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Road to Lord -魔王の道-  作者: アッキ@瓶の蓋。
第5話 力を欲する吸血鬼
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東堂健二のその後

 東堂健二は私立シキジマ中学高校一貫校の生徒会長である。

 生徒会長と言っても、皆に選出されて皆の支持を得て生徒会長となった者と、他に適任が居なかったために生徒会長になった者の2パターンがある。東堂健二は後者、他に適任が居なかったために生徒会長になった者であった。マンモス校にしては珍しいくらい、生徒会長になりたがる人物がその時は東堂健二しか居なかったのだそうだ。他にも生徒会長に相応しい人物は何人か居たそうだが、彼ら彼女らは揃ってやりたがらなかったのだから仕方がない。

 なので生徒会長に選ばれたとは言っても、皆からの評価はそれほど高くはなかった。勿論、自分が皆から選ばれて生徒会長になった事は東堂健二が良く知っていたから、皆の期待に応えられるようにと色々な業績を行っていた。

 委員会同士のサポート連携の取り組みや、教師との連携を真剣に、そして真摯に取り組んでいた。

 けれども彼は疲れ果てていた。他の生徒会役員は彼ほど真剣に取り組んだ訳では無くて、委員会もお互いに牽制(けんせい)しあったりしていて、それを止めるのにほとほとに疲れ果てていた。


 そしてほとほとに疲れ果てていた頃、東堂健二は私立シキシマ中学高校一貫校の生徒達と共に転移した。そして月裏イヴァリストに転移の話を聞いて、東堂健二は喜んでいた。


(これであの生徒会活動から解放される! 自由になれる!)


 魔王になれと言うのは別として、自分の好きなように姿、および能力を作れるのは嬉しい物だ。

 そこで東堂健二は暴力が嫌いだったから、殴られないように物理攻撃を受ける事のないゴーストと言う種族を選び、召喚する能力と多くの仲間を得た。


 転移する際、東堂健二は同行者として3人の生徒を選出した。

 気の弱い女子生徒が2人と、天下とかに興味が無さそうな男子生徒の計3人である。この3人ならば対抗馬が居ないから、魔王になるとしても都合が良いだろうなと考えたのである。けれども転移する一瞬前に、不良の番勝田が付いて来てしまった。そのせいで番勝田などと言う不測事態(イレギュラー)を、生徒会長で暴力嫌いの私が一番嫌いな不良などと共に転移する事になってしまったのはいただけない話である。


 そのせいであちらが魔王になってしまった。まぁ、正直魔王の座に最初から興味などなく、くれてやっても良かったが、自分が嫌いな存在がその立場に就いたと言う、その事実が東堂健二にとっては酷く気に喰わなかった。


(まぁ、良いか)


 問題はこれからどう生きるか、である。魔王城に住まわせて貰うと言う事も出来たが、それは魔王である番勝田の配下になると言う意味でもあるので却下する。これ以上、無様にはなりたくはなかった。


 では、村に行くか?

 ゴーストは種族的に単独行動を好む者であり、ゴーストの村は無い。人間が住まう村は『ゴーストは死者の姿をし、人々の生気を吸う化け物』と言う伝承が残っているので近付けない。


 まぁ、選択肢をあげるとすれば、このまま仲間達と共に山とかに移り住んで世捨て人のように余生を暮らすか、もしくはどこかの魔物達の集落に行くか。前者を選ぶ事は容易に出来たが、仲間達がそれは嫌だと言うので東堂健二はどこかの村を探す事にした。


 自分達の大所帯を受け入れる村は少なく、受け入れてくれる村も厳しい取り決めがあって付いていけなかった。まぁ、そこまで厳しい取り決めがあった訳ではないが、自由を求める東堂健二にとっては厳しい取り決めに見えたと言うだけの話である。


「はぁ、見つかるのかなー」


 元気を出してー、と仲間達が言うが、所詮は自分に都合の良い事しか言わない奴らだ。使い魔も召喚された者達も、自分と言う人格では無く、自分が主だからこうやって優しい言葉をかけているに違いないと東堂健二は思っていた。本当は彼らにも人格があり、それに耳を傾ける事も出来たが、東堂健二はそれをしなかった。


 そうして、自分達が住まう村を探している最中、東堂健二は彼女に出会った。


「こんばんはですね、生徒会長」


 東堂健二の事を生徒会長と呼ぶその人物は、東堂健二と同じく転移し、吸血鬼族としてこちらの世界に降り立った夜里弓葉(やざとゆみは)であった。


「偶然ですね」


 と言う言葉に、東堂健二は怪しさを感じていた。

 彼女に行先を言った覚えも、ましてやこっちに来たのは彼女と別れた後、仲間と共に相談して歩きながら東堂健二が来た場所であり、偶然会うような場所でも無い。

 それに彼女の存在自体も、東堂健二は怪しいと思っていた。旅の最中、吸血鬼を越えた超・吸血鬼に成れたと、石動龍斗(いするぎりゅうと)に対して自慢していたのに、その力を見せる間もなく負けを認めていた。だから彼女の実力をはっきりと見た事は無かった。だからこそ、東堂健二は彼女の事を怪しんでいた。


「夜里弓葉……会うのは偶然だな。だが、偶然と言い切れないな。ここに来る事を私は言った覚えはないし、あの時はここに来るなんて思ってなかった」

「でしょうね。おかげで私の眷族(・・)があなたを突きとめるのに苦労しました」


 眷族……? 使い魔でなく眷族と言っているのが気になるが、別の物なのだったりするのだろうか? まぁ、そんな事は東堂健二にとってはどうでも良い事であった。


「何の用で来たのかは別として……とりあえずは様子見、で!」


 そう言って東堂健二は、召喚された者達と使い魔に夜里弓葉を襲うように指示を出す。弓葉が何かを企んでいるだろうし、とりあえず捕まえれば……。


「やっぱり気付かれました、か……」


 と、分かったかのように弓葉は襲い掛かって来た召喚された者達と使い魔に対して、血液で縄を作り出して襲い掛かって来た奴らを捕まえていた。


(血を吸う吸血鬼が血を操って血液で錬成するとは……けれども、火炎を放つか)


 と、そう言って東堂健二は火炎を放つ。それを血液で防ぐ弓葉。


「炎を撃って来ました、か。やはり私の目的は分かっているのですね」

「ここに来て、偶然だと言っていた時点から、変だとは思っていたんだ、よ!」


 そう言って東堂健二は本格的に戦闘を始めた。弓葉がどうしてここで襲って来たかは分からないが、まずは倒してから話を聞かせて貰いたい物である。


 ――――――そして東堂健二は夜里弓葉と戦闘を始めた。






 それから数十分後。


「ハハ……。これでようやく東堂健二の力を手に入れましたね」


 そこには東堂健二の部下を全員殺し、東堂健二の服を切り裂いてマントにして羽織った、狂ったような瞳をした夜里弓葉の姿がそこにあった。

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