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第04話『進也の過去と里美の決意』12/10修正

「あ、あの……上野くん……」


「帰って!! 松下さんなんか、もう見たくない!!」


「分か、りました……。上野くん……気をつけて……帰って、きてくださいね……」


 奏時市の南区。里美は買い物帰り、バッファロー・ノーフェッドとの戦う進也の邪魔をしてしまった。しかし、全て里美が悪い訳ではないはずだが、それを全く気付かない進也は一方的に怒るばっかりである。落ち込む里美は、バッファローに踏み潰されて、大好物であるシュークリームなどの中身が滅茶苦茶になった白い鞄を拾って俯きながら離れていく。その時、進也を気遣う里美の瞳が悲しみで潤んでいることに、怒っている進也は最後まで気付くことはなかった。





「ふう……フュージョナーとやら、余計な邪魔を……っ、誰だ?」


「調子はどう、バッファローくん? さっきのサービスも便利だったかな?」


 先ほどまでフュージョナーと戦闘していた場所から少し離れた場所──南区の閉鎖されている工場で、赤褐色の肉体に強靭な太い腕やハンマーを持っている怪物バッファロー・ノーフェッドが床に置いてある鉄骨に座って休んでいる。

 そこに、全身にプレートが刺さっている藍色の怪物キー・ノーフェッドが歩いて現れた。目の前のバッファローとは違い、進也が変化したフュージョナーに近い姿や使用するGFウォッチに似た腕時計を左手首に着けてある。右手には人間の身体にGSチップを埋め込むなど様々なことが出来る鍵型の銃を持っている。


「あなたですか。さっきの味方を用意してくれたのは。いやいや、危なかったよ」


「ふふふ、ちょうど新しい量産型ノーフェッドの試験も行いたかったしね。それにしても、覚醒まで後少しだね」


「ええ。この小文字が大文字になった時、あなたのようなパワーが得られる。……あの渡辺を潰せると考えるだけで、俺の筋肉が疼くぜ」


 バッファローは現れたのが、自分に人間を越えた力を与えてくれた知り合いだと気付いて安心する。赤褐色の輝きを放ち、バッファローから人間の姿に変化した。細身の身体で眼鏡をかけた男──高橋は風車運送の親方である渡辺の知り合いであった。高橋の右手に持っているGSチップは、アルファベットの小文字『b』が表面に描かれている。キーが力を求めていた高橋に、GSチップを渡したのである。


「そういうこと。ボクはバッファローくんには期待しているよ。きみの身体に宿るガイアパワーを増やそうか?」


「今は大丈夫だ、自力で回復するさ。俺は風車運送さえ潰せば良いからな。じゃあな、今度はフュージョナーとやらを倒してみせる」


「バイバイ♪」


 キーは量産型ノーフェッドであるジャンク・トルーパーたちの試験が上手く行ったことに機嫌が良い。鍵型の銃を向けて、高橋にガイアパワーを増やすことを聞いてみるたが、高橋は自身の力を過信して断る。鍵型の銃を下ろして、高橋が去って行くのを見送った。


「ボクが出来ることは、ここまでかな。さぁて、ライトニングくんに報告しなくちゃ」


『チェックアウト』


 キー・ノーフェッドはエターナルが使用するGFウォッチに似た腕時計からGSチップを抜き取った。無機質な電子音声が鳴り響き、藍色の光が落ち着くと、そこには可愛らしいメイド服を着た銀髪おかっぱ少女が現れる。

 フリルの付いた白いカチューシャを銀髪に着けて、襟元は藍色の大きな蝶ネクタイ。袖はノースリーブで、釣り鐘型に膨らんだ膝状のスカートに、足を細く見せる黒いニーソックスを履いている。星の無い夜空のような黒いワンピースの上に、頭飾りのカチューシャと同じようにフリルの付いた純白のエプロンを組み合わせたエプロンドレス。胸元を押し上げて女性特有の膨らみがある彼女こそが、藍色の怪物キー・ノーフェッドの正体である鍵条姫乃(けんじょう ひめの)だ。

 まつ毛にマスカラを付けている姫乃は鍵型の銃を手のひらサイズまで小型化させて、GSチップを苦労しながらも楽しんで作成している同僚を思い浮かべながら工場から去って行った。





「もしもし、親父?」


『進也、複数のガイアパワーを感知したのだが無事か』


「何とかね。だけど、松下さんのせいで逃げられた。今から銀川さんと合流するところ」


 一方的に里美に対して怒ってから、ようやく落ち着きを取り戻した進也。ズボンのポケットから携帯電話の着信音が鳴り響き、通話ボタンを押して父親である秀樹からの電話に応じる。秀樹は特殊な携帯電器端末機で、奏時市で反応を示すガイアパワーを観察しており、進也たちが出かけた南区で感知したために連絡してきたのだ。進也が簡単に事情を説明するなかで、秀樹は里美について気になった。


