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3話

 おはよう、今日も雲一つない何とも二度寝に最高そうな朝だ。

今は昨日の不思議な事件から日が明けた、つまり次の日の朝だな。

二日連続で変なこと後起きるとは思わなかった。

三日目はないといいんだがな・・・。

 まだノアが来ていないから寝坊ではないようだ。

 昨日の夜、居候になるんだからとか色々言うナナを問答無用でベットで寝かせ、リビングのソファで寝ていた俺は太陽の光で目を覚ました。

カーテン閉めるの忘れてたみたいだ、・・・眩しい。


「ふぁーあ、・・・眠い・・・」


 眠気はあるがコーヒー飲んでりゃいつも道理目が覚めるだろ。

机に置いていた本や物をどけ、飯の用意をする。

と言ってもいつもと同じパンとコーヒーの簡素な食事だ。


「そういえば異世界人はなに食うんだろう?」


 昨日からの同居人のことを思い出しふと口に出した。

俺と同じので良いのだろうか。


「と言っても今は他に何もないことだし、口に合わなくても今は我慢してもらって、また買い出しの時でも連れて行って選んでもらうとするか」


 とりあえずパンとコーヒーをもう一つ分用意した。

いつ起きるかは分からんが、まぁ覚めたらまた温めればいいだろう。

のんびりとパンを食べているとナナが現れた。


「おふぁようごあいまふ」

「おはよう。寝ぼけてねーでこっち来い。朝はパンしかないが食えるか?」


 朝に弱いのか、眠そうなナナに食事の用意をしながら聞くと首を縦に振った。

船こいでるわけじゃないよ・・・な。

あと、大丈夫と言ったが十七が他人に無警戒過ぎるだろう。

大物かただのお気楽な性格なのかはわからんが。

 目をこすり意識を覚醒させると、俺の顔を見て真っ赤になった。

身内だと思ったのだろうか、別に気にしないんだがなぁ。


「あれ?バターやジャムは?」

「んなもんねーよ。素材の味があるし問題なし」

「う、うん。わかった」


 硬いパンに苦戦するナナはやがてコツをつかんだようで食べるペースが少し上がった。

柔らかく良いパンは毎日食べていたら簡単に財布が軽くなる。

選んでもらうと言っても、あまり高いのは勘弁してほしいと思う。


「ご馳走様でした!ねえカイト、食器はここで洗えばいいの?」

「おう悪いな、その取っ手を上げれば水が出るようになってるから」

「はーい・・・なんか日本みたい。水は井戸から出して瓶に貯めるみたいな感じのを想像してたんだけどなぁ」


 異世界でもこの魔導具(水道)は存在するみたいだ。

確か、魔法の代わりにカガクの電気を使うんだって言ってたな。

まだカガクについてよく分からんが、それが出来るようになったら下街ももっと幸せに暮らせるようになるのだろうか。

貧困層の人達にもっと安定した生活を遅らせてあげられるんじゃ・・・。

って何を考えているんだ俺は!!今の俺は只の”道具屋”だっていうのに。


「あ、そういえばちょっと気になったんだけどさ、なんでノアールさんが朝からここにいるの?」

「ん?ってうぉ!?」


ふと前を見るとソファにノアが座っていた。


「お邪魔していますカイト、ナナさん。それとノアと呼び捨てで大丈夫ですよ」


 ふふと笑うノアは何度見ても綺麗でやはり、コイツおんーー


「カ・イ・ト?」

「何でもないです」


 首をかしげるナナ、お前は何も知らなくていいんだ。

確信、ノアは絶対心が読めるのだ。

そんなことより、なぜノアが家にいるかだったな。


「カイトは少し面倒がりでして、私は彼が仕事を理由をつけてサボらないよう毎朝声をかけてるんです」

「と言うことだ」

「・・・カイトかっこ悪い」


 俺が答える前にノアが質問に答えたので俺は自身げに同調したんだが。

気にしない、同居人がゴミを見るような目で見ていても何も問題ない。

・・・涙なんで出てないぞ?


