オープニング 3にまつわるエトセトラ
「3」という数字について。
「良いもの」や「素晴らしいもの」を表す時、この「3」という数字がよく現れます。
例えばオリンピックでは成績上位3人に「金メダル・銀メダル・銅メダル」が授与されます。
カウントダウン形式のランキング発表では、上位3つを「ベスト3」と表彰したり……
世界3大○○、日本三大○○という言い方があったり……
早起きは三文の得、三人よれば文殊の知恵、三顧の礼など、「三」のつくことわざや故事成語はいい意味を表すものが多かったり……
【三顧の礼】という言葉、ご存じでしょうか。目上の人が、才能ある格下の者に対して3度でも訪問して、仕事を依頼するという意味の故事成語です。
せっかくなので【三顧の礼】にまつわる故事も紹介しましょう。
古代中国、三国時代。221年に蜀の皇帝となる劉備が、207年に諸葛孔明をスカウトするというエピソードです。
無名時代からその才能が評判だったといわれる孔明を家臣にするべく、彼の家を訪れた劉備。しかし孔明は旅で不在でした。数日後に旅から戻ったという噂を聞き、大雪の中、再び孔明の元を訪れた劉備ですが、2度目の訪問も孔明は留守でした。礼をつくすため、3度目も自ら孔明の元へ訪れた劉備は、ようやく彼と出会えたという事です。
この後、劉備の軍師となった孔明。その天才ぶりをいかんなく発揮し、赤壁の戦い等で活躍したのはよく知られるところです。
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特に日本人は「3」を好む傾向にあるそうです。一説によると「3」は「3つ(みっつ)」という発音から、「満つる」「充つる」につながるからだとか。
もちろん「ワースト3」とか悪い意味で使われる「3」もあります。何かを代表させるときに「3」はよく使われる数字です。
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この「3」に順序をつけると、「金メダル・銀メダル・銅メダル」や「BEST3」などがありますし、順序をつけないものとしては「世界三大○○」や「日本三大○○」などがあります。
競馬が好きな人には、順序をつけるのが「3連単」、順序つけないのが「3連複」と言えばわかりやすいでしょう。まぁ学生に競馬を持ち出すのはタブーですが。
数学の世界では、順序を考えて選び出す事を「順列」と言いますが、順序を考えずに選ぶ事を「組合せ」と言います。
この「くみあわせ」は、日本語表記では「組合せ」「組み合わせ」、どちらも正しいんですが、数学の教科書だとなぜか「組合せ」と記述が多いです。なるべく簡略化しようという数学のスタンスにのっかているのでしょう。
せっかくですので、ここで順序を考えない「三大○○」をいくつか紹介しましょう。
一般によく知られているものですと……
世界三大珍味 キャビア フォアグラ トリュフ
世界三大美女 クレオパトラ 楊貴妃 小野小町
世界三大宗教 キリスト教 イスラム教 仏教
日本三景 京都の天橋立 宮城の松島 広島の厳島周辺の宮島
日本三名園 兼六園 偕楽園 後楽園
日本三大夜景 神戸市、函館市、長崎市
ここらへんでしょう。
みなさんは「世界三大数学者」と呼ばれる3人をご存じでしょうか?
アルキメデス ニュートン ガウス
この3人が一般には世界三大数学者と言われる人たちです。
彼らの誰1人をとってきても、その業績やエピソードを紹介するには、余白が少なすぎますが……(笑)
もし「4大数学者なら、あと1人は誰?」と言われたらダントツで候補にあがるのが「レオンハルト・オイラー」です。
16ページのケーニヒスベルクの橋でも紹介しました。ベートーベンが難聴になりながらも作曲を続けたように、オイラーは数学のやりすぎで片眼が見えなくなったにもかかわらず、さらに数学における輝かしい業績を残し、死ぬ当日まで計算をやり続けたという……彼もまた、彼の残した業績やエピソードを語るには余白が少なすぎます。
残念ながら世界三大公式というのを私は聞いた事がありません。
ただもし、「世界三大公式」があるとするならば
間違いなくこの「オイラーの公式」は入るでしょう。個人的に残り2つは
アインシュタインのエネルギーと質量が等価であることを示した公式。そして
フェルマーの最終定理を表すこの式。nが3以上の整数の時、上式を満たす自然数の組(X,Y,Z)は存在しないというものです。
作家・小川洋子さんの代表作に「博士の愛した数式」という小説があります。この中で記憶が80分しか持たない博士が出てきます。彼は家政婦さんを雇い、その家政婦さんの息子に「ルート」という名前をつけて仲良くしていました。
ある日、博士の義理の姉と家政婦さんとが言い争いになりました。博士はけんかを止めようとある行動に出ます。
メモ用紙にある公式を記し、言い争いをしてる2人の間にそのメモ用紙を置きました。
その公式がオイラーの公式なんですね。この公式はもう、なんていうか「奇跡の公式」です。ネイピア数、円周率、虚数単位、1,0がここまで調和のとれた等式として表現できるとは……
もっとも数学屋以外、この美しさをなかなか理解してもらえませんが。
まぁこの公式の魅力は、またいつか別の機会でたくさん語らせていただきます。笑
とまぁ、今回は日本人の好むといわれる数字「3」にまつわるお話をしました。
次回も「3」にまつわる頭の体操などを紹介してみたいと思います。
それでは……
教科書では「組合せ」を学びます。「順列」との違いを認識しながら、しっかり理解していきましょう。




