ヒルデガルドと眼鏡
石動龍斗達一行が向かっている先にある町、鍋や剣などの鋳物業が有名なハーデアン町には私、ヒルデガルドが宿屋の前に立っていた。私が待っているのは石動龍斗である。
(石動龍斗がこの町に来るのは分かっている。彼は他にサファイア、ワイトワーム、それから夕張聖と3人の仲間がいる。どこに行くにしても、この大通りに面してる宿屋の前を通る。その際にアクションを起こして仲間に入れて貰おう)
私はそう思いながら、彼らが来るのを待っていた。宿屋の前で待っていると、多くの人間が宿屋の前に立つ私を見つつ、歩いていた。まぁ、私の容姿は魔女が被るような帽子と竜の翼など目をつきますが、今の私は魔法を使って一般人を装っている。だから、あそこの竜の翼を見て驚いている彼は可笑しいと言う事である。
「何を驚いているんだか」
私はそう言って驚いた彼を魔法の縄にて捕らえ、そのまま裏道へと飛ばす。そして私も彼に続いて裏道へと入る。
「さて、仮にも悪魔である私の魔法をどうしてあなた如きが見破れるのかしら? 特に秀でた所も、賢しい知恵も持たぬただの凡人が」
私はそう言って、魔法の縄でしばった彼に聞く。彼はどこにも優れている様子は無く、何処にでも居るような眼鏡をかけた男性だった。特にこれと言った凄そうな雰囲気は無く、秀でてるところも無さそうのに、私の魔法を見破るだなんて……。
「答えなさい、どうやって見破ったの?」
「え、えっと……眼鏡が……」
眼鏡……? 私は彼の眼鏡をじっと観察する。良く見ると彼の眼鏡には、魔術に対する高度な組み込みがされており、この眼鏡ではどんな魔法でも実体を隠す事が出来ない。
私はその後、眼鏡を一通り調べて、そして納得する。
(あぁ、そう言う……)
「あ、あの~……もう帰っても……」
と、眼鏡を調べていると持ち主からそう言う声がかかる。そう言えば、ずっと捕らえたままだった。
「あぁ、良いわよ。付き合わせて悪かったわね」
私はそう言って、少し細工をして彼に渡す。彼は良かったと言いつつ、そのままこちらを見つつ裏道を出て行った。その様子を見て、私はやっぱりと頷く。
「あの男は白ね。眼鏡にかけられていた魔術の実体を見破る効果を打ち消したのに、まるで気付いていないし。となると、怪しいのはこっちかな?」
私はそう言いつつ、メモしておいた名前を再び見つめる。眼鏡に記されてあった『Cyclops Company』、サイクロプス協会と言う名前を。
「あの眼鏡がただの実体を見破るだけの眼鏡だったら、私もそれで済んだんだけれども、『龍斗を襲え』と言う命令魔術が組み込まれていたしね」
あの眼鏡にかけられていたのは、魔法で隠された実体を見つける魔法だけでは無い。石動龍斗を見つけたら殺すように仕組みがされている。
「この『サイクロプス協会』は調べる価値がありそうね」
私はそう言いつつ、宿屋の前にスタンバイに戻るのであった。そして数分後、そんな私の前に遂に目的となる人物が現れた。
「……居た!」
石動龍斗達一向である。