「まぁそんなわけで、今から店の準備するからナナも手伝ってくれ。ノアも時間があるならナナのフォローを頼みたいんだが」

「あと十分程度なら問題ありません」

「私一人でも大丈夫だよ!向こうでは一応家事の手伝いくらいしてたんだし」

「ヘェ〜その言葉がどこまで本当だろうなぁ」


俺たちは店に降りて開店の準備に取り掛かった。

ノアは何度も手伝ってくれているので慣れたものであり、ナナにアレをしてくれ、この箱の中身を向こうに並べてくれと指示するとその手助けをこっそりとしてくれる。

ノアの気配りは、世界一ではなかろうか。


「うし、こんなもんか。じゃあナナは店の看板を反対にしてきてくれ」

「はーい」

「では私も帰りますね」

「おう、助かったよ。じゃあまた昼にな」

「ええ、おいしい料理楽しみにしててください」


 二人は外に出て行き、その間にスケジュールを確認した。

今日は魔導具の引き取りが三件に薬や雑貨商品の予約十二件。

後は中層市民区の噴水の修繕作業だが、これは期日がまだ先だし、後回しでいいか。

どうせ精霊石の接続が上手くいってないだけだろうしな。

 仕事を教えるついでにこの世界の事でナナに優先的に覚えてもらうことをいくつかピックアップしていく。

戻ってきたナナにメモを取るために最近売れ出している植物性の紙を渡して一つずつ教えていく事にした。

ナナは真剣に聞いて理解しようとし、分からないことはちゃんと聞いてくれるので指導しやすい。

馬鹿(フレン)や近所の悪ガキどもとはやはり違う。


「貨幣は金貨と銀貨と銅貨で単位はなし、話を聞くに銅貨一枚が百円で銀貨が・・・」

「硬貨は国によって模様や価値が違うな。だからこの国で金持ちになっても他の国では使えないこともあるから注意な。あ、そうそう国と言えばー」

「ちょっとまって!今整理してるから!!」


 必要なことをまとめ、少しずつ教えるはずだったのに、話がすぐそれてしまうのは何故だろうか。

俺はどうやら人に教えるのが下手みたいで、指導役は向いてないようだった。







―◇―◆―◇―◆―





「いらっしゃいませー!」


扉のベルが鳴りナナが明るい笑顔で迎える、客は一瞬驚くがそこそこ可愛い少女に迎えられて気分を良くし自分の目的を果たすため店の中を動く。

ここまではいい、そうここまでは・・・・・・・・。


「きゃあーーー!!危ない!」

「おぉああ!?」


ガラスが盛大に割れる音と悲鳴に驚き店の中を見ると、ナナが客に治療用の魔法薬の入った薬をぶちまけたようだった。

床に散らばるガラスの破片や濡れてポタポタと雫を垂らす熊のような見た目のゴツいおっちゃん、そのおっちゃんに何度も頭を下げるナナ。

午前の短い間、すでに両手で数えられない失敗するナナに頭を抱える俺。


「またか・・・」

「あっカイト、ごめんなさい私・・・」

「おっちゃん怪我はねえか?うちのが迷惑かけた」

「気にすんなよ、うちで母ちゃんに家具投げられることに比べたらどうってことねえよ」


おっちゃんは俺が持ってきた布で髪を拭き、バケツに脱いだ上着の水分を絞り取って豪快に笑う。

鍋を買いに来たそうなのでいくらか値引きして渡し帰って行った。

薬かけてもらった上に負けてもらえるなんてラッキーだとおっちゃんなりの言外のフォローにも涙が出そうだった。

店の裏路地を見ると壊れたものや売り物にならないものが端に固められ、さらに店自体もボロボロになっている。

いや、まぁ元からボロかったけど。

どうしてこうなったんだ・・・。


「ごめんなさいカイト」

「働くのは初めてか?まあ異世界と勝手が違うからかもしれねえけど、もうちょい気を付けてくれ」

「うん・・・」


今の落ち込んでいる状態では同じ失敗をしそうだ、ここは一度空気を入れ替える方がいい。


「少し早いが飯にしよう。ここらで自炊以外って言ったらノアの店でな、なかなか美味いんだよ」


