第2幕と人形
彼女はドラゴンを思わせるようなその強靭な足でゆっくりと歩いて来る。頭の上に浮かぶ天使の輪からは神々しいオーラが出ており、腕の金色の爪はこちらに近付くにつれてゆっくりと輝きが強くなっていた。
「あぁ、これでようやくヒトメ様の一部になれました。
あぁ、素晴らしい。あぁ、光栄ですね。あぁ、至福の時……」
恍惚の笑みを浮かべながらゆっくりと歩くフォースの前に、サファイアが現れる。そしてサファイアは全身を変身させて、腕と足、身体は巨大な深緑色のトカゲのような姿、凶暴そうなドラゴンの姿へと変わり、そしてその口から見える凶悪そうで凶暴そうな牙を見せながら、フォースの前に立っていた。
『グオオオォォォ……』
ドラゴンになったサファイアは、うなり声をあげながらフォースへと向かって行く。それを見てフォースが「うぬぬ……」と苦悶の声をあげる。そして苦悩の表情でドラゴンになったサファイアを見つめる。
「折角、私がヒトメ様の甘美なる喜びをかみしめていたのに……。それなのに! それなのにぃぃぃぃ!」
そう言って、フォースは左手の金色の爪を輝かせ、そしてそのままサファイアを斬った。サファイアのドラゴンとなった硬い鱗の身体に傷を付けていた。そしてドラゴン化したサファイアはそのまま倒れた。
「あの爪、相当硬そうですね……」
と、リンはそう言って、フォースの金色に輝く爪を睨み付けていた。確かにドラゴンとなったサファイアの硬い鱗に傷付けるほどの鋭さを持っていると言うのは、要注意である。
「あまり接近戦はお勧め出来ないな」
「でしたら……火炎鱗粉!」
僕が冷静に状況を把握する。そしてリンが近寄らせないために炎の鱗粉を羽で飛ばしていた。そしてフォースの足が燃え始めて、焦げ始める。
「くっ……! でもやられたのはセカンドの部分。まだファーストとサードが残ってますし、ヒトメ様の部品があると言う事には変わりありません!」
「さっきからヒトメ、ヒトメって……。お前はヒトメの作品じゃないのか?」
僕がそう確信を付くような発言をすると、途端にフォースの歩みが、動きが止まる。そして怒ったかのようにこちらを見つめていた。
「――――――知らなかったとは言っても、私の地雷を触れた事は赦せません。では私の事を悠々と説明とご教授させていただいた後、殺させていただきましょう」
ウフフ、と笑いながら、フォースは僕達に語り始めていた。
「ヒトメ様は勇者になれなかったですが、数々の功績を残された方です。そのヒトメ様が作られた自律人形の3体、それがバランス型のファースト、攻撃型のセカンド、そして防御型のサードの3体です。その3体をベースに作られた4体目、それがフォースと言う私です」
最初は3体製作する予定だったが、途中になって新しい物を作るために、前に作った3体を参考に作るのは別に可笑しな事ではないだろう。
「そして4体目であるフォースはヒトメ様が設計だけ行った自律人形。それを金儲けのために、どこぞのアホが作り出した自律人形こそが私なのです。
私の身体にヒトメ様が手を付けた所は1つも無かったのですが、ファーストからサードまでの3体を取り込む事によって、ヒトメ様の手がかかった部品が私の身体の中に……。あぁ、今ほど動いている事を感謝する日はございません」
嬉しそうに言うフォース。そして金色の爪を激しく回転させながら、こちらに向かって来る。
「フフフ……これでもうあなた方に心残りはございませんね。さぁ、死ね――――――!」
そう言って、フォースが僕とリンに向かって金の爪を振るう。僕は剣を、そしてリンは炎魔法で作った槍を持って待ち構え、
そんな僕達は関係なく、フォースは窓から飛んで来た火炎の球によって窓から外へと飛んで行った。