリアも燃やしてきた黒い炎を闘士の一人が剣で振り払う。だが鉄で出来た剣の先炎が燃え移り、溶かすのではなく燃えている様を見て慌てて剣を手放していた。
ベニオ達の姿を映すフレームも同じだ。触れればそこから紙と同じく燃え広がっている。もっとも、すぐまた新しいフレームを空中に映しているが。
『トモヒコ、幸いにも障壁も構わず燃やしているわ。なんとか隙間を見つけて逃げるのよ! 何が彼女に起きたのか分からないけど、向こうも動く様子がない今がチャンスよ』
「それはいいんだが、アレをどうにかする手立てはあるのか?」
『……遠距離から攻めて体力を消耗させる。最初から使ってこなかった時点で何かしら欠点はある。それに無尽蔵じゃないはず』
冷静だが声は自信が無いのが聞き取れた。
鬼女がどこまで黒い炎を出し続けられるのか謎なのに持久戦は妥当だが打開には繋がり難い。それに鬼女からの火が消えても黒い炎は何でも燃やすので自然鎮火も時間がかかりそうだ。
じゃあ、逆に早々にケリをつける方が良いかもしれん。
「そうか。じゃあ俺は殴ってみてからにするわ」
『――はぁ!?』
ベニオのあんな大声は初めて聞いたなと思いながら鬼女に向かって駆ける。
なんか後ろから罵詈雑言染みた声がしているが、そもそも俺は深く考えるのが苦手なのだ。だから殴れると思えば殴る。
「――ク」
このまま助走をつけて殴ろうと考えた時、誰かが笑った。
誰が? 鬼女か? いや違う。鬼女にいる何かが笑ったのだ。
「クッ、クク、クカカカカカカッ!」
鬼女の背後から黒炎が渦巻いたかと思うと上半身だけの真っ黒な人影が現れた。黒い炎で形作られたヒトガタの顔に当たる部分だけが爛々と夕日をくり貫いたかのように赤く輝いている。
高笑いする声は先程の鬼女の声と同じく無意識に理解してしまう感じだった。
「カァーッハハハハ! アイツら失敗したな! 力が不完全とは言えオレは復活した! あれだけお膳立てをしていた連中がいざ行動を起こせばこのザマか!!」
怒涛の展開に頭がついていかないが、理解できた事もある。要はボス戦でよくある第二段階で、ここでいの一番にブン殴るべきはアレだと。
「カハハハハ――ガァッ!?」
なんで鬼女の頭上を跳んで黒ンボの赤い目の間に拳を叩き込んだ。炎の影はそのまま後ろに倒れて壁壊す。
「殴られた、だと!?」
なんか驚いている影は壁と観客席を燃やしながら体を起こし、漸く赤い目で俺を見た。
「どうやったのか知らんが、愚か者め。オレの炎は全てを燃やす。有機体も無機物も、マナさえもな! その腕はもう切り捨てるしかないぞ」
「そうか。じゃあ、燃え尽きる前に倒す」
親切にも助言してくれた影にもう一度拳を叩き込んで再び壁に埋める。切り捨てるにしても、まだ殴れるうちは使う。
影は黒いからそう見えるだけで炎の塊だ。それを右手だけで殴り続けるのも熱くて辛いので左手も使ってしまう。まあいい左右交互に殴ろう。
「ぐっ、ごはっ、き、貴様ァ!」
影の怒声と共に後ろから気配がした。反射的に一本の足を軸に体を回転させて蹴りを放つ。当たると同時にそこで奇襲の相手を認識する。矢張りと言うべきか鬼女だ。
感情と言える表情が顔になく、見るからに操り人形と言えた。
雑に蹴り抜いて、鬼女を反対側の壁に向かって飛ばす。その時、鬼女の影が伸びて黒炎と繋がっているのを見つけた。
その繋がりを俺は踏み砕く。地面を砕いた感触しかないが、直感的に手応えはあった。直後、鬼女が糸の切れた人形のように倒れた。
「キ、貴様ァ!」
