P36 人生の善き友 ~ BOOKS ~ ③
教科書36ページは章末問題。というわけで、こちらでも私が推薦する本の紹介をしたいと思います。
今回はこちら。
タイトル「Newton別冊 イオンと元素」増補改訂版
サブタイトル「化学の ”カラクリ ” がよくわかる」
出版社 ニュートンプレス
理系の生徒がセンター試験で受験する場合、理科は2科目受験となりますよね。その際もっとも選択される教科が「化学」なのをご存じでしょうか。理科2科目受験での多くのパターンは「物理と化学」「生物と化学」です(地学はマイノリティなんですよね、面白いんですけど)。
化学を選択している生徒にとって、この本はバイブルといってもいいのではないでしょうか。個人的に「化学を選択する生徒は、コレを読め!」と強く推薦したい本です。
例えばよく耳にする「イオン」という単語。みなさんは「イオンって何?」と聞かれた時、うまく答える事が出来ますか?
この本ではイオンを発見するに至った歴史的経緯やその正体、いろいろなイオンの紹介やその結合における安定性の話など、大きなイラストも交えて丁寧に解説してくれています。
電気を生み出す原理、さまざまなイオン化傾向、化学変化の話などなど。学生ならずとも読んでいて「なるほど」とうなずく内容が盛りだくさんです。
Q&Aコーナーもありまして
アルカリイオンとはなんぞや?
マイナスイオンとはなんぞや?
マイナスイオンって体にいい?
といった質問に、丁寧に解説を与えてくれます。ちなみに昔から言われていますが、マイナスイオンが本当に体にいいのかはまだわかってないのです。だから「マイナスイオン」をアピールした健康グッズの販売も、実は「科学的根拠は得られてない」という事で昔から疑問視されていたんですよね。
個人的にこれを読んで1つ解決した問題があります。私は仕事柄「インカム」とよばれるマイクを使用して話をする事が多いんです。いわゆる小さな片側ヘッドフォンタイプのマイクでして、よくその耳当ての接触している部分が痛くなるんですよ。実はコレ、金属アレルギーならぬ金属イオンアレルギー。
ニッケルやコバルト、クロムや白金といった金属は、皮膚から出る汗の成分と反応するのです。すると金属から電子が離れて「金属イオン」となって溶け出し、皮膚の中のタンパク質と結合します。アレルギー体質のある人は、この「金属イオンとタンパク質の結合」によってアレルギー症状が引き起こされるのです。
これを知ってから私は「しゃべらない時はインカムをはずす」事にしました。しゃべる時にだけ装着するのはめんどくさいですが、耳が痛くなるよりはマシですね。
ちなみに金や銀は汗や唾液などの体液の成分と反応しにくい金属で、アレルギーを起こしにくいという事がわかっています。だから歯の治療なんかにもよく使われるというわけなんですね。
余談ですが、パチンコ屋でたまに銀玉を耳の中にいれて耳栓代わりにする人がいますよね?
まぁ「いますよね?」と言われて「うん」と答える人は、実際パチンコ屋に行った事がおありでしょうが……笑
たまにその耳が痛くなる人がいるんですよ。実はこれも金属アレルギー。「え? 銀はアレルギーを起こしにくいのでは?」と思うでしょうが、パチンコの銀球の成分は銀ではありません。色が銀色なのであって、成分は鉄。そして球の周りをクロムでメッキしています。クロムは上に挙げたようにアレルギー反応を起こしやすい金属なので、それが原因で銀玉を耳に入れると痛くなる人がいるんですね。
ちなみにこの余談は本に載っていません。私が勝手に解説したものです。笑
ちょっと話がそれましたが、この本には炎色反応についての原理的な話やメンデレーエフの元素周期表ももちろんあります。化学の勉強にはもってこいですね。
もう1つ余談。
この本の初版が2011年5月。本の中に「現在、元素は112種類が確認されている」とあります。
この記事を書いているのが2012年10月なんですが、先月の9月、興味深いニュースが飛び込んできました。理化学研究所が113番目の新元素を発見し、その名前が「ジャポニウム」になる可能性が高いというニュースです。
実は以前より理研側はその新元素を見つけており、国際機関に承認を得ようと申請していたんです。ですが、DATA不足で承認されなかったんですね。このたび十分なDATAを得られたとの事で再申請し、新元素として認められるのは確実だろうと言われております。もしこれが承認されれば、初めての日本由来元素となるそうで、近い将来その新元素が教科書で見られるかもしれません。
☆★
この本の魅力を最後にもう1つ。
本の後半で「元素の誕生」という章が2つあります。そこではビッグバンやクォークの話などがわかりやすく書かれています。これらの話は「宇宙誕生論」「素粒子論」などの話につながるのですが、まぁ今年話題になったヒッグス粒子の話題にもつながるわけです。
科学雑誌を読むと、必ず目にするのがビッグバンやインフレーションなどの「宇宙誕生論」、それに関連した「素粒子論」。これらの入り口の方を丁寧に解説してくれているわけで、学生のみなさんのみならず、サイエンスに興味ある人、これから興味を持つかもしれない人にも是非読んで頂きたいですね。
☆★
とまぁ、つらつらとこの本の魅力について語ってみました。
・化学を学ぶ生徒は是非読んで欲しい!
・科学に興味ある人も読んで欲しい!
と叫んで、この記事を終えたいと思います。




