石動龍斗と悪魔
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「もう限界です……。休ませてください……」
と、夕張聖さんはハーデアン町に着くなりそう言って来た。まぁ、走り疲れたと言うよりかは、気を使い過ぎて疲れたと言う感じである。夕張さん、何だか魔王城に居た時よりも張り切っているように思えるし、それで気を使い過ぎて疲れてしまったのだろう。それに歩きながら物凄い勢いで糸を編んでいたし、それも疲れる要因の1つになっていたのだろう。
「シュシュ~……」
ワイトワームの方も糸を出し過ぎて疲れてしまったようである。
「――――――もう日も傾いてきましたし、そろそろ、じゃないですか?」
サファイアはそう言って提案する。勿論、僕も夕張さんやワイトワームの程ではないにしても疲れてしまっている。僕の身体自体はただの人間だし、体力的にも心持たないし。この町ではない別の所に行くにしても、今日はもうすぐ日が落ちてしまうから、僕は今日はこの町に泊まろうと思っていた。
「宿屋に向かいましょうか」
そう思い、私達は大通りにある宿屋へと向かっていた。途中、このハーデアン町についての説明を受けた。
このハーデアン町は、まだ魔王城の本にも書かれていないような、作られて間もない町であり、銅や剣などの鋳物業でここ3年で急成長を遂げた町らしい。ハールス村、デニス村、そしてアンジェ村と言う村の3つが合併して生まれたらしくて、それで名前がハーデニアン町だったんだが、呼びづらいと言う事でハーデアン町と言う名前に改名したんだそうだ。
なんて言うか、デニス村の残っているのはデの1文字しか残っていないのだが……。
「あっ、宿屋が見えてきましたよ」
と、サファイアが言う。目の前には宿屋と、その前に1人の女性が立っている。
頭には魔女が被るような三角帽子を被っていて、紫色の髪を長くなびかせながら、それを頭の後ろで数回転させて丸めた特徴的な髪型をした金色の瞳の大人びた顔立ちの女性で、誰かを待っているみたいでしきりにキョロキョロと辺りを窺っている。
(なんか、こう……不思議な人だ)
周りの人も目を惹きつける彼女を通り過ぎながら様子を窺っている。ファッション的にも容姿的にも、何だか気になる女性だしな。向こうの眼鏡をかけた少女が、「りゅ、竜……!」と言って逃げ出してしまったが、どうしたんだろう? 僕が知る竜と言うと、子供スイリュウの事だが、子供スイリュウはここには居ないはずなのに……。
眼鏡の少女の言葉をそんな風に聞きながら、宿屋へと歩いていると、ふと彼女と目が合った。まぁ、宿屋の前に立っているのだから、目が合って当然なのだが、彼女は眼を逸らさずにじっとこちらを見つめている。そしてそのままこちらに向けて、ゆっくりと歩き出し、僕達の前に止まる。
「石動龍斗、ですよね?」
優しげな、そんな声で彼女はそう聞いて来て、僕は肯いた。そして彼女は言葉を繋ぐ。
「ようやく会えましたね」
「ようやく……?」
生憎と彼女とは初対面だが、どこかで会った事があるだろうか? けれどもわざわざ聞くのも失礼だし……。
「私の助言は役に立ちましたか? 頭の中で声をかけたんですが」
その言葉に、僕はようやく思い出した。もしかして……
「前魔王との戦いの時に、頭の中に話しかけて来た……」
「はい。ヒルデガルドと申します。話したい事があるので、お時間を拝借してよろしいですか?」
彼女はそう、綺麗に笑いながらそう言った。