P70 ABC予想②
教科書のページ通りには進んでおりません。
さ。ABC予想についての話です。
まずは小学校の時に学んだ素因数分解を復習しましょう。
☆★
皆さんは【素数】をご存じですか? 数学の世界で【素数】は非常に重要な概念でして、リーマン予想だとかゴールドバッハ予想など、素数に関する未解決問題はたくさんあります。紀元前から多くの哲学者や数学者が素数に挑んで参りました。
正の約数を2つしか持たない自然数を【素数】と言います。教科書では
1より大きい自然数で、正の約数が1と自分自身しかないもの
と記されております。よく勘違いされるのですが、【1】は素数ではありません。
1より大きい自然数は、全て素数の積であらわす事が出来まして、これを素因数分解といいます。
例えば自然数【72】。これを素因数分解しようと思ったら
こういう計算したの、覚えてます? 小学校で学ぶ計算法です。結果
72をこのような形で素因数分解した事になります。
☆★
では、ABC予想の第1歩。
【定義1】
自然数aが
と素因数分解される時、自然数 r(a) を
で定義する。
まぁ、この定義は一般化して書かれてあるので難しそうですが、実際やってみると簡単です。
例えば先ほど出た72という数字は
と因数分解出来ましたので、素数につく小さな数字(指数といいます)を除いて
r(72) = 2・3 = 6
となります。
では、もう少し練習してみましょう。これが【ABC予想】を理解する第一歩ですので、皆さん、ついてきてくださいよ~。
問1 以下を計算しなさい
(1) r(60)
(2) r(126)
(3) r(210)
(4) r(1024)
この解答は【後書き】に載せます。是非、自分の手と頭を使って計算してみてください。こういう計算をした方が、【ABC予想とは何か?】がよりよくわかると思いますので。
☆★
さて、第2歩目……行きますよ。
まずは【互いに素】という言葉から。
2つの自然数 a,b に対して、1以外の公約数を持たない時
この2つの自然数を【互いに素】であるという
もっと平たくいえば【最大公約数が1である2つの数】が【互いに素】というわけですね。
例えば10と15は、公約数5を持つので【互いに素】ではありません。
27と41は、1以外の公約数がないので【互いに素】です。
【互いに素】。昔は教科書に載ってた言葉なんですが、最近の教科書では見かけなくなりました。なぜなんでしょう? 私もわかりません。笑
例えば背理法でルート2が無理数である事の証明では、この言葉使うとスッキリいくと思うんですけどね。
まぁ、それはさておき。話を【ABC予想】に戻します。
【互いに素】である2つの自然数 a,b を考えます。便宜上、a<b としましょう。ちなみに a=1 でも構いません。
この2つの自然数 a,b に対し、3つ目の自然数cを
c = a+b
として定めます。このように得られた3つの自然数の組(a,b,c)を
abc-triple
と呼びます。この【abc-triple】に出てくる3つの自然数の積 abc を考え、【定義1】で定義した r(abc) を計算します。そしてこの r(abc) と、自然数 c の大小関係を調べます。
ちょっと説明が長くなったので具体的な例を示してみましょう。
例えば a=2,b=3 の場合、c=2+3=5 となります。【abc-triple】は
(2,3,5)
ですね。では3つの自然数の積を求め、r(abc) を計算してみましょう。
abc = 2・3・5 = 30
ですが、abc を素因数分解したものは上記にある通り、そのまま 2・3・5 となりますので
r(abc) = 2・3・5 = 30
です。
r(abc)=30 c=5
なので、このケースでは
r(abc) > c
となります。この形、よく覚えておいてください。
では次の例。2つの互いに素な自然数として7と9を考えます。
a=7,b=9 であるとき c=7+9=16 になるので【abc-triple】は
(7,9,16)
です。
abc = 7・9・16 = (2の4乗)・(3の2乗)・7
よって
r(abc) = 2・3・7 = 42
となり、r(abc)=42 c=16 ですから、このケースでも
r(abc) > c
となります。
実はこの不等号の向きが変わるような【abc-triple】が存在します。その例を以下に挙げます。
a=32,b=49 であるとき(互いに素である事を確認してください)、c=32+49=81 となります。つまり【abc-triple】は
(32,49,81)
ですね。このとき
abc = 32・49・81 = (2の5乗)・(3の4乗)・(7の2乗)
となりますので
r(abc) = 2・3・7 = 42
r(abc)=42,c=81 ですから、このケースは
r(abc) < c
となる例の1つです。もう1つこの例を挙げてみましょう。
cが最も小さいパターンは、互いに素な2つの自然数1と8を考えた時です。
a=1,b=8 である時 c=1+8=9 となります。【abc-triple】は
(1,8,9)
ですね。3つの自然数の積は
abc = 1・8・9 = (2の3乗)・(3の2乗)
ですから
r(abc) = 2・3 = 6
r(abc)=6,c=9 ですから、このケースも
r(abc) < c
が成り立つ例ですね。
他にも色々 r(abc) と c の大小関係をチェックしていくとですね……
その多くは r(abc) > c となっており、r(abc) < c を満たす a,b,c の組合せ、つまり
r(abc) < c を満たす【abc-triple】
というのが、結構少ないのがわかるんです。
この r(abc) < c を満たす【abc-triple】を【abc-hit】と呼びます。
ではここで問題。
cが1桁となる【abc-hit】は、先ほど挙げた(1,8,9)だけです。たまに
(3,6,9)もあるじゃないか!
という人がいるんですが、a=3,b=6 の場合、aとbは【互いに素】の条件を満たしていない(最大公約数が3だから)のでダメなんです。これは【abc-hit】の例ではありません。
では皆さんに……
cが2桁となる【abc-hit】を見つけてもらいましょう。
私は今回、c=81 となる【abc-hit】
(32,49,81)
を挙げました。これ以外に1つでいいので【abc-hit】を探してください。もちろんありますから。
余裕のある人は2つ3つ…… いくつあるかまでチェックして頂きたい。
これに関しては、読んだ人に実際計算してもらいたいという事で…… 解答は載せません。
とにかく計算すればわかるんですよ。
あれ? なかなかないな~ おや? 何でないの?
みたいな感じになり、見つけられた時に
お! みっけた!!
となると思いますので。希少性があるので、見つけた時の喜びもひとしおかなと。
そんな喜びを味わって頂きたい。
とまぁ、今回はですね…… ざっと復習しますと
【素数】 【素因数分解】 【互いに素】
このあたりは、聞いた事ある人も多いかと思います。さらに
【abc-triple】 【abc-hit】
についてもお話しました。
今回はここで話を止めておきます。
次回でなんと! はやくも【abc予想】を紹介する事になりますので!
こうご期待!




