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仮忍者の異世界冒険記  作者: ちゃちゃもん吉
危険な本にご注意!?
10/24

第九話 仮忍者、変な物に捕まれる

 すみません。遅れながら、あらすじの主人公の名前間違いに気づいたので、直しました。「彩」は「さい」と読みますが、ここでは「いろ」と付けています。よろしくお願いします。

 町の中は異世界だったと衝撃を受けるほど彩は驚いていた。中はありとあらゆる妖怪が行き交っている。森で目にした動物頭や鳥頭以外に蜥蜴や虫といったものがそこかしこに存在していた。皆が奇抜な色合いの毛や身体で、食物連鎖的な衝突はなく、誰もかれも友好と会話を交わし共にいる。

 建物はレンガもあれば木材でも建造された家々が並んでいて、日本では決して見られない煙突が屋根から突き出ている。武装している妖怪だけでなく、日常服といった衣類を身につけている。妖怪の服・建造物・やりとりが含まれる風景はTVで見た欧州の街並みにそっくりだった。

 妖怪なのに欧州生活で、日本と象徴する和がまったくと無い。想像していたものと違う光景は彩のぽかんっと目と口を大きく開けてしまう。

 そこにどんっと背中が押される。


「おっと。通行の邪魔だぜ、チビッ子」


「す、すみませぬ」


 ぼけっと突っ立っていたため、道行く妖怪を妨げてしまっていた。彩は牛頭の妖怪に謝り、端に移動する。驚いている場合ではなかった。この町で情報を得るために来たのだ。行動を起こさないと。

 とりあえず情報を集めるにあたってどうするか。昔の忍者は敵国侵入で情報を集めるのに利用したのは国情だと寺や神社。取り沙汰といった噂は遊郭や博打場、風呂屋といった場所が適しているとあった。また国と国を渡る行商人から情報を貰う手もある。行商人は警戒心が強いが、同じ行商人同士で商売話となれば国情がいかなる状況か教えてくれると言う。国情によっては黒字か赤字か変わるから、一番と情報を持っているだろう。

 これは虚無僧、修験者といった旅する宗教者にもあたっている。そのため、忍術の一つ『七方出』を使う。『七方出』は商人・虚無僧・出家・放下師(曲芸をする披露する人間)・猿楽師(能舞の旧称。物真似や言葉芸をする人間)・山伏・常の形(その地の人間として溶け込むこと)の七種類の変装術である。情報を集めるのに適したとされる七つの型で、各地の地方を歩き渡ったと言われる。

 敵国侵入と言った昔の忍者ではないため、また一番に変装道具もないので使えない。やるとなると、各地の風聞が集中し、加えて開放的になっていて、人が集まっている場所で情報を集める。そういう場所を忍者は利用していたとある。人間の心理と感情を利用する『五車の術』や言葉巧みに誘導する話術を用いて望む情報頂いたりしていた。

 東洋・西洋でそれに合った共通場所は酒場と聞いた。現実も物語も同じく、さまざまな情報がある。しかし、残念な事に彩は飲酒許可年齢20歳を越えていないため、酒場と言った場所は入れない。親からも入っていけないと言われた。

 ならば、他に思いつくことは……と腕を組んでいれば、美味しそうな匂いが鼻に入り、思考が止まる。そして、キューと腹の音が鳴った。

 一時沈黙とし、彩の頬に熱が高まる。行動前に腹を満たさなくてはいけないようだ。そうするにあたって、お金を手に入れなくては。この野草の束三つ買ってくれるところがあるか…。

 町での市場と思わしき方向に足を向ける。施設での店も開店しているが、屋台の店での商いもしていた。興味そそるものばかりで、きょろきょろと目移りしながら妖怪の話に耳を傾ける。


