P4 カントールの言葉
使用教科書 【第一学習社 数A】
教科書4ページに目を通した後に読んでいただけると、より楽しめます。
さて、集合の第2回。今回は集合論の創始者である【カントール】の言葉を紹介しましょう。
前回は【点】と【直線】の話でしたが、今回は【直線】と【平面】の話になります。まずは直線。
中学校で学ぶ【数直線】を考えますと、この直線には【無限個】の点がのっかっていますよね。
この図では代表として5個の点を描いておりますが、ホントは無限個あります。
そして平面。
この図形も中学生の時描いたりしましたね。【xy平面】【座標平面】と呼んだりします。
この平面にも無限個の点があります。
ここで質問です。直線上にある点と平面上にある点では、どちらが多くあるでしょう?
集合論っぽく言えば
直線上の点の集合と平面上の点の集合、どちらが多い?
です。普通に考えれば
平面の中に直線は含まれているわけですから、直線上の点よりも平面上の点が多いとなりそうです。
ところが……
カントールは、どちらの点も同じ数だけある事(※)を証明してしまいました。
まぁ彼もホントは平面上の点の方がたくさん在ることを示したかったんでしょう。同じ数学者であり、友人でもあるデデキントに宛てた手紙にこのような言葉を書いています。
【私にはそれが見える。だが、信じる事が出来ない】
「それ」とは自分の証明の事。つまり直線上の点の個数と平面上の点の個数が同じだけある事(※)を証明しちゃったけど、本人でさえ信じられないという事です。
彼がそう呟くのも無理はない気がしますね。
みなさんは
直線上にある点と
平面上にある点
どちらも同じだけあるって言われて、信じる事ができますか?
実はこの証明について初心者にもわかるよう、後半で紹介したいと思っています。
しかし……
【私にはそれが見える。だが、信じる事が出来ない】
哲学的な(デカルト的な)言葉ですね。
もう1つ彼の言葉を紹介しておきます。
【数学の本質は、その自由性にある】
後に紹介しますが、カントールの創始した【集合論】は初期段階でいくつかの【矛盾】が発覚しました。完璧を求める数学で、矛盾のある彼の集合論は多くの非難に晒されます。
晩年は精神を病み、精神病院の中で亡くなるカントール。集合論に対する非難の中
【数学の本質は、その自由性にある】
彼はこの言葉を遺したのです。私はこの哲学的な言葉が大好きです。
後の数学界を大きく発展させるにも関わらず、非難され、精神的に苦しむ中、最後の最期まで数学の本質とは何か、その真理を見極めようとしたカントール。漆黒の暗闇の中、きらめく一筋の光が差し込んでくるような……
【数学の本質は、その自由性にある】
この言葉にはそんな情景が浮かんできます。
今回はこの辺で。集合の話はまだまだ続きます。
※
正確には【直線上の点から平面上の点への全単射が存在する】となります。