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P28 頭の体操「3回で出来る?」③

さて、前回


挿絵(By みてみん)


区別のつかない12個の球の中に1個だけ重さの違う球が混ざっており、天秤を3回使用する事で「どの球」が「重いのか軽いのか」を特定しなさい


という問題の解答をしました。


解答を見れば「確かにね」と思うでしょうが、大事なのは考え方。数学の授業って、ただ解答を授業してそのパターンを教える事も大事ですが、入試レベルとなると「どうしてそのように解くのか」を教える事も大事になります。


今回はこの問題を数学的に考えることによって、前回の解答手順を導いてみます。つまり、ただやみくもに天秤を使うのではなく、「数学的にこういう理由だから、このように天秤を使うのだ」という話をしてみます。なかなかね、そういう話をする人っていないから、文章だけでどこまで伝わるか不安ですけどね。笑



まず最初の段階で考えるべきは、天秤を3回使用すると「何通りのパターンが起こりうるか?」です。


1回の天秤使用で考えられる結果は


  左に傾く  釣り合う  右に傾く


の3通りあります。という事は、2回の天秤使用では


  (1回目3通り) × (2回目3通り) = 9通り  ①


そして天秤3回の使用だと


(1回目3通り) × (2回目3通り) × (3回目3通り) = 27通り  


の結果が得られます。


挿絵(By みてみん)


樹形図で考えるとこの通りです。そして「犯人は何通り考えられるか?」をチェックします。


挿絵(By みてみん)


12個の球だからといって「犯人は12通り」ではありません。1個の球につき「重いか軽いか」の2通りが考えられる事を考慮すると


挿絵(By みてみん)


  (容疑者12個) × (重いか軽いか2通り) = 24通り


24通りの犯人像が浮かび上がります。


3回の天秤使用で27通りの結果が得られ、その中で24通り考えられる犯人を特定すればいいので、


  27 > 24


より、これは出来る可能性があるわけです。まぁ実際出来るんですが、この段階においては「数学的には出来るかもしれない、出来ないかもしれない」という事になります。


では、実際天秤を使ってみましょう。


1回の天秤使用で、乗せる球のパターンは


  1個ずつ  2個ずつ  3個ずつ  4個ずつ  5個ずつ  6個ずつ


の6通りですが、解答では最初4個ずつ乗せました。それはなぜか?


例えば最初に5個ずつ乗せた場合を考えてみます。まぁ釣り合えば、残り2個から2回の天秤使用で特定できるのは明らかに可能です。しかし傾いた場合


挿絵(By みてみん)


5個の重い容疑者と、5個の軽い容疑者、合計10通りの犯人像が浮かび上がります。


残り2回の天秤使用では、①の計算で9通りしか異なる結果を得られません。残り9通りで10通り考えられる犯人を特定するのは不可能というわけです。


だから最初で天秤に5個ずつ球を乗せるというのはアウトなのです。同様の理由で6個ずつ乗せるのもアウトです。


では、最初に3個ずつ乗せた場合はどうか。このとき問題なのは釣り合った場合です。


挿絵(By みてみん)


釣り合った時、容疑者は6個。残り2回の天秤使用で9通り判別出来るから大丈夫かと思いきや


挿絵(By みてみん)


残り6個は「重いか軽いか」の判定が出来てないため、この時点では


  (容疑者6個) × (重いか軽いか2通り) = 12通り


犯人のパターンは12通りあるのです。残り2回の天秤使用では9通りしか判別出来ないので、これはアウトと数学的に導かれるのです。同様の理由で1個ずつ、2個ずつもアウトになります。


4個ずつ乗せた場合


挿絵(By みてみん)


釣り合えば容疑者は4個。それぞれ重いか軽いかの2通りありますから、犯人のパターンは8通り。


挿絵(By みてみん)


どちらかに傾いた場合、重い容疑者4個と軽い容疑者4個で、計8通りの犯人パターンが考えられるわけです。


だから4個ずつ乗せ、釣り合っても傾いても、犯人像は8通りにまでしぼれた事になり、残り2回の天秤使用では9通り判別できる事から、最初の天秤使用では「4個ずつ乗せる」が、犯人を捕らえるための唯一の手順(この段階では、まだ可能性がある)になるのです。


最初で釣り合った場合、


挿絵(By みてみん)


容疑者は4個(重い軽い2通り)ですが、


挿絵(By みてみん)


このように次の天秤使用で容疑者を2個残す(つまり容疑者2個を天秤の皿へ置く)時、傾く場合はいいのですが釣り合った場合がマズイ。釣り合うと天秤上の容疑者2個の容疑は晴れますが


挿絵(By みてみん)


残った容疑者2個に対し、重いか軽いかが判定できてないので、残る犯人像は


  (容疑者2個) × (重い軽い2通り) = 4通り


となり、残り1回の天秤使用では3通りの判定しかできないため、ここでアウトになるのです。同じ理由で容疑者を3個残す(容疑者1個を天秤皿に乗せる)のもアウトになります。


また4個全ての容疑者を乗せると


挿絵(By みてみん)


この時、釣り合う事はありません。犯人が天秤の皿上にいますから。だからどちらかに傾くわけですが、そうすると「4個の重い容疑者」か「4個の軽い容疑者」が残ってしまい、いずれも考えられる犯人のパターンが4通りとなりますから、やはりこちらもアウトとなります。