『……そうか。松下ちゃんは大丈夫か?』


「知らないよ。ノーフェッドとの戦闘で邪魔になったから、もう見たくないよ」


『………………』


 秀樹は筋肉な鉄郎ならともかく、戦いという非日常から何の関係もない平和な日常を暮らす女の子である里美を心配した。ところが、進也の返答は秀樹の予想を上回る最悪であった。流石の秀樹も何も感じていない進也の答えに沈黙した。


「親父?」


『……進也、キューを迎えに行かせるから今すぐに帰ってこい。銀川さんには松下ちゃんを拾ってもらえるように、俺が事情を連絡しておく。…………………帰ってこないと、フュージョナーの変化能力を消去する』


「ええっ!! 何だよ、それ!! 分かったから戻るよ……っ!!」


 電話越しに父親が黙ってしまったことに首を傾げる進也。そんな進也に秀樹は、自分たち親がGSチップという武器に子どもを巻き込んでしまったことを悔やんでいる。とはいえ、ここまで息子が歪んでしまったことに悲しみを隠せない。ここに母親の早苗がいれば、自分と同じように怒っていると考える。

 そんな親の想いを知らない進也は、何故か怒っている秀樹に戸惑っている。自分が戦う力を失ったら復讐できない。母親を消した『漆黒の怪物』を倒すことが出来なくなる。そんなことを考える進也は、キューが飛んでくるまで焦っているのであった。





「着いたぜ、里美」


「銀川さん、ありがとうございます……」


 里美は先に鉄郎と共に、西区の風花荘へ帰宅していた。進也に怒られて、とぼとぼ俯きながら歩いていたところ、秀樹から連絡を受けてトラックを運転していた鉄郎に拾われた。西区に帰る時や、鉄郎にお礼を言う時も声の元気が無かった。事情の知らない鉄郎は心配するばかりである。


「どうしたの。里美ちゃんが元気ないのは珍しいわ」


「赤松さん……」


 風花荘の2階から里美に声をかけたのは、赤いメッシュを着けてある黒髪を肩まで伸びている女性──赤松紗季(あかまつ さき)だ。22歳の彼女は女性雑誌ウィンドでモデルの仕事をしており、里美より大きな女性特有の膨らみ、へそを見せるラフな服から分かるくびれ、太ももを大胆に見せるデニムパンツから下は程よく引き締まった長い足。普通の男性よりは男前な度胸を持っている頼れる姉貴分である。


「オウッ、赤松。俺も聞こうと考えていたところだ、一緒に手伝うぜ!!」


「相変わらず、うるさいわね。女同士でしか分からないこともあるのよ。私に任せて向こうに行って」


「わーったよ、任せたぞ!!」


 鉄郎は里美と一緒に、脇にある階段で2階に登ってきた。手伝おうとする鉄郎をよそに、紗季は問題ないと告げる。鉄郎は紗季を信用して自身の部屋201号室に入って行った。ようやく静かになったところで、201号室の隣である紗季の部屋202号室に、里美はおそるおそる入った。


「お邪魔します……」


「まずは、その涙を拭かなきゃ。かわいい顔が台無しよ」


「へっ? ありがとうございます……」


 里美は紗季から水色のハンカチを貰って洗面所に行き、顔を洗ってから涙を拭く。いつの間にか自分でも気付かないまま泣いていたようだ。その間に、紗季は居間に赤い座布団を用意して座っている。やがて、洗い終えた里美が同じように赤い座布団に座りこんだ。


「何があったの?」


「お隣に引っ越してきた男の子の邪魔をしてしまって怒られました……」


「確か……、上野だっけ。まだ見たことないけど、徹子おばあちゃんからは好印象らしいわね」


 紗季は優しい声で里美に質問する。里美が奏時高校に入学する時からの知り合いである紗季だったが、こんなに落ち込んでいる姿は初めて見た。小さな声で話す里美の話を聞いていると、最近引っ越して来たばかりの少年が原因のようだ。しかし、紗季が尊敬する里美の祖母である徹子からの評判は良好であるため、この矛盾に首を傾げる。


「とっても良い人です。だけど、ある事には怖くなります……」


「ある事って?」


「ごめんなさい、言えないです」


 里美は紗季が語る進也の評判は否定しない。何度も助けてもらった進也の行動を信じたいのだ。しかし、ノーフェッドのことは周りに危険が及ぶために話せない。素直な里美が隠すことだから、余程の事だろうと考えた紗季は、大人の女性として意見を述べ始めた。


