成長しているのは、僕達だけじゃあ無かった
なかなか更新が出来ないのが現状ですね。
子供スイリュウによる空の旅は快適とは言えないにしても、それでも足を使って魔王城に行くよりかは時間を大幅に短縮する事が出来た。子供スイリュウは自らの鱗を渡してきて、そのまま巣へと戻るように飛び立った。
「そう言えば、リュウにはとある掟があったんですよね。
―――――――『自身の鱗を私、その者との永遠の縁を誓う』と言う風習があるんだとか? 多分、これはプロポーズの一種とかなんでは?」
「……あのスイリュウ、確か子供だろ? 多分、親愛の証とかでしょ?」
茶化すように言うサファイアに、そう返しておく。確かにそう言う風習がある事は、事前に魔王城の書物にて確認済みだけれども……。
―――――うん。あんまり気にしない方が良い気がする。きっとこれは親愛の証、そうだと思う。そうに違いない……と思いたい。
ともあれ、魔王城に到着したんだ。扉の前で足踏みしているよりかは、中に入った方が良いだろう。そう思い、僕は魔王城の扉を開ける。
「シュー! シュ、シュー!」
いきなり僕の顔に、赤い何かが僕の顔にベシッと、張り付く。それに僕が驚いて慌てる。そうこうしている内に、サファイアがその赤い何かを剥がしてくれた。
「あぁ、ありがとう。サファイア。って……ワイトワーム?」
「シュシュ!」
サファイアが引きはがした物が何かを確認する。それはこの魔王城に預けて置いたワイトワームだった。前に会った時よりも、少しばかり成長して大きくなっている気がする。こう言う虫型のモンスターはレベルが上がると身体が大きくなるらしく、恐らくそう言う事なんだろうなと思った。
「大きくなったな、ワイトワーム。良い子にしてたか?」
「シュ、シュシュシュ!」
身体を激しく揺らして、自身が元気だったと伝えたいんだろうなと思う。まぁ、元気ならば良い。……そう言えば、ワイトワームがここに居るのならば、他にも預けて置いた自作のゴーレム達は……どこに?
トッ、トトッ。
そんな事を考えていると、目の前から2体のゴーレムが向かって来る。1体は全身を銀色の鎧で纏われた騎士、もう1体は何だか気難しそうな顔をしている眼鏡をかけたメイドさん。見かけた事はないけれども、なんだか親近感を覚えるような格好……。
(あぁ、そうか。騎士とメイド、自作のゴーレムと格好が似ているのだ)
とは言っても、あんな恰好をしているゴーレムなんて作った覚えも無いんだけれども。騎士は作ったけれども、あんな風に全身を鎧でコーティングしたタイプは設計した覚えが無いし、メイドに関しても眼鏡をかけたタイプも作った覚えも……。
「「お帰りなさいませ! マイ・マスター!」」
そう言って、2体のゴーレムがお辞儀をして僕を出迎えてくれた。
「……へっ?」
僕は呆気に取られてしまった。
……話を聞くと、何でもこの2体のゴーレムは僕が作って置いたゴーレムの中でもとりわけ優秀なゴーレムらしくて、所謂筆頭のゴーレムと言う事で差別化をするために、こうして騎士型の男型ゴーレムは全身を鎧でコーティングして、メイド型の女型ゴーレムは眼鏡をかけるように、ゴーレムの間で話し合ったらしい。
僕としては、そう言う事をしてしまうと後に問題になってしまうと思いますから、止めて欲しいんですが……。
「……と言う訳で、ここからは俺達が案内をするぜ! マスター、こっちだぜ!」
「皆様、お待ちですよ。こちらです」
そう言って、僕達は識別ナンバー《九十九》の筆頭男型ゴーレムと、識別ナンバー《八百一》の筆頭女型ゴーレムに連れられるようにして、魔王城の奥の会合を行うための、謁見の間へと足を運ぶのであった。