使い魔選びは激戦区
『転生者全員の職業とスキル選びが完了いたしました。これより皆様を次の項目へご案内いたします』
先程と同じようにスクリーンが出て、そこに映る般若面を被った女性がそう言った。かと思うといきなりまたしても先程と同じように僕達は白い光に包み込まれた。
(今度は何だよ……!)
眩しさで目を瞑っていた僕が再び目を開けて、目の前に映し出されたのは大きな空間だった。いや、あちらこちらに大きな檻が所狭しと置いてある。
良く見ると先程とは違い、今度はこの学校の生徒全員が居た。……可笑しい。何だか数が減っているような気がする。そうだ、あの時騒いでいた不良、玖渚太郎や一生懸命裏技を探していたはずのヲタク達の姿が見えないのだ。
(まぁ、こんだけの人数がいれば1人や2人居なくても変わらないか。気のせいかも知れないし)
と言う事で、僕は放って置く事にした。どうせ関わりのない奴らだ。気にする必要はない。
『さぁ、皆さん。選び終わった事でしょう。あなた達のスキルは携帯で確認でき、そのスキルは今からでも役に立つでしょう』
またスクリーンが宙に現れて、そこに先程と同じように般若面を付けた女性、イヴァリストさんの姿が映りだされていた。
「あぁ、スキルの確認が出来るのか」
と、僕は一応スキルの確認をしてみる。
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石動龍斗
種族;人間
魔王ランク;
スキル;錬金術Lv.3、身体強化Lv.2、魔法の指輪、罠解除、罠検知、捕獲、飴と鞭、採集、アイテムボックス、過去からの継承、救いの雨
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「魔王ランク……?」
なんだろう、これは? ……まぁ、関係ないし、これは後で良いか。ともかく先程取ったスキルはちゃんと取れた事が確認出来たので良かった。まぁ、”今からでも”と言う言葉が気になるけれども、今使える物は無さそうだから意味はないだろう。
『あなた方には今から使い魔を選んで貰います。使い魔はポイント制によって使役します』
その後のイヴァリストの説明はこうだった。
今から僕達には使い魔を選んで貰うらしい。僕達には1人に付き20ptが与えられており、そのポイントを魔物達に配分させて自分達の使い魔にするらしい。使い魔達は大きく分けて5種類のタイプに分けられている。SからDまでの5タイプ。必要なポイントはS級魔物は12pt、A級魔物は10pt、B級魔物は8pt、C級魔物は5pt、D級魔物は3pt。とは言っても、別にポイントを多くしても少なくしても良いらしいし、一番重要なのはその使い魔が納得出来れば良いらしいと言う事。逆に言えば規定通りのポイントだとしても、ポイントに納得出来なければ使い魔にする事が出来ないと言う事である。まぁ、規定通りのポイントを支払えば多くの場合納得して使い魔になってくれるらしい。規定通りのポイントや規定より多くのポイントを支払っても使い魔にならない、そんな事になるのは余程の事が無い限りは無いらしい。
その余程の事と言うのは、主人となる者があまりにも納得が出来ないとか、その使い魔があまりにも乱暴や横暴とからしいだけれども。
『この空間内には先程申し上げた5種類の魔物がおり、奥に行けば行くほど上級の魔物が居ます。一応、この空間は広すぎるので体力的にも問題無いようにしておきます。
制限時間は2時間、よろしくお願いいたします。では、暗黒正義の名の下に開始せよ!』
「はっ……?」
良く分からない説明だったが、気にしない方が良いのだろう。時間も今回は2時間ときっちり決められているし。制限時間が決められているからか、皆も急いで走り出していた。僕はそう思い、ゆっくりと見て行った。
「――――――へぇ、こうなっているんだ」
と、僕は檻に居たピクシーに目を向ける。携帯電話を魔物に向けるとどうやらその魔物の状況が分かるようである。
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ピクシー
クラス;D
必要ポイント;0/3pt
ポイント[IN][OUT]
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どうやら[IN]のボタンを押すとポイントが増えて、[OUT]のボタンを押すとポイントが減るみたいである。そしてこのポイントがちゃんと規定通りあれば、使い魔に出来るらしい。
「ピー! ピー、ピー!」
どうやら仲間になりたいらしいけれども、僕は試しにとやってみただけなのでそう言う気持ちは無いので残念だけれどもと言う気持ちを見せて置く。
「さて、どいつにしようかな」
既に30分は過ぎた。残りは1時間30分だし、さっさとやっておこう。最後になって時間が足りなくなっても困るし。そう思って僕は奥へと向かって行く。
「確か奥に行くほど、強い魔物が居ると言っていたな」
そうして奥に行っていると、うるさい声が聞こえて来た。うるさい声、と言うよりかは言い争う声と言った方が良いだろう。
「――――――だからさ、俺達。保険が欲しい訳よ」
「よっ! だから、頂戴ってば。ポイントを!」
「なーに、1人頭2pt程で良いからさ! そう、俺達7人で14pt!」
「べーつにー、全部欲しいとは言ってないじゃん。早くくれよ」
と、1人の女性を7人の不良っぽい男性が取り囲んでいる。どうやらポイントを徴収しようと言う事らしい。
……言い忘れていたが、こいつらの言う通りポイントの徴収と言うのだが、それは可能だ。あの般若面を被っていたイヴァリストさんは言ってはいないが、説明の後の方にこう書かれていた。
『ポイントは両者の同意でのみ、引き渡す事が出来る』と。
これを使えば20pt以上を手に入れるのも、理論上可能だ。まぁ、彼らが自力で見つけたとは考えられない。恐らく誰かが見つけたとかで彼らはこの方法を見つけたのだろう。
(しかし、あの娘。誰だろう?)
囲まれているのは、美しい美女だった。
制服を着ているが、その制服を押しのけんばかりのダイナマイトなボディライン。藍色の髪を向かって左は脇の下辺りまで、右は肩よりも低いくらいまで伸ばしたくらいの髪。エメラルド色の瞳をした綺麗さを追求したかのような顔。中学生、いや高校生だとしても彼女はあまりにも綺麗すぎて、あまりにも大人びていた。そんな美女は7人の不良達に囲まれて困惑していた。
誰かが助けないといけない。けれども、そうだとしてもこの近くには誰も居ない。僕だけしか居なかった。助けられるのは僕だけ。
「――――――はぁ……」
彼らが欲しいのは、14pt。だったら、こうするしかない。
「……あのー。ポイントならば僕が払ってあげるよ」
僕は彼女を助ける事にした。見捨てると言う事も出来たけれども、それは僕には選択できなかった。
「おっ、良いのかよ?」
「うわー! マジで感動的だわー」
「わーい! わーい!」
そして僕は彼らに14pt、1人に2ptずつ差し出した。彼らは満足そうに奥へと向かって行った。
「……大丈夫かい?」
僕は彼女に手を指し示す。彼女は手を差し伸べて僕の手を取って、立ち上がる。
「―――――あ、あの……」
「大丈夫?」
「ご、ごめんね。わ、私のせいで大切なポイントを減らしすぎちゃって」
「大丈夫だよ。まだ6ptもあるし」
まぁ、かなり制限されてしまったけれども仕方がない。
「うんうん! 良い人ですね、あなた!」
と、檻の中から可愛らしい声がする。
金色の髪を腰の辺りまで伸ばした20歳くらいの美女。左の瞳は赤く、右の瞳は青いオッドアイ。均整のとれたボディラインと、腰の辺りに長剣を指している。青いワンピースを着た彼女は、魔物達が入るはずの檻の中に入っていた。