「でも、里美ちゃんはその少年の邪魔をしたくて邪魔したわけでは無いよね?」


「はい、もちろんです」


「だったら、大丈夫よ。徹子おばあちゃんや里美ちゃんが認める少年なら、ちゃんと話し合ったら許してくれるわよ。もし駄目だったら、私が相手になるわ」


 紗季は里美に確認した後、問題ないと告げる。もしも、里美がワザと進也の邪魔をしたならば話は違う方向に進んだかもしれない。そのようなことは、あり得ないと分かっていたが、念のために聞いておいた。自分が言えることは、進也と話し合うことを提案することだ。拒否するならば、キックボクシングで鍛えた足技で蹴り飛ばす。紗季は気付いていないが、鉄郎と同じ思考であった。


「ありがとうございます、赤松さん」


「良いのよ。そんな問題、あの変なオッサンが巻き起こす問題より、遥かにマシよ」


「ふふっ……」


 紗季は風花荘に居るオカマを想像してしまった。いつもいつも何らかのトラブルを引き起こす台風のような存在に、テーブルに左肘を立てながら左頬に手を当ててため息をする。そんな紗季の様子に否定出来ない里美も失笑するが、ようやく笑顔が戻りつつあるのであった。





「はぁっ…」


「キュ〜〜イ?」


「何でもないよ、キュー」


 里美が紗季の話し合っている頃、進也が風花荘に帰ってきた。西区の風花荘から相棒キューが電気バイク『エターナライザー』と合体した不死鳥の姿で飛んできて、帰る時はキューを隣に飛行させて南区からバイクを運転した。久々に長く飛び続けた機嫌の良いキューとは対して、進也は秀樹が何故怒っていたのか分からなず、ため息をしている。


「ただいまーー」


「進也」


「何、親父? 帰って来たからフュージョナーの変化を消すって話は無しだよね」


「そんなことは、どうでもいい。里美ちゃんに怒ったらしいな」


 進也はバイクを停めて101号室にキューと一緒に入る。居間には車椅子に乗ったまま、こちらに目を向けないで太陽の光が入ってくる窓を見ている秀樹がいた。あぐらをかいて座る進也は、秀樹が言っていたフュージョナー変化消去の解決条件である帰宅をしたため、のんびりと気楽にしている。反省の色を見せない息子に、秀樹はようやく振り向いた。


「だって、松下さんのせいでノーフェッドを逃がしちゃったし。怒るのは当然だよ」


「バカもん」


「痛い!!」


 秀樹は、あぐらをかいている進也の黒髪の頭に拳骨を落とした。車椅子のため、普段は頭に届かないが今回は座っていたため成功した。自分が正しいと語っていた進也は父親の奇襲攻撃に反応できず、頭を抱えて痛がっている。


「全く。ノーフェッド関係になると、周りが見えなくなるのは、お前の悪いところだぞ。あんなに怒ることは無いだろう」


「だって、邪魔だったし……痛い!!」


 1人の親として自慢な息子の唯一の欠点と言えるノーフェッドに対する復讐心。秀樹は言い訳をする進也に再び拳骨。同じところを叩かれたため、先ほどより痛くて進也は涙目になりつつある。


「松下ちゃんは一般人、パニックになるのは当然だ。進也、ちゃんと謝るんだぞ」


「はいはい」


「はいは、1回!!」


「いってええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」


 秀樹は女の子を悲しませたら駄目だということを説教するが、ノーフェッドに関しては適当に返事する息子に、本日1番の拳骨をガンッと叩きこんだ。同じところを叩き続けられた進也は、あまりの痛さに思わず涙目になった。たんこぶが出来ているかもと感じる。


「いい機会だから言っておく。覚えておけ、お前に与えた力は早苗を消した漆黒の怪物を倒すためだけに与えたわけではない。様々な人間を利用するノーフェッドの増加を防ぎ、平和な日常を暮らす人々を守るために、お前を信じて与えたのだ。お前と同じような境遇の人間を生み出さないために……!!」


「親父……」


「それがフュージョナーだ。人々に恐怖を与えるノーフェッドではない。早苗が作成したGSチップ、俺が開発したGFウォッチ、そして……お前自身が生み出したエクストラチップ『エターナル』も、奴ら以外の人間を傷つけるための武器ではない」


「うん……」


 進也は、たんこぶが出来ていると思われるぐらい痛がっていたが、秀樹の真剣な言葉に黙って聞く。1年前、進也が漆黒の怪物に出会って母親が消えた日『ロストタイム』を思い出していた。そして、自分と同じ体験をする人間が現れるのではないかと考えると、怒りより恐怖が身体中を冷たくしていく。悲痛な表情をする秀樹がさらに話す。恐怖を与えるノーフェッドは、自分と同じように変化するフュージョナーではない。進也も両親が作成した武器は、平和に利用するためだと分かっている。本当に悪い奴は、両親の技術を悪用した漆黒の怪物だ。悪用されて、1番悲しんでいるのは両親である。エターナルのGSチップは、そんな進也の感情が実体化した武器である。