「いらっしゃい、いらっしゃい!ログオン村から取れた野菜はどうだい!」


「店主さん。アカマを三つください」


「はいよ!6Cだ」


「ハルシュ肉とレドナ菜のサンド三つで50Cだよ~」


「なかなか良い剣だね。ゴロンゾのところかい?」


「あぁ。鉄のカトラスに付与の紋章文字が刻んであるんだ。68Sもしたぜ」


「おーおー!それじゃあ、しばらく貧乏暮らしか?」


「あのヌメルヤ行商が来てるんだって。小遣い金貰えるもの売ろうぜ」


「ここのところアバザスの森はどうなの?」


「あの一件以来、普段と変わらないわ。でも、そろそろ出てくる時期かも」


「ボップンの実はないですか?」


「ごめんな。ボップンの実はないや。代わりにオレージュの実があるけど、そっちはどうかな?」


「セイハスの軟膏、2S50C。ロムズ薬水、3S。今お得な値段で販売中」


 聞こえるものすべてが新鮮な感じで、知らず知らずに心躍らせながら、彩は目ぼしい店を探す。屋台になければ建物の中に入るかと考え始めたところ、会話の中にあった、ある店について耳にする。そこでなら買ってくれるかもしれないと首を動かしながら歩き回る。すると、ある一角の店の前で子供妖怪が多くいるところに目が止まる。

 気になった彩はその店の方へ歩き、子供妖怪らの後ろから覗きこむ。よれよれの厚い三角帽子を深く被った屋台の主人が手に持つ薄い紅色の枝垂れ花をじっくり見ていた。

 何をしているのかと窺っていたら、店主と向かい合わせに立っていた黒毛の鳥頭子供妖怪がいくらかと急かすように尋ねた。これは鑑定しているのだろうか。


「……ふむ。銅貨3枚だね」


「えー!それチェーシャンの花だぜ。解毒でよく使っているんだろ?薬草なのに安いぞ!」


「それほど大切ではないのだが、たいていの解毒薬に使用されているのは確かだね。でも、量産性の一般でも販売されている薬の材料なのだよ。そこら散歩すれば、けっこうと見かけるほどの花だ。それと、このチェーシャンの花は開花していないから、妥当としてこの値段だよ」


 つけ足しはなしと突きつけられ、鳥の子供妖怪はむ~と頬を膨らませて睨む。だが、上げる気配がないのを見て、渋々と買値に肯いた。まいど~と渡された銅貨3枚に、飴二個分かと不貞腐れていた。どうやら、ここが話で耳にした「ぬめるや」行商という店のようだ。あぁいう花を買い取るなら、野草も買ってくれるに違いない。

 その後、子供妖怪らが次々と花の他に玩具や石やぼろけた雑貨などを売ろうと続いていき、休む間なく店主は商売していた。多くいた彼らがさばけたのは12分後だった。残ったのは彩一人だけ。


「どうぞ、フードのお客さん。見にいらしてください」


 店主に呼びかけられ、彩はおずおずと前に進み、目の前に立つ。子供妖怪によって見れなかったが、いろいろなものが陳列されていた。日常品があればそうではないものもあり、アクセサリー類・文具類・工具類といった物が置かれている。雑貨のような店だった。興味がわく品々から目を離し、店主に顔を上げたら、ギョッと目を剥いてしまった。

 三角帽の影で顔の輪郭が遠目から捉えられなかったが、間近となって正体がはっきりと分かった。

 動物や鳥とは違い、するりとした光沢のある身で目が顔全体の半分を占めるように大きく、鼻はなくぎざぎざハサミのような口が先端と出ていて、アンテナみたいに触覚が二本頭から伸びている。記憶が正しければ、その顔は昆虫の一つである、蜂そのものだった。

 虫妖怪は往来で見かけたりしていたが、こうして間近でそれも正面で目にしたのは今回が初めてだった。それにより、ゾワッとした嫌悪的反応な感覚が昇るが、これも妖怪の一種だと理性を総動員して平常心に戻させる。


