『 青春破壊装置 』
花園さんは本物の天才だった。
天才過ぎて、おかしな方向に進んでいく彼女を誰も止められなくて。
「青春なんて人生に必要ありません。くだらない。破壊します」
真面目な顔でそう宣言した花園さんは、三日という短期間で物々しい装置を作り上げてしまった。
「さようなら、青春」
隣の席の凡人クラスメイトの僕。
彼女を止められずに、ただただ装置の完成を見守る事しか出来なかった。
「このネジで最後」
その小さなネジで最後らしい。
甘酸っぱい青春は、もうすぐ世界から消えてなくなってしまうんだ。
「あ」
天才少女は手を滑らせて、小さなネジが窓の外へ。
「……」
正しくは、天才少女が全力で、小さなネジを窓の外へ思い切りぶん投げた、かな。
「まあ、何て事でしょう」
みんな帰った教室。
二人きりの空間。
花園さんの妙に熱っぽい視線。
誰にも止められなかった天才を、青春って奴は飲み込んでしまったらしい。
この三日間消されまいと必死になって、あろうことか青春とは無縁だった僕なんかをけしかけて。