【破片;その2】とある鍛冶屋での記憶
【サイクロプス協会】の主人、ヒトメは人間であると同時に怪物であった。幼い頃に事故で片眼を失くし、そして身体が普通の人の2倍くらいあった事によって、伝説の単眼の巨人の怪物、サイクロプスと言われてバカにされていた。伝説の怪物、サイクロプスは鍛冶に秀でている面もあり、ヒトメもまた鍛冶に置いて優秀だったから、ヒトメはさらに化け物と言われていた。
ヒトメはそれによって、かなり精神的な面で参っていた。それ故に周りの人間を見返すための行動を起こした。それが魔王退治である。
魔王。それは魔界を治める王であり、人間達の天敵である。その魔王を倒す事が出来れば、きっと自分をバカにした奴らも見返せる。認めてくれる。それだけを目標に彼は魔王を倒すための武器を作り、それを自分以外の勇者にも売りまくった。
経済的な事情と言う面もあるが、魔王を倒した際に自分が作った武器で魔王を倒したと言う事になった場合も見返せると思ったからである。自分が魔王を倒すのが一番の見返しだと思っているが、魔王を倒した勇者が使っていた武器として名を挙げるのも1つの手段だと考えたからである。
ヒトメは、彼は我武者羅に頑張った。
魔王を倒すために戦闘訓練も行った。自律して動く戦闘人形や、強い武器も作りまくった。彼は日々寝ずに頑張った。
ただ魔王を倒すために。
ただ周りを見返すために。
―――――――彼は他者から見ても必要以上に頑張っていると分かるくらい、頑張っていた。
そして彼は死んだ。
――――――――死因は過労死だった。
魔王は彼とは何も関わりのない、一勇者によって倒された。
戦いの才能だけで、彼と比べたら特に努力したとは言えない、彼と比べたら特に凄いとも言えない勇者の手によって。
――――――――ヒトメは伝説級の鍛冶師として名を遺した。彼が作った【サイクロプス協会】も今もなお受け継がれて遺されている。
けれども、私は知っている。
彼が本当に遺したかった物を。
―――――――――ヒトメが遺したかった功績、それは『魔王退治』。
自分が魔王を倒す、もしくは魔王を倒した武器を作った鍛冶師として名を遺す。
その願いを叶えます。
ヒトメが真に遺したかった栄光はこの私が叶えます。
――――――――そう。あなたの願いはこの私しか、もう叶えられない。だから、絶対に私が諦める訳には行かない。
例えどんな事をしたって、あなたの願いは叶えて見せますよ。
フフフ……。
アハハ……。
アハハハハハハハハハハハハ!
魔王、殺ス。