「俺が親として言えるのは、ここまでだ。これからは自分で考えていけ。人間関係は社会人として必要なことだ」


「分かったよ……親父……自分で考えてみる……」


「キュイ!!」


「あはは、キューも一緒だよね。ありがとう」


 秀樹は最後に自分を頼らないことを進也に述べる。今までは自分と二人三脚で生きてきたが、これからは風花荘で生活していくため、周りの人間を頼って欲しいのだ。特に同世代の里美とは仲良くなって、一緒に生きていく未来を見たいのだ。親ばかであるが、子どもの幸せを祈るのは全ての親に共通すると考えている。そんな父親の言葉を聞いた進也は、先ほどまでの適当さは無くなって自分がどうするかを考え始めた。今まで翔ばずに座って空気を読んでいた不死鳥キューも、まるで自分も一緒に考えると言っているように声をあげる。進也は、そんな気遣うキューに感謝する。


「おやすみ、親父」


「おやすみ、進也」


 やがて、上野家は夕食やお風呂を終える。部屋を暗くして就寝するが、進也は布団に寝転がって抱き枕を用意して今日のことを思い出す。バッファロー・ノーフェッドの戦いより、里美に怒ったことが気になっていた。あの時、里美がどんな気持ちだったのかと考えるが、1人では結論を出せなかった。いつの間にか、抱き枕を抱きしめながら寝てしまい、奏時市の夜は更けていった。





「朝は眠気があって事故を起こしやすい。お前ら、気合い入れろよ!!」


「「「イエッサーーー!!」」」


「風車運送、出動だぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!」


「「「ウオオオオオオオオオオオォォォォォォーーーーーッ!!」」」


 午前9時。奏時市南区、風車運送の支社では渡辺親方による朝の挨拶が行われていた。支社の裏側にある倉庫で、今日も出かけるたくさんのトラックを並べて従業員たちが聞いている。渡辺親方の熱い注意に、従業員たちも熱く応えるのであった。風車運送の熱気が高まっているところに、そこに眼鏡をかけて細身の身体に黒スーツを着た高橋が現れた。


「久しぶりだな、渡辺。相変わらず、うるさい会社だ」


「お前、高橋か? ここを勝手に辞めて、ライバル社に行った奴が何の用だ!!」


 渡辺親方と高橋の話し声は周りの従業員たちにも聞こえていた。後輩らしき男が「アイツ、誰ですか?」「高橋という親方を裏切った奴だ」「ライバル社!? 許せない……」「出ていけ、高橋!!」「そうだ、そうだ!!」などと、先輩たちと話している聞こえてくる。高橋はそんな罵声を聞いた上で、全員に聞こえる声で話し始めた。


「一言だけ言いに来た。今日から風車運送は無くなるらしいな」


「あぁん!? そんな話、聞いてねえぞ」


「当たり前だ。俺が今から潰すからな……、ノーフェッド」


「うわっ!!」


 渡辺親方は高橋が語る風車運送の話について信じなかった。高橋に文句を言おうと迫った瞬間、高橋の身体が赤褐色に輝いた。渡辺親方は思わず眼を閉じる。やがて光が収まり、眼を開いてみると目の前には高橋だったのが、牛の怪物の姿に変化していた。


「エクストラチップになったバッファローの力、試してやる!!」


「化け物だぁぁぁぁぁぁ!!」


「ブオオオォォォッ!!」


 高橋のGSチップは小文字『b』から大文字『B』へ覚醒しており、エクストラチップに変化したのだ。従業員たちは、人間が怪物に変化したことがパニックに陥る。その怪物──バッファロー・ノーフェッドは、風車運送のトラックを持ち上げて、並べてあったトラックに投げ飛ばした。トラック同士が当たる大きな金属音が鳴り響き、ドミノ式に倒れて窓ガラスが次々に割れる。やがて、トラックからこぼれたガソリンが次第に流れて発火してしまい爆発が起こり、風車運送支社の人々はますますパニックになった。





「(おれが……したいこと……)」


「進也くん、お客様じゃ」


「誰ですか?」


 進也は昨日、秀樹から言われたことを昨夜から、ずっと考えている。風花荘の裏庭で座り込み、目の前の花壇を見ながらである。色んな種類の花たちは答えをくれないと分かっていて何となくだった。すると、裏庭に出てきた徹子が進也を呼び掛けてきた。客など何も知らない進也は、とりあえず聞いてみた。


「上野!!」


「げっ、中居さん」


 中居退牙が風花荘にやって来た。銀色の自転車を押しており、交番の警察官である無線や帽子を身につけている。進也は熱血漢な退牙が苦手で、現在も思わず困った表情をしたくらいだ。退牙は特にノーフェッドと戦えるフュージョナーのことに興味があるらしく、たまたま巡回していたところで進也と出会うと追いかけようとするくらいである。


