魔王になるために
識別ナンバー《九十九》の筆頭男型ゴーレムと、識別ナンバー《八百一》の筆頭女型ゴーレムの2人に連れられるようにして、僕は魔王城の謁見の間へと入る。ちなみに、サファイアはここに連れて来ては居ない。どうも東堂健二が入るなと言ったらしい。理由は2体のゴーレムも知らないらしいけれども、多分ろくな理由でもあるまい。
そこはあの時の、僕達が召喚された時に居た間であった。きらびやかなシャンデリアと、豪華な家具などが飾られたエントランスのある間であった。
そこには魔族の他にも、既に他の皆が並んで待っていた。
周りに沢山の精霊やら魔物やらを侍らせている東堂健二。圧倒的に強者の雰囲気を漂わせている番勝田。何故か髪の色が真っ白になって瞳が真っ赤になってしまっている夜里弓葉。そして別れる前とどこも変わっていないように見える夕張聖。並んでいる順番とすれば、真ん中に大きな椅子があるとして、夜里弓葉、東堂健二、真ん中の大きな椅子、夕張聖、番勝田の順番に並んでいる。
僕が入ると共に、魔族の執事らしき人がこっちを見るやいなや、僕に近付いて来る。真っ黒な肌と、額にある三つ目が特徴の執事さんは、頭を下げて僕に話しかけて来た。
「石動龍斗殿、ですね。お待ちしておりました。早速で申し訳ございませんが、夜里弓葉殿の横に行ってもらえますか?」
「わ、分かりました」
「あぁ、それと置いてくださったゴーレム達は大変重宝させていただいております」
……どうやら好評なようで、製作者としては良かったの一言につきる。そして僕は言われた通りに、夜里弓葉の横に向かい、立っておく。弓葉はこっちを見ると、ニコヤカな顔でこっちを見て話を振って来る。
「先輩! 先輩! お久しぶりですね。覚えていますか? あなたの後輩、夜里弓葉ですよ」
「あぁ……本当に久しぶりだが、どうしたんだ、その髪?」
「ちょっと、向こうの村で儀式がありまして。その儀式によってあの村に埋められた亡き真祖達の力を手に入れた結果です。今の私は真祖を越えた真祖、超・真祖と言っても良いでしょう」
「……」
何だかうちの後輩が、とってもヤバい儀式にて真祖を越えた真祖になったらしい。けれども超・真祖と言うネーミングセンスには流石にどうだろうと突っ込まざるを得ない。いや、別に悪いとは言ってないんだけれども。もう少しやりようがあったんじゃないだろうか?
弓葉は今の状況について説明してくれる。とりあえず、弓葉、健二、勝田の事について聞いてみる。
番勝田はデザート村にてミイラ族のマミィさんを生贄にする現場に出会い、それを許せずに魔のピラミッドにドラゴンと共に潜入。獣人の血を目覚めさせる事に成功した彼は、そこで《闇の叫び》と言うゴーストを倒す事に成功する。今の彼は目覚めた獣人の血と、マミィ・ハンズと言う嫁を手に入れたとの事だ。
東堂健二は最上級精霊を手に入れる事に成功する。しかし、その過程で何匹かの精霊との契約を解除しなくてはならなかったらしいが。その後、マンティコアと言う大きな翼と蠍の尻尾を持つ魔物と相対するも、無事に撃破に成功したらしい。
そして、弓葉はと言うと、ダーティ村の故人の吸血鬼族の力を1人の吸血鬼に受け継がせると言う現場にたまたま出会い、その場のノリ的な勢い(そんなので受けて良い物なのか)でその力を受け継いだらしい。
「今だと魅了だけで、闇系魔物は一網打尽です」
「あぁ、そう……」
「も、勿論、他の魔物にも効きますけれども……先輩は実力で落としますゆえ(小声)」
何を言ったのか、最後の方が小声だったので聞こえないのだけれども。
そんな風に僕と弓葉が情報交換をしている中も、魔王継承の儀なる次の魔王の選抜の儀式は進んで行き、今は僕を案内してくれたあの三つ目の執事さんが長ったらしい祝詞のような物を読み上げている。
「ちなみに、この後ちょっとしたイベントがあるので、先輩も張り切ってくださいね」
「イベント……? 次代の魔王を決めること自体が、既にイベントなのに?」
まぁ、要するに彼女が言いたいのは、式自体に何か特殊なイベントがあると言う事を言いたいのだろうけれども。
「どうも、私達はこれから魔王と勝負しないといけないみたいです」
「はぁ?」
魔王が死んだから僕達5人が呼ばれたと思うんだけれども、その魔王と戦うって一体どう言う事?
『キャストオフ・アクセル』をリアル友達と一緒に考えながら、作っています。最近はチート系主人公よりも、強さしか頭にない特化系主人公の方が作っていて簡単だなと思っていますが、リアル友達しか見ていないので、よろしければ参考程度に意見が聞きたいです。