「あ、あの、買い取っていただきたいものがござりまして、かまいませぬか?」


「かまわないよ。どれかな?」


「こちらの三束をお願いいたしまする」


 森で採取しておいた野草三束を店主に渡す。今頃気づいたが、受け取った手の指が四本だった。観察不足だと心の内に一人反省。

 鑑定してくれている間、店の品を見ていることにする。てんでばらばらかと思ったが、同じロゴマークが刻まれていた。全部で六つ。同じ所で生産されたものではないようだ。

 彩は一つ一つ品を手に取り、端に積んである物にも手を伸ばす。上から順に見てから丁寧に置き、一番下にある物を持ち上げる。それは分厚い本だった。しかし、手触りが本独特のものとかけ離れていた。それも捲ることも出来ない。よく見れば本に模倣した箱だった。本の模型みたいなものかと薄らほこりが被っている表面を払う。表面には四角形と台形を重ね合わせた図形画とその中心に一線の横線。下にへんてこな文字か文様があった。

 なんだこれは、と彩は何気なく、へんてこな文字か文様を指でなぞる。ひと筆がきで書けると変なところで感心を抱いた。その時―――。



 横線にパチリと“目”が現れた。


 

 彩は反応出来ず“目”と視線がかみ合ってしまう。瞬間、図形画からコードのような光る紐が二つ側頭部にひっついた。途端、視界がぐるりと映り変わった。視界一面にコンピュータのウィンドウみたいな形をした四角の枠が広がり、左上端から文字が勢いよく流れていく。データ処理の如く、次々と文字が四角い枠に埋め尽くしていく。膨大な文字が眼を通じて脳に送られてきた。



――― 我々が住む世界の名は『ジヴォートノエ』。精霊に祝福され、尊大たるマナに包まれている。

 かつて、“無”としかなかった世界に星々を渡る精霊神が降臨した。精霊神は初めに世界の揺りかごとなす大空を、生命の母たる大海と父たる大地を創生した。次に大空の子である太陽と双子月をなる光と闇を、大海と大地の子である火と風と木と雷を生み出した。彩られた地に時を作るべく、彩りを移り変わる季節を誕生させた。精霊神は最後に息吹を吹きわたらせ、涙と血の一滴を落とし、次なる星に旅立つ。息吹は三柱と子らの六柱に化身となる精霊が生まれ、生命の鼓動となすマナがあふれさせた。そのマナに包まれた涙と血が形作り、澄むものは人となり、澱むものは魔物となる。

 これが創世神話のはじまりにして―――



 ………あ、ぁ…。



――― 創世神話に習い、日月と季節は三柱と子の六柱を当てはめる。月と季節に合わせ、暖かき花芽吹く季節を『大地の目覚め・大地の語り・大地の祈り・大地の眠り』。日が焼けるほど暑き季節を『大海の目覚め・大海の語り・大海の祈り・大海の眠り』。凍える寒さが来たる季節は『大空の目覚め・大空の語り・大空の祈り・大空の眠り』と十二の月を四つ分割し『三季』とした。

 そして、日じつを子らの六柱から取り、初めは光の1から闇の1・火の1・風の1・木の1・雷の1と六日と並ぶ。六日を一週間として五周毎に一カ月と取り決め―――



 う、あ…………。



――― 人は五つの種族が存在する。

 一つは、獣人族。野を駆け山を登る、大地に育む種族。

 一つは、鳥人族。風に乗り翼で飛翔する、空わたる種族。

 一つは、海人族。水の中を泳ぎ鰭を踊らせる、海を愛す種族。

 一つは、蟲人族。木に寄りそい緑を蓄える、森を敬う種族。

 一つは、竜人族。熱き流動を内に強靭さを身とする、炎を制する種族。

 創世より五つの種族が生まれ、あまたの歴史の中で争うも、現在は共ぞ―――



 うあ…ぁ………。



――― マナは世界を構成するだけにあらず、自らの剣となし盾となす力が存在する。

 それはあらゆる事象を具現させる魔法と鎧の如く身体に纏い現象させる気術―――



 うぅ……うあぁ………。



――― この国の名は『シュムホッサス国』。交易を盛んとしており、特に海運貿易に力を入れている。海沿いの国で港の数が一番と多いことが有名。海向こうの大陸と商売をしたり、渡船したりとしているため、シュムホッサス国には様々な国の人々がいる。また、三大とう―――