「退牙で良い、ぼくも進也って呼ぶから。そんなことより、いま風車運送が襲われているらしいから、呼びに来た!!」


「またですか!? って勝手に名前を呼ばれた……」


「ぼくに進也のような力があれば、一瞬で解決できるのに!! こんな事件は許されない。ぼくに宿る正義が爆発しそうだよ!!」


「はいはい、勝手に爆発してください。退牙のテンションは銀川さん以上だよ……。そのテンション、おれと永遠に合わない気がする。とにかく、行ってくる!!」


 退牙は進也の迷惑そうな表情をしていることに全く気付かすに、風車運送が襲われていることを言い出した。進也は話を聞いた途端、昨日トラックを襲ってきた赤褐色の怪物バッファロー・ノーフェッドだと感じ取った。退牙は握りこぶしを両手に作って、背後には炎が見えるのではないかと言うぐらい熱く燃えている。鉄郎より暑苦しい退牙を見ながら進也は、名前の件はともかく今すぐに出発しようと考える。

 進也と退牙。名前の通り正反対な2人。価値観が違うことや戦いの動機が復讐と正義である。


「ぼくは先に先輩たちと行くぜ!! あばよっ!!」


「本当に呼びに来ただけなんだ……」


「良くも悪くも真っ直ぐじゃったのぅ」


 退牙は銀色の自転車に乗り込んで、ペダルを全力で回しながら風花荘から去った。進也は退牙が来た理由がそれだけだったので、思わず小さく呟いた。徹子も進也と同じように真っ直ぐ過ぎると感じるのであった。





「上野さん、今いいですか?」


「ああ」


「上野くんについて、教えてほしいことがあります」


「…………何でも言ってくれ」


 里美は秀樹の元に来ている。進也が退牙と一緒に出ていった隙に101号室へ入ったのだ。昨日、紗季と話しあった里美は自分が進也について何も知らないことに気がつく。しかし、進也に聞こうとした矢先、退牙からノーフェッド事件が起こったのを聞こえてきたため、進也の父親である秀樹に聞くことを思い付いた。里美の意図を感じ取った秀樹は、一瞬だけ黙ったものの里美の真剣な表情を見て答えることにした。


「上野くんは……どうしてノーフェッドに対して、感情を爆発するのですか……?」


「松下ちゃんなら全て話そう。1年前、進也は母親をノーフェッドに消されたからだ。俺たちは忘れないために、その日を『ロストタイム』と名付けた」


「そんな……」


 里美は一番の疑問を聞いてみた。普段一緒にいる進也は、綺麗にしている黒髪など細かいところも褒めてくれる優しい男の子である。そんな進也が感情を露にして戦っているのは信じられなかった。その答えは、秀樹が語っていく上で里美は理解していく。進也が味わった出来事は、里美が想像しているより遥かに残酷であった。


「進也はそれ以来ノーフェッド自体を嫌っている」


「ちょっとしか一緒にいませんでしたけど、似合わないです……」


「分かってる」


「……っ」


 里美は進也がノーフェッドのことを考えている姿は似合わないと、はっきり言った。普段の優しい性格と正反対過ぎるのだ。まるで無理やり戦っているように見える。秀樹は里美の言っていることは正しいと言い、里美は分かっている秀樹に驚いた。


「今は復讐する意志をエネルギーにして戦っているが、いつか必ず進也の人格は……破壊されていく」


「上野さん、何で……!!」


「俺も止めた…。だが、母親を失い進也が生きる希望を無くした……あの日……、光を失った姿を見ていられなかった。その後、俺は……進也の生きる最悪の希望を作った……それが、あの……悪魔の復讐装備フュージョナーだ」


「うえの…、くん…」


 秀樹が話す内容は平和な日常を暮らす里美には恐ろしかった。秀樹が作ったフュージョナーは進也の生きる希望。しかし、その希望は真っ黒に歪んでいる。里美は泣くことしか出来なかった。目の前で自分の両親が一方的に居なくなると考えるだけで悲しくなる。


「すまないな……。なるべく関わらないようにと言いたいが、先日話した通り奏時市ではノーフェッドが現れ始めている。もう、進也は……いや、奏時市の人間たちは止まらないだろう」


「わたしが……上野くんに……出来ること……絶対……あるはずです!!」


「松下ちゃん……」


 人間を超える能力を秘めたチップ。GSチップを欲しい欲望は様々な人間たちに渡っていくはずだ、と考える。ノーフェッドが増えることは進也が戦う機会が増える。秀樹は、そんなイタチごっこに息子や街の人々を巻き込んだことを悔やんでいる。

 そんな秀樹を前に里美は宣言した。自分が進也に出来ることがあると思っているのだ。進也の悲しみを受け止めて尚且つ救おうとしている里美の決意に、秀樹は本気で進也と引っ付いて欲しいと父親として願うのであった。





