人形と戦闘劇
金色の瞳と髪を持った黒色のゴスロリドレスを着たフォースと名乗ったそいつは、腕と足から金属製の刃を出し、背中には砂鉄で作った翼が生えていた。そしてそいつは、こちらを見ながら人形のような無表情の顔のまま笑っていた。
「先程の攻撃デ、他は大丈夫ダケド言語機能がやラレマしたね。まァ、こノクラいならすぐに直セルデしょう。
……ピ、ぴぴ、ピー。直せましたね。では、もう一度自己紹介を。私はフォース、ヒトメ様の従僕にして、ヒトメ様を勇者として返り咲きを願う者です」
「名前なんか覚える暇ないですよ。何せ、すぐにやられるんですから」
と言い、サファイアが両腕を物凄い筋肉で出来た腕に変えて、その変化させた腕でフォースに向かって殴りかかった。
「そんな攻撃は、『金剛馬力』を得た私には効きませんよ」
そう言って、その筋肉で出来た腕をあっさりと受け止めるフォース。
「人形とは思えない力……!?」
「暗殺用に作られ、なおかつ『金剛馬力』を得た私に、力で勝てると思わないで欲しいですね」
人形のような細腕に止められた事に、びっくりするサファイア。そのサファイアを始末しようとしているのか、背中にあった砂鉄で出来ていた翼が動き出して、そしてそれは彼女の腕の中で硬そうな刃へと変わる。そして人を殺すために変わった刃をサファイアへと向ける。
「……魔王の部下は抹殺」
そう言ってサファイアを見つめる彼女の瞳は無機質で、そして殺すためにじっと見つめているようだった。
「助けないと! 風魔法!」
僕は【魔法の指輪】を使って風魔法の知識を使って、そのままフォースの脚に向かって小さな台風を作り出す。そしてそれは、フォースは台風によって足が取られ、そのまま少し浮かび上がっていた。
「今だ、サファイア!」
「分かってます、龍斗様!」
風を受けてフォースが飛び上がったら、サファイアの拘束が緩んだ。そしてサファイアに今のうちに避けるように言う。その目的は果たされ、サファイアは自分自身を小さな蝶に変化して、そのままフォースの拘束から抜け出していた。
「リン!」
そして抜け出したと思った瞬間には、次いでリンに指示を出す。リンが鱗粉を蝶の羽で飛ばして、飛ばした鱗粉はフォースを覆って火炎塗れになっていた。そしてそこにさらに羽で起こした風によって火炎を激しくするリン。それに負けじと、僕もまた風の魔法でフォースが纏っている火炎をさらに激しくする。人形に火炎はあまり効果はないと思い、最初は牽制のつもりだったが、先程言語機能が可笑しくなっていたから、それなりに効果があると判断した。
そして火炎はますます熱く燃え上がる。その火炎の中から3体の人形が、いや自律人形が現れる。
3体ともフォースに良く似た、しかし瞳の色が違う3体の人形であり、それぞれ額に『Ⅰ』、『Ⅱ』、『Ⅲ』と刻まれていた。
『ファースト。セカンド。サード。
あの方で生まれた、3体の人形。本当に羨ましい。だから、貰いますよ、その身体』
炎の中からそんなフォースの声が聞こえたかと思うと、その3体は炎の中へと吸い込まれて行った。そしてバリッ、バリッ、と何かが壊されるような音が聞こえて来て、そして炎が一瞬にしてかき消される。
そして中には、全くの無傷、それどころか腕が金色の爪、脚がドラゴンを思わせる強靭な足、そして頭に天使の輪のような物を付けた、先程よりも強くなったフォースの姿がそこにはあった。
「さぁ、第2劇の始まりです」