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12.総帥の正体

 議場に着くと、そこにはサクラ様、アヤメ様が座っていた。

「命令は聖騎士の抹殺だったのでは?」

「そう・・・聖剣を奪っただけ」

早速、文句をつけてくるサクラ様とアヤメ様に対し、優雅に微笑むシャクヤク様。その態度が、更に二人の反感を買ったようだ。

「戻ったか」

「「「総帥」」」

「シャクヤク、オウレン、カスミは上へ」

総帥に呼ばれ、私たちは総帥の部屋へと向かった。


扉を閉めると魔法陣が浮かび上がった。

「私の魔法『絶対防御』だ。音が外に漏れることは無い」

そう総帥が説明した瞬間、シャクヤク様が総帥に抱き着いた。

「やったわ『ボタン』。とうとう願いが叶うわ」

「そうだね。シャクヤク。ふふ、カスミが驚いているよ」

隣を見ると、オウレンは驚いていないようだった。

「そうだったわね。カスミには言ってなかったわ。総帥は彼よ。シャルル」

「え!?」

・・・シャルル様が総帥?我が国の第一王子様が総帥なの?

「驚くのも無理はない。姉弟で結社のメンバーだとは思うまい」

「・・・はい」

「それよりもボタン。魔王様に報告を・・・」

「ああ。オウレン、カスミはここで待っていてくれ」

奥の扉にシャクヤク様と総帥は消えていった。


「オウレン・・・」

「何?カスミ」

「シャクヤク様の願いってなんだろう」

「・・・明日にでも分かるわ」

「そう」

「・・・昔、シャルル様は体が弱かったのよ」

「ああ、だから保養地に?」

「ええ。でも、魔王様のお力で今のように健康になったの」

「そうだったの!?」

「第一王子であるシャルル様と第一王女であるピオニア様が結社の一員となれば、この国は魔王様の国とも言えるわね・・・」

「そう・・・ね」

「でも、お二人には考えがあるみたい」

「え?」

 オウレンは静かに微笑んだ。やっぱりお二人の幼馴染なんだね・・・。


 30分ほど待っていると、お二人が戻られた。聖剣を持って・・・。

「上手くいったぞ」

「それは、おめでとうございます」

「あの・・・?」

「カスミ。貴女のお陰でもあるから説明するわね。魔王様は聖剣に触れることができないの。だから、我がアメジスト皇国が秘密裏に聖剣を封印することにしたのよ。これで、ある意味、魔王様と対等な関係になったの」

「それは・・・おめでとうございます」

「我々が結社のメンバーである限り、魔王もうかつに手は出せまい」

「ふふ。聖剣使いは隣国に居るしね」

だから抹殺しなかったのか。


「そうだアリッサ。貴女、シャルルに言う事があるでしょう」

「え!!あ、はい」

もう2週間も経ったから伝えろという事ですね。

「あの、シャルル様。僭越ながら・・・」

「待って。分かったかもしれない」

私の言葉を遮るシャルル様。ニコニコと見守るピオニア様とメリッサ。

「アリッサ。君が『リンゴの君』?」

「・・・はい」

「やはりそうか。今日は喜ばしいことが重なった。ありがとう姉上」

「貴方の為なら・・・」

お二人が、いえ、メリッサも含めて三人が嬉しそうに笑う。つられて私も嬉しくなった。




 ピオニア様の魔王様への願いは翌日に分かった。


 第二王子が遠乗りの際、崖から転落して亡くなったのだ。


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