「進也、風車運送を救いに行くぞ!!」


「はい!!」


 進也はトラックに乗り込んで、鉄郎と一緒に風花荘から出発した。鉄郎も退牙の話を聞いていたのか、進也が電気バイクを出そうとした矢先、トラックを出してきたのだ。鉄郎は風車運送へ短時間での道のりを知っているため、進也は有り難く乗ったのだ。


「ほれ、弁当だ。どうせ戦うのだろうから、パワーを付けるために移動中に食べておけ」


「ありがとう、銀川さん」


 鉄郎が渡してきた弁当を開ける進也。塩おむすび、だし巻き卵、タコさんウインナー、唐揚げ、ブロッコリー。見栄えが良くて綺麗である。進也はいつの間に鉄郎が用意したのか分からなかったが、とりあえず食べることにした。


「いただきます」


 鉄郎がハンドルを握って運転しているなか、進也はきちんと手を合わせてから割り箸で、だし巻き卵を取った。見た目はふわふわそうで、口に入れてみた。


「おい、しい……」


「どうした、何で泣いているのか?」


「えっ……?」


 だし巻き卵を口に入れた瞬間、卵の味が口いっぱいに広かった。鉄郎から心配された進也は、いつの間にか眼から涙がこぼれ落ちて泣いていた。1年前、母親の早苗が作っていた味だった。あまりにも懐かしくて、泣いていることに自覚しなかったほどである。


「泣くほど旨かったのか。それは里美が作ったんだぞ」


「松下、さん…が……」


「毎日作っている。昨日も、お前に食べてもらえるように昼間から作ってくれていたんだぞ」


「あっ……」


 鉄郎の話を聞いた進也は、ようやく気がついた。バッファロー・ノーフェッドと戦っていた時、里美が逃げなかったのは買ってきたシュークリームより、お弁当を持っていたからである。進也のために用意していた弁当を危険と分かっていながら、何としてでも捕りたかったのだ。しかし、進也は何も聞かないまま怒ってしまった。


「ちゃんと謝ってお礼しとけよ」


「松下さん……ごめ、んな、さい……」


 進也は泣きながら、どんどん食べていく。どの食材も懐かしく美味しいので完食する。鉄郎は里美の問題を知っていたので、進也の頭を左手でガシガシ撫でる。里美に会って謝りたい、という想いが溢れる。弁当箱は綺麗に空っぽになるのであった。





「何だ、こりゃ……っ!!」


「ひどい……!!」


「ハッハッハ、風車運送は終わりだーーーーーっ!!」


 退牙たち奏時警察が一足先にノーフェッドと対抗しているである風車運送支社に、進也と鉄郎は到着した。そこで眼にしたのは、たくさんのトラックと思われる車が、ひとつひとつ原形を失っており、地面にはガラスの破片が散らばって火災が発生している状況であった。人々は炎の中で逃げ場を無くして倒れている人もいる。進也と鉄郎が驚いているなか、一人楽しんでいる赤褐色の怪物バッファロー・ノーフェッドが居た。


「ノーフェッド、お前の悪事はぼくが許さない!!」


「あぁん? 何だお前」


「くらえ!!」


 退牙は進也たちより早く現場に来ていた。しかし、バッファロー・ノーフェッドの超人的な能力を前に奏時警察の先輩たちは倒れており、一人残った退牙は両手に拳銃を構えて戦っている。そんな退牙を嘲笑うかのようにバッファローはハンマーを肩に乗せて歩いてくる。普通の人間から逃げるが、退牙は持ち前の正義感を支えに怖がることなく、引き金を引いて銃弾を放った。


「効くか」


「ぐはっ!!」


「誰が許さないって。お巡りさんは交番で留守番してろ」


「退牙!!」


 退牙が放った銃弾はノーフェッドの肉体に当たりはしたが、何事も無かったようにバッファローはガイアパワーで膨れ上がった右拳を退牙の腹にくい込ませた。退牙はあり得ない衝撃が身体中に走り、口から血がこぼれ落ち地面に倒れ込んだ。バッファローが退牙を馬鹿にするなか、進也が駆けよって来た。


「退牙、しっかりしろ!!」


「へへっ……、お前が来るまでは守りきったぜ……」


「ありがとう……。行くぞ、バッファロー・ノーフェッド!!」


 進也が退牙の様子を見たら、ぼろぼろの警察服に曲げられた警棒らしきもの、拳銃の銃弾は全て使いきっている。それでも退牙の眼は希望を失っておらず、進也に期待を寄せていた。そんな退牙に一言お礼を言い、進也はアルファベット大文字『E』が表面に描かれたGSチップを右手に持って、左手首のGFウォッチを構える。


『レディ?』


「認証、エターナル!!」


『エクストラ・チップ チェックイン』


 GSチップをGFウォッチに差し込んだことで、進也の身体が変化していく。退牙の前では初めてである。白い身体に赤い両腕、黒いマントを背負って橙色の眼が発光して変化は終わった。進也はエターナル・フュージョナーに変化した。


