Ex.エゴのお仕事
神様の世界。そこでは多くの神様達が、多数の世界を観測しながら自らに割り当てられた仕事を行っている。
端末の神の主神、豆羽エゴ。
端末の神の仕事は、裏方の神様の仕事と類似している。裏方の神様は他の神様の仕事を裏でサポートするのに対して、端末の神様の仕事は他の神様が対処しきれなくなった仕事をやってサポートする。言わば、汚れ仕事を引き受けているのが端末の神様の仕事である。
「今、我はこの仕事を代わりに引き受けた事を後悔している……」
と、端末の神様の主神、豆羽エゴは言う。この前、魔王の神様である月裏イヴァリストが行った大量の魔王の異世界転生。使い魔選びの際に余ってしまった魔物達。
その魔物達を調べてみると、かなりの数の『危険指定モンスター』が見つかったのだ。危険指定モンスター、つまりは厳重に保管しなければならない魔物達。今まで成りを潜めてじっと機会をうかがっていただろう危険な魔物達は、魔王候補たちと一緒に転移した世界に着いた際に牙を剥いて転生者達を襲った。
今回はそう言った魔物達の一部を『危険指定モンスター』として神様の世界の奥の奥へと持って行き、厳重に隔離しようと言う、そう言った手続きの手伝いを豆羽エゴは行っているのである。
「白面金毛九尾の狐、危険思想の持ち主故に危険指定。厳重隔離。
聖獣ペガサス、自分が決めた主以外を亡き者にしようとしたために危険指定。ただし、主になろうとした人間達に品位が認められないため、訴えを受理し、一部神格を落として管理。
メルトスライム、女性の服を溶かす故に危険指定。厳重隔離。
天龍バハムート、喧嘩っ早すぎるために懲罰指定。後に管理……っと」
どうにもこうにも、駄目な者の中にもまだまだ治る見込みもある者が居て、彼はそう言った魔物達をきちんと分けて報告書を書いていた。
「よしっと……ある程度は終わったかな?」
エゴはそう言って、100枚近い報告書の山を見ながらそう言う。これだけ書けばバックアップとして正しい仕事をしたと、他の神様から見ても明らかだろう。
「さて、次のバックアップの仕事だ」
彼はそう言って、1枚の紙を取り出す。その一文はこう記されている。
『運命の神、戦恋メモリアルの仕事。
各世界における魔物配置について』
これをどうして運命の神がしなければならない仕事なのか。それは運命の神の仕事が『人の運命を決める』と言う事だからである。
例えば、運命の出会いとかで結婚の仲に入り込んだり、また運命の再会とかで再び予期せぬ形で出会うとかもある。戦恋メモリアルはそう言った、偶然などの人の運命を担当している。簡単に言えば、人の人生を操作していると言って差し支えない。最もそこまで厳密には運命を操作する事は出来ずに、あくまでもそう言った可能性を作り出すと言うのが運命の神様の仕事な訳だ。
そこには当然、恋愛関係などの運命や友情、勝利などの運命もある。しかし、死と言う運命もある。
戦恋メモリアルは時々、そう言った死の運命を決めなければならない。それがこの
「魔物を配置する、って事だ」
強い魔物を配置する事によって、その近くの者達の死の可能性、死の運命を上げる。それ故に運命の神様が担当するのだが、この仕事は戦恋メモリアルは好きではない。
戦恋メモリアルは、人の愛や恋と言ったラブ関係の仕事を好むが、死などのマイナス的な関係の仕事を好まない。よって、こうして端末の神様である豆羽エゴが代わりにやる事になっているのである。
「今回担当する場所はっと……おぉ、魔王転生者達が居る異世界もいくつか混ざってるね」
豆羽エゴはしめしめ、とほくそ笑む。
「普通の異世界には多少強いくらいの魔物を配置すれば、死の可能性が上がるだろうけれども、魔王転生者達が居る異世界に多少強いくらいの魔物を送ったところで死ぬ可能性は上がらない。そう、例えばあまりに危険すぎて警戒、隔離するくらいの魔物を送り込まないといけないかな」
豆羽エゴは先程仕分けた大量の危険指定モンスターの資料の束を見つめながら、不気味にほくそ笑んでいた。