そう言って金の入った袋を持ち、店を一度閉めてノアの店に向かう。

後ろで落ち込むナナに何か気の利いたことを言った方がいいのだろうが、如何せん俺はこういうことに疎い。

俯く姿は見た目も相まって罪悪感が膨らんでくる。

空気が重い・・・どうすっかな。


「あの、さ」

「うん?」


 ナナから話しかけてきたので俺は歩きながらナナの方を向く。


「怒ら・・・ないの?」

「さっきのか?」


 頷くのを見てふと考える。

確かに商品がダメになったのは痛い。

しかしこの世界に来て心落ち着かぬ間に働けと言ってるのは俺なわけだし、ナナ自身も真面目に頑張っているのは出会って間もない俺でもわかる。

心配はしても怒りの感情なんてわくことはない。

それに、面倒見るって言ったしな。


「さっきも言ったが誰でも初めての事っていうのは失敗しても仕方ない。ただそこから何を学んで次にどう生かすかが大切だ」


 その表情はさっきと同じく一生懸命俺の話を理解しようとしていた。

隣にいるナナの頭に手を置いてクシャリと撫でると猫みたいに目を細めた。

その姿がなんだかおもしろくて少し笑ってしまう。


「ま、午後からの仕事に全く進歩がなかったらスッゲー怒るかもしらないけどな」


 途端にさっきまで力のこもった目が力を失う。

あれ、余計なこと言っちまった?







―◇―◆―◇―◆―





 途中脳筋フレンに会い、昼食はまだと言ったので引っ張っていく。

フレンは空気を読まずに思いついたことを脈絡なく話し続ける。

話半分に聞いても大丈夫なのだが、ナナは真面目にその相手をして俺は俺でたまに相槌を打つ。

 フレンのおかげで空気がだいぶよくなったし、たまには役に立つな。

普段はうるさくて安眠妨害だったり仕事の邪魔なだけなのだが。


「いらっしゃいませ、あぁカイトにナナさん、フレンも一緒なんですか。なんだかデジャヴを感じますね」


店はまだ早い時間帯と言うこともあり、やや閑散としていた。


「またなんか起きるってか?まだ怪我が完全に治ってないんだから勘弁してくれ」

「ナナがいるから同じじゃねえよ。それに俺が誰ときてもいいじゃん」

「こんにちはノアさん。さっきぶりです」

「どうも、初めての仕事はどうでしたか?ああこちらの席に座ってください」


ノアに誘導されて四人席に座る。

暖かな日差しが窓からこの席に降り注ぎ、思わず眠ってしまいそうだった。

眠気をを払うように頬をつねり、訝しげに見るフレンに言う。


「そう言えばフレンお前が運んできた材料、幾つか他店のものが来てたぞ。手間書けさせた罰として今日の飯代は七:三な」

「あれそうだっけ?あ、ナナ!この豚を揚げたやつめっちゃウメェぞ」

「おい、はぐらかそうとしてもそうはいかんぞ。それとナナ、それは昼に食うのは腹にきついからこっちの白身魚のソテーにしとけ。デザート頼むならノアスペシャルだ」

「ノアスペシャルは女性に人気ですね。私の発案でしてね、林檎やメロン、チョコ、クリームにアイス等甘い物のフルコースを大皿に乗せたものです」

「それこの店でそこそこするやつじゃねえか!俺は払わんぞ!今月厳しいんだよ」

「セコイやつめ」

「フレンここは男の見せ所です。ナナさんに少しでもいいところを見せて印象を良くしなくては」

「俺の印象今マイナスなのか!?くっ仕方ねぇ」

「え、えっと・・・」


 勝手に話し出す俺らにあたふたするナナと手慣れたノア。

最終的に各々が好きなものを頼んだ。

待っている間にフレンが騒ぎすぎてノアのおばちゃんが拳で黙らせるなどあった。

俺らが食べてる間に客が多くなってきたこともあり今日はノアとあまり話せなかったが、ノアも忙しくなるにつれて楽しそうに笑っているからいいか。

午後からの仕事はどうなるだろうな。

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