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初心者への誘(いざな)い ドラマティックな数学の世界 ~数A~  作者: 伊吹 由
第1章 場合の数 ①集合 ②集合の要素の個数
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P8 自然数と整数は同じ個数だけある?

使用教科書 【第一学習社 数A】


教科書8ページに目を通した後に読んでいただけると、より楽しめます。

自然数の集合を、数学の世界ではよくNで表します。


  N={1,2,3,4,……}


今、正の偶数全体の集合をMとしましょう。


  M={2,4,6,8,……}


この場合、MはNの部分集合となりますので、集合論の記号では「M⊂N」と表現できます。


挿絵(By みてみん)


こんなイメージになりますよね。では……


集合Nの要素の個数と、集合Mの要素の個数。いったいどちらが多いのでしょうか?


どちらも無限個の要素を持つのですが「M⊂N」という関係があるのですから、そりゃぁ集合Nの方が要素は多いでしょう。


ところが!


これまた数学の世界では、集合NもMも要素は同じ個数だけある事になるのです(正確には同じ【濃度】と言います)。何故でしょう?


簡単に言うと


  Nにある要素全ては、Mにある要素全てと手をつなぐ事ができるから。


挿絵(By みてみん)


難しく言うと


  集合Nから集合Mへの全単射が存在するから


となります。難しい話はさておき……


Nに属している 1,2,3,4,…… を運動会で選手が1列に並ぶがごとく、並んでいるとしましょう。そしてMに属している 2,4,6,8,…… もその隣の列に並んだとしましょう。


せーので、集合Nの1は集合Mの2と、集合Nの2は集合Mの4と、集合Nの3は集合Mの6と……


という形で手を繋いでいきます。


挿絵(By みてみん)


すると2つの集合に属する要素は、全てもれなく相手の集合の要素と手を繋ぐ事が可能です。


Nに属する1億という数はMに属する2億と手を繋げますし、Mに属する1けいという数は、Nに属する5000兆という数と手を繋ぐ事が出来ます。


※ 1けいは1億の1億倍、1兆の1万倍の数。


もし、Nの要素の個数がMの要素の個数よりも多いというのであれば、Nの要素の中にMとは手を繋げない連中が出てくるはずです。しかしこの対応なら、Nに入っている連中は全員Mにいる誰かと手を繋げている。


すなわち、Nの要素の個数はMの要素の個数と同じという結論になるんですね。「M⊂N」であるのに、MとNには同じ数だけの要素がある。無限が絡むと人間の直感が狂う例の1つです。



……。



お次は整数の集合を考えてみましょう。整数の集合は数学ではよくZで表します。


  Z={ …… -3,-2,-1,0,1,2,3,…… }


自然数の集合Nに対し、今回は「N⊂Z」が成り立っています。


挿絵(By みてみん)


しかしこのZの要素も全てNの要素ともれなく手を繋ぐ事が出来るのです。


挿絵(By みてみん)


上の整数の集合Zに対し、下の自然数の集合Nの要素を


挿絵(By みてみん)


このように


挿絵(By みてみん)


自然数を


挿絵(By みてみん)


1,2,3,4…… と


挿絵(By みてみん)


対応させていけば


挿絵(By みてみん)


集合ZとNの要素は全て


挿絵(By みてみん)


手を結ぶ事が出来るんですね(NからZへの全単射が存在すると言います)。


例えば自然数の100は整数の50が対応しますし、整数の-100は自然数の201が対応します。より正確に言いますと


N→Zに対し、nをNの要素とします。


 n=1 ならば 0

 n が偶数なら n/2

 n が 1 以外の奇数なら -(n-1)/2


と対応させる事で、全ての自然数と整数は手を繋ぐ事が出来るのです。


結論。なんと


  自然数と整数は同じ個数だけある! (正しくは、自然数と整数は濃度が等しい)


という事になるのです。ん~、不思議ですね~。



今回はここまで!



【次回予告】


次は有理数と自然数の話。有理数というのは


挿絵(By みてみん)


この形で表される数の事です。


挿絵(By みてみん)


分母を1とすればこの形の数は整数となりますので、有理数の集合Qは整数の集合Zを含んでおります。Z⊂Qであるし、もちろんN⊂Qも言えます。


さて、自然数と有理数では、どちらが多いのでしょうか?


例えば0と1の間には整数としては0と1の2個。自然数にいたっては1のみの1個だけですよね。しかし有理数にいたっては、0と1の間に無限個あります。


挿絵(By みてみん)


このようにn分の1(1/n)の形の有理数を考えれば、それは0と1の間にある有理数だし、nをいくらでも取れますので、0と1の間に有理数は無限個あると言えます。


0と1の間に1個しかない自然数。かたや無限個ある有理数。圧倒的に有理数が多いような気がしますが……


その真相は次回!

【おまけ】


  部分であるにも関わらず、元の集合と要素の個数が同じである


この概念を採用することで、集合論では【無限】を定義する事が出来るんですね。


  集合Aにおいて

  その真部分集合とAの間に全単射が存在するならば集合Aは無限である


というように。


【無限】を定義するって、何だか哲学的ですね。笑

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