 うぐうぅぅ…………。



――― シュムホッサス国がある大陸では硬貨貨幣で流通している。

 銅貨・銀貨・金貨の三つの硬貨を使われていて、硬貨の価値は紹介した順に高い。

 三つの硬貨の価値はと言うと、銅貨は約10枚以上で平民一人一食分。銀貨は10枚で平民の一日三食が三週間分。金貨は1枚で平民が半年以上、働かなくても暮らせる分といった割合になっている。

銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚と―――



 あ、あぁ…ぁあ………。



――― 文字は創世の時代、始まりの祖たる古代人が残した神霊文字と大陸に国家が誕生した時代より作られたナチュア文字の二つ。神霊文字は神代の遺産とされ、創世以降の歴史や精霊との交信、儀式に使われた形跡があった。また一つ一つの文字に言の力が込められていることを発見した。なんらかの条件により神霊文字を刻むまたは口にすることで、理を改変する力を顕現させる。神霊文字は全部でいくつか把握されておらず、近代で発見した文字はごくわずか―――

 ナチェア文字は五強国時代でナチェア国が大陸の七割を支配したことにより、ナチェア文字が共通言語として浸透された。他方により方言やなまりは残されているが、ナチェア言語として会話は通じている。

各国では異なるも国の識字―――



 ああぁあ――あ、あぁあ、あ……。



――― 現代で把握されている歴史は今から五千年前以降からとなっている。それは大集団組織統制とした国家が創立後、国との戦争、精霊の暴走による大天災、魔物の侵略など大事。文明発展からのギルド設立、マナ利用による力の進化といった小事まで。あらゆる歴史が様々なものに記されていた。

 始まりとされる国の創立時代。当時の大陸に存在した国の数は部族の数と同等に50以上はあったとされている。そこから敗戦した国は強国に吸収され、大国に至るまでおおよそ四百年。群雄時代と称される時代では国は―――



 ああああぁぁああぁあ―――……。



――― 魔物はマナの濃度が高い地より生まれるとされ、最近の研究では魔物には体内に核であろう鉱石物があるという発表があった。この鉱石物はマナを大量に内包されており、魔物から取り外されていたため検証していないが、マナを摂取し吸収している機能があるのではと推測されている。鉱石物が魔物の器官の役割としてるとか―――



 ぁあああああああああああああああああああああ――――。



――― 『ジヴォートノエ』の文明は皮肉な事に戦争によって、生活面や魔法・気術、仕事での職業多種などをよりよくしていったが、現代の暮らしへと発展出来たのは彼らの力と知識によるものが多大な向上となし、劇的な変化を与えた。

 一例を挙げるとするならば、食事の改善。当時は調味料といったものを使わず、素材そのままの味で焼く・煮るといった単純作業での調理方法しかなかったが、彼らの知識と技術により数多のレパートリーを作り、身分関係なく満足とする栄養摂取が出来るようになった。これにより、体調不全となす患者が8割も減少した。

 次に交通の利便性の発達。昔は道と言い難い荒れもので、ラクジャ車を使うのに不便さがあり、転落事故がよく多発していた。また、賊に狙われやすく逃げ切る確率が20%にも満たないほど被害が酷かった。彼らの方策から道の整備工事を行われ、長い年月を要したが初めての交通の道が完成させた。この完成から事故と賊の被害が一気に減った。

 挙げた二つを含め、経済・軍事・農業・生産業・商工・生活面・医療・土木工業・海運業などなど、あらゆる方面に影響を及ぼし有益とさせた。

 こうして、彼らが力を貸してもらわなければ、ここまでの発展は500年以上かかっていたと歴史文明研究者は言う。国だけでなく世界にも貢献とする彼らの改善・新規の制定は―――

 なお、『ジヴォートノエ』は恩義ある彼らに礼をすべく、彼らの他、次に降り立つ者らに対し、彼ら――『るら―――――』――――



 バチンッ



 電流がショートしたような衝撃が駆け巡り、脳に痛烈なショックが貫かれる感覚が襲われる。

 刹那に、彩の意識がシャットダウンした。


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