何か大事な繋がりだったらしい。激昂した声を上げた影は俺に向かって腕を横薙ぎに振るう。人型をしているが形が曖昧なので念の為に余裕を持って大きく後ろに下がって距離をとりつつ頭を下げる。案の定腕が伸び鞭のようになり、俺の頭上を通過した。
「アストラル体であるオレにどうやって触れた! 素手で触れられるなどあり得ん!」
怒鳴る影に周囲の黒炎が引き寄せられて吸収され、影の体がより大きくなった。
「アスト……なに? まあ、つまり幽霊だろ? 前々思ってたんだけどよ」
そう、ホラー映画を見るたびに考えていた。何でこんなに怖がるのか俺には不思議だった。恨み辛みが怖いのは分かるが、たかが幽霊の何を恐れるのか。
「魂だけの奴に肉体持って生きてる俺らが不利なのっておかしくだろ。体がないから触れないとか、思い込み激しいんじゃないか?」
「屁理屈をォ!」
振るわれる拳の形をした黒い炎。それに合わせ、俺は右拳を振り上げて炎の拳を弾く。影の体が弾かれた拳に引っ張られて仰け反った。
「つっても実際殴れるからなァ」
ガラ空きになった胴体を蹴る。影の脇腹が弾け、すぐに元に戻ったが、構わず連打を叩き込む。
態勢を崩したならそこからボコるのは基本。
「グハァ――ッ!! そもそも、貴様は何故戦えている! オレの黒炎を受けて何故倒れない!? 何故炎を恐れない! そのまま貴様は死ぬんだぞ!!」
「えっ、根性?」
ベラベラ喋ってる影の顔部分を殴る。
確かに手足に黒い炎が纏わり付いて熱いし痛いが、殴らないといけない奴を殴るべき時に殴るのは大事だ。だから根性で殴るのだ。
「巫山戯るなァァァァッ!!」
影が炎を噴出させる。俺がそれを避けると今度は大振りに拳を振るい始めた。一々動く度に炎が撒き散らすので厄介だ。流石に攻撃をする以外で炎を浴びればそれで大きく削られてしまうので、余程のチャンスがなければ無闇に受ける必要はない。
「このまま闘技場ごと焼き尽くしてやる! 死ねェ!」
影が大きな火の玉を頭上に作り出し、それを叩きつけるように俺に向かって振り下ろす。流石にあれを直接殴る気にはなれない。
だから、うん、まあ偶々近くにあった物を思わず投げてしまってもおかしくないよな。
倒れたまま動かない鬼女の襟を掴み、俺は黒炎の塊に向かって投げた。
「なっ!?」
今まで鬼女は黒い炎の中でも平気そうにしていた。案の定、投げられた鬼女を黒炎は焼けずそのまま貫通し衝撃によって穴が開く。後ろにいた影に対してはそのまま、それこそ幽霊のように透過してしまう。だがそれで十分だ。
俺は道となる空間に腕を十字にガードしながらジャンプして飛び込む。チリチリと炎が肌を焼くが、今更だ。
炎の塊を抜けた先には黒炎を操る影がいる。
「これで終いだオラァッ!」
上から下へと影に拳を叩きつける。
影は胴体ごと地面に潰れた。
地面に着地して、それこそ染みのように潰れた影は先程の大玉が渾身の力だったのか弱々しく、炎も吹けば消えそうな程になっている。
「な、なんだ貴様は……オレは、オレはあのオリジ――」
「いや、どうでもいいから」
影を踏み潰す。それがトドメとなったのか言葉途中だった影は虚しくも消え、それを追うように黒い炎が消えていく。
「はぁ、何だかな」
訳の分からない事が起きて訳の分からない奴を訳の分からないまま打ちのめした。幽霊だったから殴った感触もイマイチだ。
「アッチ……あ、これアカンやつだ」
加えてこの暑さに、不完全燃焼的なモヤモヤと汗ダラダラを感じながら俺は意識を落とした。




