吸血鬼の捜索
《――――分かったかの?》
と、急に現実に戻されて、シェイドにそう聞かれる僕。それに対して僕は言葉を出さずにコクリと頷く。サファイア達の眼にはいきなり僕とシェイドの2人が動かなくなったかと思ったら、もう既に話が付いていると言う事に少々納得が言っていないようだったが、説明を一から十まできちんとしている暇はない。シェイドが言うには、弓葉はもう既に儀式を行う会場に着いていて、呼び出している真っ最中の可能性が高いのだとか。それならば、こんな所で油を売っている暇はない。
僕達はシェイドに別れを告げて、その場を後にする。
「とりあえず、今は弓葉を探そう。ヒルデガルドさん、神式ってどのくらいの広さが必要なんだ?」
と、僕がそう聞くと、ヒルデガルドさんは「かなりの大きさが必要よ」と即座に答えた。
「『吸血鬼の神式』も、他の神式も要するに神を呼び出して認めて貰うと言う分には変わらないですわ。そして、神を呼び出すにはそれだけ広い場所が必要になって来るのです」
無理矢理とは言っても神を下す儀式。神に見合ったくらいの大きな場所が必要となって来るのだそうだ。地面、もしくは水面が考えられる。
そして吸血鬼だったら、水面はダメらしい。弓葉はスキルを調節して水も克服しているが、多くの吸血鬼は水が苦手、と言うか天敵みたいな物だ。実際には吸血鬼が苦手なのは流水、即ち流れる水なのであるが。なので、弓葉が『吸血鬼の神式』を行う場所は広い地面の場所。
「そんなに大きな場所を確保するのはこのシナピアでは難しい……」
なにせここは森だ。木がうっそうと生い茂っており、木があまり生えていない広い場所と言うのは、限られてくる。
「と言う訳で、ヒルデガルドさんとリン、2人は空からそう言った広い場所がないかの確認を頼む」
そう言うと、2人はそれぞれ了解の言葉を言って、空を飛んでいった。
「あの、私もやって良いですか?」
と、2人が空を飛んで行ったあと、控えめにそう言って来るサファイア。あぁ、そうか。サファイアはドッペルゲンガー。どんな姿にも慣れるんだったよな。空を飛ぶ事も勿論、可能か。
「じゃあ、頼む」
「分かりました。私、リュウト様のために精一杯頑張らせて……」
そう言って、背中からドラゴンの翼を生やして飛ぼうとするサファイア。
跳ぶ前にリンが伝えていた場所を見つけてしまったため、サファイアの飛行姿はお預けとなった。その後、少しリンとサファイアの仲が悪くなった。一方的にサファイアが顔を膨らませて怒っていただけだが。