協会と襲撃
僕達(なお、ワイトワームは危険なので宿屋に置いて来た)は勇者が居るとされる【サイクロプス協会】へと足を運んだ。
ハーデアン町にある赤い屋根が目印の煉瓦作りのその大きな店、【サイクロプス協会】。屋根から伸びる大きな3本の煙突からは黒い煙がモクモクと出ており、常にカコンカコンと鉄を叩くような音が聞こえて来る。そして玄関の扉の横にある壁には【オーダーメイド大募集!】や【小さな物から大きな物まで!】と書かれている紙が張られている。他にも別の事が書かれてる何枚もの紙が張られているみたいである。
「ここに例え勇者が居るとしても、簡単に接触は出来なさそうだな」
「そうですねー」
僕がそう言うと、サファイアも返答の声を出していた。とりあえず魔王として僕達はこの世界に呼ばれたんだから、魔王になれなかった今でも魔王のためになるように行動しようと思った結果、【サイクロプス協会】に居るとされる勇者を倒しに来たのだけれども……。
「まぁ、入るだけ入ってみて……様子見だけでもしておきましょう、ですか?」
「最初はそれで止めておいた方が良いかもしれないわね♪ なにせ、ここの【サイクロプス協会】はかなり鍛冶としての性能も良いみたいから、他の勇者も来ていると思うからね♪」
夕張さんとヒルデガルドさんの言葉に、僕はそうだなと考えを改める。
「他の勇者も来ている中で、勇者を倒すなんて行ったら完全に殴り込みと思われるしな……」
勇者も来るとされているこの【サイクロプス協会】の中で、いきなり『勇者を倒す!』みたいな事を言ったとする。すると多分、その倒そうと思っている【サイクロプス協会】に居る勇者だけでもなく、来ている勇者の反感も買ってしまうだろう。ならば一回【サイクロプス協会】の店の中を覗くだけにした方が良いだろう。
「とりあえず、入るだけ入って置こう」
僕達はそう言って、【サイクロプス協会】の中に入った。
「いらっしゃい。ゆっくり見て行ってな」
中に入ると、無精髭を生やした無骨そうな男性が座ってこっちを見ていた。その男性の後ろでは、刀や鎧、短刀と言った主だった武器が棚に並んでいる。鎧を着た男性は目を皿のようにしてじっくりと剣を見ており、そして弓を持った女性は弓の糸を引いて感触を確かめているみたいである。奥では何人かの弟子だと思われる人達が剣を打っていたり、槍を打っていたりして鍛冶を行っている。他のお客様達も色々と武器を手に取って、質感や感触を確かめているみたいである。
「この杖……ご主人様と居た時に持っていた杖……うっ! 結構高いです……」
「結構、高そうですね。……あっ、この長剣は良いかも知れませんね」
と、夕張さんは杖を見て高値である事に落胆していて、サファイアは長剣を鞘から抜いてじっと見つめている。
「さぁ、龍斗君♪ ちょっと龍斗君も武器を見て見たら?」
「けれどもこの店の商品、どれも無駄に高いんだけれども……」
1つ1つの武器の値段が、一般的な武器の2倍くらいの値段なんだけれども。とは言っても、一般的な武器屋はこの町の他の店の値段を参考にしただけなんだけれども。
「けれども、見るだけでも1つ1つがきちんとしている事が分かるなぁ」
「これでアイデアの参考になると良いね♪」
「そうですね」
僕はそう言いながら、ヒルデガルドさんと共に【サイクロプス協会】の武器を見ていた。一つ一つ、細部までこだわっていて、本当に良い出来である。この剣とか見ているだけで……なんだか、吸い込まれそうになるような……。
「危ない!」
「えっ……?」
ヒルデガルドさんにそう言われながら、僕はいきなり突き飛ばされる。いきなり突き飛ばしたヒルデガルドさんに文句を言おうとして何も言えなかった。
だって、僕がさっきまで居た地点に大きな剣が振り下ろされていた。
そしてその剣を振り下ろしていたのは――――――――サファイアだった。
サファイア、敵になるの巻。1週間以内に投稿出来ずに、すいません。これからも楽しく読んでもらえると嬉しいです。