温かな幹
コーヒーのくすぐるような、鼻腔のエクスタシーに
私は、足の指をキュプとひろげる。
壁の時計は眠っている―――。
白磁のディメンジョンがつくる容に・・・熱にゆらめく、く、く、く、の波紋。
一口、コクとやわらかな苦味をそそぎこみ、
舌をのっぺり。
と、なにかが転がりでる、片方の目から‥。
今日一日ためらいつづけた感情の欠片たちが
行き場なく転がりでたものらしい。
色でしかないモノ達だが、波形を作って無限のidentity
を建てようとしている。
小さなこの部屋にも南側はあって
外の陰影がゆらめいて、コーヒーの湯気もゆらめいて、
捜したいのはちょっと散歩したがる靴。
ガラスの景色・・・
きらきらと、きらきらと、立ち上がり
紅潮したナナカマドの複葉が、こっちだよ、と
夕方の陽を吸いよせて
好奇のeyeをほっそりと輝かせている。
――――――世界が負けつづけても
――――――雨上がりの空にうまれるプリズムは止められない。
私は、この不詳の波たちにどんな名前を創ればいいだろう。
ゆるんだ痛みが、なぜ?を探して
コイルを回り
ことばの綿の実を白くはじけさせる。
コーヒーの香りが鈴を鳴らすように波形をふるふると踊らせ
それを確かめるようにコクと1口‥まどろんで…。
秋の温かな幹は、凛々の兎と耀るい若草色のクリスタルを抱えています。