第二十話 仮忍者、ラクジャ車案内所の説明を聞く
またも2ヶ月以上の投稿で申し訳ありません。今後もこのような不定期投稿が多いと思います。
軽くでも読んで頂いていけるだけでも嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。
「そうでござりますか。ラクジャ車は運行する数が少ないのでありまするか」
「一応日取りは決まっていますよ。光の2と5、風の2と5の月四日となっています」
「二週間空くのでござりますか?」
「近場ならともかく、ラクジャ車はだいたい遠乗り用の車として使われています。足の手段がない人々が遠出を目的とした方が利用活用するので、ルーベルンストの町に戻るまで、そのぐらいかかります」
鳥人族の鶏人が丁寧に教えられる説明に、サイはほうほうと真剣な眼差しで肯く。
サイはラクジャ車の運行受付所にて、ラクジャ車についての話を聞いていた。
『赤鱗の尻尾』にてネニュートにさんざんとからかわれた後、部屋に戻ろうとしたが、ラクジャ車の運行時間や範囲といった情報を聞きに行くのを思い出し、慌てて外に出た。場所は雑用仕事の途中で発見したので、時間をかけずに一直線と向かった。
ラクジャ車とは、馬車と変わりないが、引くのが馬ではなく、ラクジャという魔物が担っているため、ラクジャ車と呼んでいる。このラクジャ車を預かり、またバスみたいな役割で運行を仕事としているのが『ラクジャ車案内所』。町の入口付近に構えられており、表は役所みたいな建物で、裏はラクジャ車を収容するためかラクジャ用の小屋――言わばラクジャ小屋――と車を収める倉庫のような建物となっていた。
『ラクジャ案内所』の中は地球での役所と似かよっていた。入れば、同じ制服を身に纏った人が、様々な人から話を請け負っており、いろいろな手続きをしている。
サイは空いた受付にて、自分は初心者であることを告げて、担当の鶏人からラクジャ車に関する事と、この町でのラクジャ車の運行について教えてもらっていた。
サイは自分になりに思いつくことを質問する。
「えっと、止まって下りる場所とかどんな感じなのでござりますか?」
「停留地ですね。それですと、お客様が要望する場所によって異なります」
「決まっていないのでござりますか?」
「『ラクジャ車案内所』が設立されている町か終着する地点は必要停留地として既定されていますが、他はお客様の要望の有無によって停留地にするか決められます。また、停留地によってルートも変わります。例えば、リートバンが終着としますと、その日のお客様の要望範囲を最寄りとした行き方として運行します」
鶏人は地図を広げ、リートバンのある町とルーベルンストの町に赤丸を記し、ルーベルンストの町からリートバンの町の間にある適当なコミューンをいくつかも赤丸をし、それらを一本と繋げる。これがルートとなるのだろう。適等に記されたコミューンがお客の要望の停車場所ということだろう。つまりは、これがリートバンを終着とする一つのルートになるわけだ。必要停留地以外は事前に希望がなければ止まらないらしい。
バスや電車のダイヤのようにきっかりと定まっていないらしい。これだと、ルートによってはかなりの日数と時間がかかりそうだ。後、先に予約しても早めに乗車できるとは限らないかもしれない。もしかしたら、希望としている日に乗れない可能性もあるのではないだろうか。
サイはその事を聞けば、予想通りだった。月四日しか出ないため、初めに聞いたラクジャ車の数もそこまでないことも含め、重量と人数の制限で次回に回されてしまうこともあるそうだ。けれど、ルートによっては、大型のラクジャ車なら乗れる可能性があるそうだ。
「ラクジャ車の種類があるのでござりますか?」
「はい。ラクジャ車は大雑把に小型・中型・大型の三つの種類がございます。小型は近隣といった近場を、中型はさらに範囲を広げた遠出となる場、大型は山越えもしくは領地越えといった遠方の場と使い分けられています。乗用する際の金額は順に5S・10S・15Sが基本の乗車料金ですが、ある一定の距離以上の場合になりますとお金が加算されます」
高い、とサイは思わず叫びそうになった。乗車料金はまさかの銀貨。日本なら百円台だと言うのに、万札での高値払い。それに、遠くなるごとにお金が高くなる。
もしや、ラクジャ車は金持ちしか利用しないのではないかと内心疑っていれば、平民なら小型がよく使われているとの説明があり、この世界では銀貨の単位が当たり前なのだと知らされる。
平民はそこまで遠出するわけではないため、中型・大型はそれほど使用しない。一定の距離に値するのは約3キロとなっている。以内なら加算料金制が適用されないことになっている。小型はだいたい3キロ範囲での移動が主なので平民が最も乗るとのこと。しかし、冒険者や旅人といった者は遠方に足を向けるのがほとんどのため、重量も含めて中型・大型の方を利用するらしい。それと、商人は商人保持のラクジャ車を持っていて、冒険者ギルドに荷物運びや護衛と言ったクエストを依頼するらしく、それに乗車して移動する事も手段の一つとなっているとか。しかし、冒険者ではないサイはその手段は使えないので、すぐに除外した。
とりあえず一定の距離以上になったらお金がよりかかると言うことで、一応目指している王都までどのくらいか尋ねる。
「王都行きを目的とした場合でござりますと、おいくらとなりまするか?」
「ここルーベルンストからとなりますと、大型のラクジャ車の乗用となりますね。それに一定以上移動料金を加算して、30sになりますね」
「さッ!?」
あまりの額にサイは堪え切れずに叫ぶ。30sなんて、仮に一ヶ月でこの町から発つとしたら、全財産使い果たしてしまいかねない。
サイの反応は予想通りだったのか、鶏人は淡々と説明を続ける。
「王都はここから二山越えた先にあります。道はありますが、途中から険しい場所もあり、危険も伴います」
「危険と言うのは、魔物に襲われやすいということでござりますか?」
まだ驚きが拭えなかったが、サイは訊く。
それに鶏人は肯く。
「はい。それもありますが、賊に目をつけられやすいのです」
賊――山賊や盗賊といった、ならず者集団。金目のものを狙い、商人や旅人、時には村を襲撃する。金や物品を奪うだけでなく人を浚う。人を殺すのも躊躇わない犯罪者。
現代の日本には存在しない賊と言う言葉にサイはぞっと慄く。けれど、ルーベルンストの町や隣の村付近に賊がいないと話を聞き、内心ホッとしてから続きを聞く。
「ここでは王都行きのラクジャ車はほとんど使われません。移動距離は早くても一ヶ月以上かかるのと、乗車客を無事に送り届ける成功確率が低いのです。この場合ですと、冒険者を護衛として雇うのをお勧めします」
護衛も仕事の内と聞いたが、こういった長時間移動も受け付けているらしい。
冒険者ギルドにまったく関わっていないため、依頼の報酬と言った相場は全然知らない。勿論のこと、冒険者を雇う金は乗車料金とは別である。
長いことを考えると、高い金は着くと予想しつつ、払える値段なら検討しようと、サイは冒険者を雇うにあたり、いくらぐらいか質問する。
「大型ラクジャ車を利用するお客様の人数によって異なりますが、最低でも五人は必要ですね。王都行きとなりますと、一人分5s以上からとなります。5sで依頼されるならば、25s以上の金額は必要です」
サイはラクジャ車による王都行きを断念した。