「すげぇ……」


「バッファローにはアイアンだ」


『アイアン チェックイン』


 退牙がフュージョナーに見惚れるなか、エターナルはアルファベット大文字『I』が表面に描かれたGSチップをGFウォッチに差し込んだ。アイアンの能力で銀色に輝くエターナルの身体は、鉄のように硬くなった。


「せいっ!!」


「それがどうした」


「うわあぁぁぁぁ!?」


 エターナルはバッファローに向かって走り出し、渾身の力で銀色に輝く拳で殴った。しかし、前回のような手応えは全く無く、戸惑いを隠せないエターナルへ赤褐色に輝いたガイアパワーを纏ったハンマーを右腰に叩きつけた。エターナルは普通の人間である退牙とは違って倒れることは無かったが、足で地面に摩擦を起こしながらぶっ飛ばされた。


「フン」


「強くなってる……」


「当たり前だ、エクストラに進化したからな!!」


 バッファローはエターナルが力負けしたことに満足感を味わっている。アルファベットの小文字『b』が大文字『B』に変わるだけで、前回とは違い力も能力もパワーアップしていたのだ。エターナルはアイアンの能力を使用しつつも、不気味に変化した利用者の人格に不安を感じる。ガイアパワーは感情に反応する未知なるエネルギー、特にノーフェッドは負の感情を影響しやすいのである。長期戦は不利になると考えるエターナルであった。





「渡辺親方!!」


「鉄郎……すまないな、俺がしっかりしていれば……高橋の野郎が……ごふっ」


「あの高橋か!? 大丈夫。俺が、いや俺たちがあの裏切り者を片付ける!!」


 自慢のねじり鉢巻が緩んで、真っ白なTシャツが血まみれで真っ赤に染まっている渡辺親方。鉄郎が自分のTシャツを脱いで、渡辺の身体から流れる致命傷の辺りに巻き付け血止めをする。渡辺が悔やむなか、風車運送のライバル社の高橋がバッファロー・ノーフェッドに変化したことを知った鉄郎は、渡辺を地面に寝かして近くにあった鉄パイプを持ってノーフェッドに向かって突撃する。


「いいぃぃぃぃやあああああぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」


「銀川さん!?」


「ブオオオォォォォッ!?」


「ここはチームワークや信頼関係が合ってこその仕事だぁぁぁぁ!! お前なんかに潰される風車運送じゃねえぇぇぇぇぇぇーーーーっ!!」


「す、すごい……」


 ノーフェッド相手に上半身裸のまま生身の身体で戦う鉄郎。日々のトレーニングの成果と言える腕力を使用したパワーと凄まじき鬼気溢れる姿に、フュージョナーこと進也は思わず見とれてしまった。鉄パイプを軽々と使いこなし、豪快に振り回しながらも的確にノーフェッドの肉体に与えていき棒術は素人の眼から見ても素晴らしい。


「調子に、乗るなぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァーーーーっ!!」


「どわあああああぁぁぁぁっ!!」


「銀川さん!!」


「ただの人間風情が……人間を越えた存在ノーフェッドに勝てるわけがない……!!」


 赤褐色の肉体を持ったバッファローは鉄郎の怒涛の攻撃に耐えかね、ガイアパワーを身体から放出することで鉄郎をぶっ飛ばした。持っていた鉄パイプごと飛ばされた鉄郎は地面に叩きつけられた。自慢の肉体を痛めた鉄郎へ話すノーフェッドの言葉を聞いた進也はカチンときた。


「あなたは、ノーフェッドの力に頼っている!!」


「黙れ!!」


「引っ越してきたばっかりだけど、銀川さんのトレーニングの努力は本物だ!! おりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 エターナルは鉄郎に負けじと仮面の下で歯をくいしばって立ち上がり、ノーフェッドに向かって走り銀色に輝く拳を鳩尾に入れていく。鉄郎の努力を馬鹿にしたノーフェッドに怒りを感じて、アイアンの能力で強化した鉄パイプを両手で握りしめ思いっきりバッファローの頭上に振り下ろした。


「ブオオオォォォォ……!?」


「お前が人間を越えた存在ノーフェッドなら、おれはお前らノーフェッドを越えた存在フュージョナーだ!!」


「戯れ、言を……」


「このエターナルは人間の身体を変化させるだけじゃない。ノーフェッドであるお前には、フュージョナーとして真のエターナルを見せてやる。はぁっ!!」


 頭上に鉄パイプを叩きつけられたバッファローは脳の痛みを感じて思考が混乱している。エターナルはノーフェッドに対する言葉を利用して、フュージョナーとして更なる能力を見せ始める。