最初の天秤使用で釣り合った時、2回目の天秤使用では


  1個ずつ乗せるのはダメ  2個ずつ乗せるのはダメ  4個ずつ乗せるのはダメ


ですから


挿絵(By みてみん)


このように容疑者3個を天秤皿に乗せ、1個の容疑者は乗せないという方法しか考えられません。


この時天秤が傾けば、皿上にある容疑者の中に犯人がいて


  3個の軽い容疑者 または 3個の重い容疑者


の3通りの犯人像が浮かび上がり、ラスト1回の天秤使用で3通り判定できるのでOKです。また、釣り合った場合は残る容疑者は1個。そして重いか軽いかだけですので、犯人のパターンは2通り。残り1回の天秤使用で判別出来るわけです。


従って、最初の天秤使用で4個が釣り合った時は、3個の容疑者を天秤皿に乗せるしか、犯人を特定できる方法はないのです。



最初の天秤使用で傾いた場合は


挿絵(By みてみん)


どちらに傾いても4個の重い容疑者と、4個の軽い容疑者が浮上します。


逆算しますと……


ラスト1回では3通りの判定しか出来ないわけですから、2回目の天秤使用で容疑者を4個以上残してはアウトになります。


まぁ、このように残り1回では3通りしか判別出来ない事を念頭に、じゃぁ2回目の天秤をどのように使えばいいかと考えていけばいいのです。


4個の重い容疑者と、4個の軽い容疑者が残った場合はちょいと難しいですが、上記の事を忘れずに考えていけば、答えは見つかります。後の解答は、ここでは省略します。忘れた人は前回を見てください。



とまぁ、今回は天秤問題の解答ではなく、「どうやって解答を導くか?」のお話をしました。


こういう考え方って、仕事にも応用できる事があります。仕事の効率改善や本質的なものを考えたとき、どうする事がベストだろうかと考え、それを実現するためには何をすべきかと思考する。


  逆算する、選択肢を吟味する、他のアイディアをひねり出せないか ……


最善、もしくは最善に近い道はいろいろなところに潜んでいます。数学的、論理的な思考で効率よい仕事法を考えてみてはいかがでしょう?




☆★



以上、私が学生の時に天秤問題を解決するに至った思考手順を記しました。なかなか文章だけで伝えるのって難しいですけどね、数学は。笑


私はこれらをレポートにして大学の先生に提出したんですよ。そしたらレポートを提出したのは私1人。


教授「誰もレポート出してないって事は難しすぎたか。

   仕方ない。今回の課題は出さなくても単位に影響しません」


こうして私のレポートは


教授「後で見るから」


と言われて、結局講義が終了して単位認定まで読まれる事はありませんでした。ていうか、最後まで読まれませんでした。なぜなら教授の部屋の片隅に、封筒に入った状態の私のレポートがずっと放置されていたのを見たからです。


ま、いいんですけどね。


ただですね。


私はレポートを書きながらこう考えたんですよ。


  問題が12個でなく、13個だったら?


と。


挿絵(By みてみん)


13個だった時、最初の時点で重いか軽いかの容疑者が13個いるわけですから


挿絵(By みてみん)


  (容疑者13個) × (重いか軽いか2通り) = 26通り


犯人像は26パターン。3回の天秤使用で27通り判別できるので、これは可能かもしれないと。


ところがですね……


最初に4個ずつ乗せた場合


挿絵(By みてみん)


傾けば、12個の時と同じように判別できますが、釣り合っちゃうと


挿絵(By みてみん)


残る容疑者は5個。


挿絵(By みてみん)


そして重いか軽いかを考えると


  (容疑者5個) × (重いか軽いか2通り) = 10通り


となり、残り2回の天秤使用で9通りしか判別出来ない事を考えると


  最初に4個ずつ乗せるのはアウト


とわかります。もちろん3個ずつ、2個ずつ、1個ずつ乗せるのもアウトです。


じゃぁ、最初に5個ずつ乗せるかという事になりますが……


傾いた場合がマズイんですね。


挿絵(By みてみん)


5個ずつ乗せ、天秤が傾いちゃうと


  5個の重い容疑者 と 5個の軽い容疑者


合計10個の容疑者が現れてしまい、やはり残り2回の天秤使用では犯人を特定出来ないんですね。


従って


13個の球があり、1個だけ重さが違う球がある。ただし標準より重いか軽いかはわからない。この状況で天秤を3回使用して「どの球が重いか軽いか」を特定する事は出来ない


と結論づけられます。


何がすごいって、「出来ない事もわかる」事なんですね。


数学を武器に、戦略を考える事も出来れば、「あ、これ無理だわ」と不可能であることも理解できる。それってすごいと思いません? 笑



最後に。


実は私、学生の時もう1つ考えたんですよ。


挿絵(By みてみん)


13個の球、うち1個は重さがわからない(軽いか重いかも)。そして標準の重さとわかっている球が1個ある。この状況で、天秤3回使用で重さの違う球を特定し、重いか軽いかわかるか?


とまぁ、自分でこんな問題を設定したんですね。


球が13個から14個に増えてはいるんですが、増えた1個は「標準の重さ」だとわかっている。


実はですね……


標準の球が1個増えただけで、この問題は解決可能なのです!


まぁ、解答はしませんが、時間に余裕のある方は是非とも考えてみてくださいな。


今回はこれまで!



次回はまた1つ、面白い問題を出します。天秤に比べれば遙かに簡単だし、答えを聞いた時感動する頭の体操となります。


では、また次回。頭を柔らかくして、お会いいたしましょう。笑



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