リーファと龍斗(1)
先代魔王リーファと夜里弓葉の2人の対決によって場が濁されてしまって、空気が沈んだ感じで僕の対決は始まった。僕は使い魔としてワイトワームを選んだ。
ワイトワームは初めに能力の確認のために捕まえた魔物なので弱いけれども、それでもサファイアは禁止にされているし、子供スイリュウはあまりにも大きすぎてこの魔王城の中に入れない。ゴーレム達はこの魔王城の手伝いのために作ったのでそもそも出す事も出来なかった。結局の所、ワイトワームと一緒にこの先代魔王リーファを倒す事になってしまった。
……まぁ、番勝田がリーファを倒してしまっているし、結局の所は今の力がどれくらいかと言う事を試す良い機会だ。勝てなくても良い、せめて先程のような無様な対戦結果にならないように頑張らさせて頂こう。
「ワイトワーム、勝てなくても良い。せめてほどほどの結果になるようにしよう」
「シュ、シュシュシュ!」
僕は戦闘としてワイトワームと一緒に、リーファと向き合っていた。先程の残念な夜里弓葉との戦いのせいで、魔王城の人達が僕達の戦いに集中している。まぁ、先程の戦いは武器が良いだけに、本当に残念だったからな。ここで残念な戦いでもしよう物ならば、何かとんでもない事を言われそうな気がする。
(まさか弓葉は自分が無様な戦いをすれば、このように次の戦いである僕は無様な戦いは出来ないって事を考えていたんだろうか?)
最初は確かに棄権でもすればいいとは思っていたけれども、こんな状況で棄権なんて出来ないな。弓葉は良い笑顔でこっちを見ている。
(「頑張ってくださいね、石動先輩!」とでも言いたげだな……。まさか本当に狙っていたとかではないだろうか?)
後で聞いて置く事にしよう。まさか本当に狙っていたとかではないんだろうけれども。
「ワイトワーム、策を始めるぞ」
「シュシュ、シュー!」
とりあえず勝負を始めよう。リーファと頑張っておかないと。
《ワイトワーム、ユズリハの葉とルノの実を併せ持てばあれになるあの魔物か。この持ち主は、気付いているのだろうか?》
ユズリハの葉とルノの実? それは何かの暗号だったりするのだろうか? ワイトワームについてはある程度調べていたのだが、そんな記述は見なかったな。……今度、試しておきましょうか。
「それはそれとして……ワイトワーム、やれ」
僕はワイトワームに指示を出し、ワイトワームはその指示に従うようにして糸を吐く。吐かれた糸は一直線にリーファへと向かっていた。そしてその糸はリーファを縛り上げる。
《このくらいの糸程度ならば余裕で……フンっ!》
そう言って、リーファが魔力を込めて糸を斬ろうとするけれども、糸は全く切れない。その事にリーファが驚いた顔をする。
《ほぅ……魔力を封じる糸、か。奇怪だな。それに切ったら傷を負うように糸を調節しているな。
その辺りはしっかりと出来ているようですな。良い持ち主に出会えたようで何よりだな》
《へぇ……》と言いつつ、リーファは腰から剣を抜く。
《久しぶりに面白い相手に出会えた》
ニヤリとリーファは楽しそうに言いながら、剣をこちらに向けていた。
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