龍斗製ゴーレム
ゴーレム。
ゴーレムの定義としては、ユダヤ教の伝承に登場する自分で動く泥人形。とは言っても、神話や伝説には石や金属で作られたものも登場する。
作った主人の命令だけを忠実に実行する召し使いかロボットのような存在。運用上の厳格な制約が数多くあり、それを守らないと狂暴化するとされている。
フィクションや創作だと、大きな体で力が強く、感情や意思を持たないか乏しい存在だとされている。邪悪な存在というよりは、財宝や重要アイテムなど守る、云わば障害物や強力な人型兵器(兵士)の様な扱いをされる事が多い。また、作られた素材により、弱点や強さが異なる場合もある。『命令に忠実に動くのみの人造物』という点から、魔法などを動力としたロボットをゴーレムと名付けるのも見られる。
そして、この世界だとゴーレムの定義は以下の3つである。
『1.魔道コアと言う魔力を帯びた核が中心とされており、この核を壊されると死んでしまう。
2.基本的に命令された指示に忠実に従う。
3.上級のゴーレムを作る際には魔力を込めた強さによって変わってくる。また、元とする素材によって弱点や長所が変わって来る』
この3つがゴーレムの条件らしい。つまりは別に無駄に硬い、重厚そうな身体のデザインにしてしまう事はないのである。と言う訳で、僕はこの魔王城における問題点を何とかしようと思ったのだ。
この魔王城、一応僕達魔王候補を守るために、いや前の魔王様との約束を守るためにが正しいのかも知れないが、この魔王城には何名かの兵隊やメイド、それからその者達が操る魔物も居るけれども、圧倒的に数が足りていない。どうやら前の勇者たちの一行が多くの兵隊やメイド、それから魔物達が減らされてしまったらしい。兵隊や魔物はともかく、メイド達まで倒されたのはどうやら魔族であると言う理由かららしい。そのせいでメイドが足りなくなって、今ではこのだだっ広い魔王城を掃除するのは大変らしい。また、兵隊も沢山倒されてしまったために魔王城の兵士の数も足りないらしい。
魔王候補がお披露目した時に一杯人が居たけれども、あれは特別に魔王候補が居るからと言う理由で集められるからと言う理由で、集められただけであり、通常状態はあんなに人は居ないらしい。
「と言う訳で、お前達が作られた訳だ」
『はい! ご主人様!』
今見ているのは、結構壮観な景色だ。僕の眼の前には可愛らしい人形達がこちらを見てそう言っていた。ゴーレム達、とは言っても僕が作ったのは小さな人形のような姿をしたゴーレム達だ。身長は約80cmくらいと小柄で、男性型と女性型の2つを作って置いた。男性型は騎士の姿をした小さな人形の姿で、女性型はメイド服を着た人形だが、どちらも子供っぽくて可愛らしい。そして騎士の姿をした方は敬礼しており、メイド服を着た方は頭を下げている。そんな可愛らしい姿のゴーレム達、数にして40体が勢ぞろいしていると、小さな身体でも若干狭く感じてしまう。
「お前達はゴーレム。お前達を作ったのは誰だ?」
『石動龍斗様です!』
「お前達には鉄の身体、そして雷の魔力を込めておいた。故に君達は自身の魔力を使って宙を飛ぶ事が可能だ。その機能を使えばその身体でも十分に戦えるし、お役にたてる」
『はい! その通りです!』
「と言う訳で、騎士タイプの男性型は魔王城の兵隊達の所に行って入隊を、そしてメイドタイプの女性型は魔王城のメイドさん達の所に行ってお手伝いをして貰って来い! では解散!」
『サー! イエッサー!』
そう言って、わー! と我先にと仕事に向かって行った。
「まるで軍隊のようでしたね、龍斗様。私、上官と呼ばれましたよ」
と、サファイアが皮肉交じりにそう言って来る。
「僕は軍隊のトップ、将軍だとさ。まぁ、そう言った形になってしまったのだから仕方ないよ。あいつらにはこの魔王城で頑張って貰って、この魔王城をもう少し良い物に出来ればと思っただけさ」
「まぁ、あの娘達がそれぞれ頑張れば、今の魔王城も変わるんじゃないんですか? 空前の萌えブームとかで」
「今のような、魔王候補を決めるぎすぎすした環境じゃなきゃ何だって良い。そんなブームが来たってさ。とりあえず、弓葉を呼んで来てくれ、サファイア。あいつにも何か作ってあげる約束をしたからさ」
「はい、お任せを」
数日後。
魔王城のメンバーに現れた新たなゴーレム部隊たちは、男性型はその身体の硬さと空中を飛ぶ能力で戦力増強につながり、また女性型は素直に言う事を聞いて良く働く良い娘達と褒められた。
ちなみに弓葉には、女性型を数体作るよう頼まれるのであった。