「ブォォォッ!?」


「さあ、お前に罰を与えよう」


『ダガー アイアン  フェニックス チェックイン』


「はあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


『オーバーライド』


 バッファローが驚いているなか、エターナルは決め台詞を宣言する。自身が持っている全てのエクストラチップをGFウォッチに差し込み、GFウォッチの赤いボタンを押した。エターナルが感情を高めるために叫ぶなか、無機質の電子音声が鳴り響き純白のガイアパワーに、3枚のエクストラチップのガイアパワーが右足に貯まっていく。


「ブラスター強化スマッシュ!!」


 エターナルは傷ついて倒れているバッファローに向かって走り出す。地面を蹴りあげて空中に飛び出し、自身とノーフェッドの間に現れたアルファベット大文字『D』『E』『I』『P』を順に通り抜けていく。


「せやあああぁぁぁっ!!」


「ブオオオォォッ…………」


 空中で強化されていった右足はパワーアップしたはずの赤褐色の強靭な肉体であるバッファローを見事に蹴り飛ばす。ノーフェッドは限界を越えて耐えきれ無くなって爆発した。


『エクストラ・チップ チェックアウト』


「反則だろ……エクス、トラチップは……1枚しか使用でき、ないって聞い、たぞ……」


「聞いた? 誰だ、それは!!」


「それは…………、誰だ? あれ、俺は……誰から貰った?」


「えっ?」


 GFウォッチからGSチップを外して人間に戻った進也。自分や目の前で起こったことが信じられない高橋は混乱していた。進也は高橋が意外にも重要な事を話しているため詰め寄った。しかし、高橋は前回の天野同様、GSチップを渡された人間に関する記憶を失っていた。翌日、渡辺親方が高橋を奏時警察に連行したが、失った記憶以外は全て自白した。そして、誰にも気付かれることもなく、背中にあった小さな鍵穴が消えるのであった。





「進也、ほれ」


「松下さん…、その……、怒ってごめんなさい……」


「上野くん……」


 ノーフェッドとの戦いが終わり風花荘に帰宅した進也は、鉄郎に背中を叩かれながらも真っ先に里美の部屋に行った。進也が現れたことに里美は戸惑っていたが、進也は俯いて何かを伝えようと話そうとしているため、黙って待つことにしたのだ。事情を知る紗季たちは少し離れて見守っているなか、進也は里美に頭を下げて謝罪した。


「お弁当、ごちそうさまでした……。すごく美味しかったです……。その、お詫びにシュークリーム買ったんだ……。こんなので許してもらえないと思うけど……」


「上野くん……わたしは大丈夫です。助けてもらって嬉しかったですよ。だから、一緒に食べましょう……っ!!」


「ありがとう、松下さん……」


 進也は空っぽになった弁当箱と里美が失ったシュークリームを里美に渡す。鉄郎から里美の大好物を聞いた進也は、只でさえ少ない小遣いを削って洋菓子店『クイーン』からシュークリームを買ってきたのだ。里美はシュークリームを買ってきてくれたことより、復讐しか考えていない進也が自分を気にしてくれたことに嬉しくなったのだ。里美の言葉に進也はようやく安心して肩を下ろす。


「お互いに謝ったことだし、仲直りね」


「良かったぜぇぇぇぇ!!」


 紗季と鉄郎は、家族同然の里美にトラブルを起こしたことに心配をした。しかし、何とか仲直りして意外とお似合いな進也と里美を見ている。そして、改めて新たに入ってきた進也を歓迎するのであった。


「徹子さん。ノーフェッドに関してはダメダメな奴ですが、根は優しい自慢の息子です。これからも、よろしくお願いします」


「ほっほっほ、かわいい孫に任せるのじゃ。里美も、こんなに積極的に男の子に関わろうとするのは、ワシが見てきたなかで初めてじゃからの。こちらこそ、よろしくお願いするのじゃ」


 お互いにシュークリームを食べている進也と里美を見ながら、表情をニヤつかせる秀樹と徹子。本人たちの知らないところで、親たちの本気すぎる話は進んでいくのである。


「上野くん、わたし1つ目標が出来ました」


「何?」


「秘密ですっ」


 大好物のシュークリームを食べながら里美は笑顔になっている。そんな進也は里美が何気なく言った話に興味津々である。


「えっーー、気になるよ」


「(わたしが上野くんの復讐心を何とかしてみせます……!!)」


 里美は戦うことが出来ない。これからも戦っていく進也に対して、自分が出来ることは進也の『心』を救うことだ、と気付いたのだ。進也がシュークリームのクリームで唇が真っ白になるなか、それを笑いながら胸元でギュッと両手を握って決意する里美であった。

非日常ヒロインであるキー・ノーフェッドこと姫乃ちゃん、やっと登場です!!


進ちゃんと里美ちゃんは仲直りして、風花荘メンバーも徐々に現れてきました。


次回は赤松さん編です。

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