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Road to Lord -魔王の道-  作者: アッキ@瓶の蓋。
第5話 力を欲する吸血鬼
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ドリアードと伝報

 僕達はハーデアン町にて新たなる仲間であるヒルデガルドと出会い、【サイクロプス協会】のフォース……いや、フォールスを倒した。そしてハーデアン町にてゆっくりとさせていただいていた。

 そんな中、僕達の元に1人の魔物が現れた。


「石動龍斗さん、それに夕張聖さんの一行っすね! ようやく見つけたっすよ!」


 そいつは全身に樹木が絡みついたような女の魔物、ドリアードだった。腕や足、身体には樹木の枝や葉が絡みついており、緑色の髪が印象的な美女であり、その腕には【魔王部隊】と書かれた腕章を付けていた。


「【魔王部隊】……。番勝田の部下か?」

「魔王・番勝田が部下の1人、ドリアードっす! 丁度お二人を探していたので、見つかって良かったっすよ!」


 本来、ドリアードとは長く生きた古木の魔物であり、それと同時にもっと穏やかな性格を想像していたのだが、どうも番勝田によって若干の性格変化が行われてしまっているようである。


「で、魔王の部下が一体、なんのご用だったりすのかしら?」

「ヒルデガルドさんっすよね? お噂は聞いているっすよ」


 ドリアードはそう言って、ヒルデガルドさんを見ながら懐から木片を取り出す。そしてその木片に書かれている事を読み始めるドリアード。


「どうも東堂健二さんをこっそり監視していたゾンビから連絡がないっす。倒されたと言う可能性や仕事を放棄したもあったっすけど、魔王・番勝田の部下である事は変わらないっす。

 あの人には王としての"器"があるっす」


 器、か……。確かに番勝田にはそれだけの力がある事は可笑しくないけれども。あの番勝田には、それだけの魅力があると言う事か。


「番勝田さんはそうは思わなかったっすけど、マミィ・ハンズ様が東堂健二に監視役を付けたっす。けれどもその監視役のゾンビが倒れたっす」

「そう言う事ですね……」

「で、その際に夜里弓葉が居たと言う報告があったっす」


 夜里弓葉が居た? 何か関係があったりするのだろうか?


「夜里弓葉さんって、龍斗さんの所に何度も来ていた後輩の女子さんですよね?」

「えぇ、まぁ。転生の際、吸血鬼を選んだようだが」


 あいつはなんだかんだで吸血鬼の弱点を補うスキルばかりを選んでいたようだが、弓葉はどう言った戦闘をするか分からないんだよね。前魔王リーファとの戦いも風呂敷を広げるだけ広げて、そして一気に畳んでしまって強さが分かっていないんだよな。

 学校時代も、なんだかんだで懐いてくれてはいた。会う機会も多くて話す機会も多かったし、家にも来ている事も多かった。それなのにも関わらず、事情も良く聞いていない女ではあったが。


 そう言えば、ほんの少しだけ夜里弓葉の家の事情を聴いた事があったな。あれは知り合ってしばらくした後の、僕の家に初めて遊びに来た頃の出来事だった。


『石動先輩の家は、なんか暗いですよね。一人暮らしじゃなくて実家暮らしなのに……』

『まぁ、この年頃の男ならばそんなもんだよ』

『そうですか……。けれどもこんな寂しい部屋だと……家を……』


 と、弓葉がそう言っていたような事を言っていた気がする。僕の部屋が寂しい部屋だと言っていて、その後に何か語っていたような……。その後に僕が何かを言って、それから急激に仲良くなったような……。けれども、何を言っていたのかはさっぱり思い出せないが。


「…………」

「どうかしましたかなの?」

「いや、何でもないでしょ」


 と、リンにそう言う。僕が弓葉の事を想いかえしている間に、ドリアードは聖さんと何かを話している。聖さんはなんか複雑そうな顔で頷いたり、首を振ったりしながらも、ドリアードと共に話し合っている。そしてこちらを見てコクリと一回頷き、ドリアードに何かを言い始めた。

 ……何を話しているのだろうか?


 そしてドリアードが嬉しそうな顔でこちらに話しかけてくる。


「いやー、夕張さんが納得してくれたようで嬉しい限りっす。……で、石動さんにはちょっと手伝って欲しい事があるっす」

「何ですか? 協力できる範囲でなら協力しますよ?」


 しないと、今の魔王の番勝田が怒って何を仕掛けて来るか分からない。それに協力出来る事は協力した方が良いだろうし。


「話が速くて助かるっすよ。じゃあ、聖さんに毒耐性を付けて欲しいっす。この毒虫達を使って」


 そう言って右腕で聖さんの背中を押しながら、左側から出した大木の木に何匹もの毒虫の死骸を見せるドリアード。


「いきなりやれと言われても、混乱するのは分かっているっす。ですので、私の方から説明して貰うっす。実は聖さんにはとある場所に現れた魔王退治をお願いしたいと、魔王様は言っておらっしゃったっす」

「ある魔王? そいつは聖さんじゃないと倒せないのか?」


 聖さんじゃなくても倒せるんだったら、番勝田の方が適任だろう。聖さんよりも戦闘慣れしているだろうし、彼女よりも戦う意思があるのだし。


「魔王様が倒せるのだったら、とっくに行ってるっすよ。そいつは私のような植物の魔物、そして聖さんのようなエルフしか行けない場所、マナピアに居るんっす」


 マナピア。

 確か、魔王城の資料で読んだ記憶がある。


【マナピアは【イナスフィア】の中でも神聖な森である。そこに住まう者達は森を愛し、森に住む事を許可されし者達であり、そこに入れる者は森を助け、森に関わる事を許されし者達だけである】


 つまりは、植物系の魔物。そしてエルフしか行けない神聖な森。それがマナピアだったはずだ。


「そんな所に現れた魔王は……危険なのか?」

「恐らく、神が作った次元の狭間から現れた魔王っす」


 マナピアは森に関わる事を許可した者しか入る事を許されない。他にもそう言った、特定の者しか入れない場所はいっぱいある。

 しかし、何事も例外、すなわち抜け道が存在する。それが次元を超える事。次元を超えた者にはその許可は適用されない。


 そして神は、試練と称して魔王や勇者、魔神に魔物などを送り込んでくる場合もある。今回、マナピアに現れた魔王は、神が与えた試練なのだろう。


「【廃棄魔王(ダストキング)】、トラッシュ。かの王は自身の事をそう名乗り、マナピアに自身の力を発動してるっすよ。それもトラッシュの持っていた能力は、森と相性の悪い汚染攻撃をしているっす。ですのでエルフである聖さんが行ってくれると嬉しいっすし、なおかつこの毒虫の毒耐性を龍斗さんの力で与えてくれると心強いっす!」

「なるほど。それは確かにそうだな。その汚染がどれくらいか分からない以上、毒耐性はあった方が良いだろう」


 そして僕はドリアードの言葉に納得し、聖さんに毒虫から毒耐性を【過去からの継承】と【恵みの雨】で与えて置いた。

 聖さんは毒耐性を手に入れ、ドリアードと共にマナピアへと向かい、僕達は夜里弓葉の様子が気になり、彼女を探す事にした。

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