P25 数はどこまで数えられる?
教科書では「いろいろな物の数え方」について学んでいるところですが……
今回は「数の単位」について。
一、十、百、千、万
このあたりはお金のやりとりなんかでも、日常よく使われる単位ですよね。
1万の後は
10万、100万、1000万
というように「万」を基準にしてその10倍、100倍、1000倍という形で数を表していく事になります。
「万の1万倍(10000倍)」となると、今度は「億」という単位が用意されています。
日本における数の単位は、1万倍、すなわち4桁の数が繰り上がるごとに新しい単位の呼称が用意されています。
「億」はまだよく聞く単位です。例えば一流スポーツ選手の年俸が「○億円」なんて聞きますよね。私なんかその100分の1を稼ぐのにもヒーコラしてるというのに。笑
1億、10億、100億、1000億
と続いた次の単位は「兆」。この単位までは「一般によく知られた単位」と言われています。国家予算がウン十兆円だとか、某国への経済援助が○兆円だとか。
では
1兆、10兆、100兆、1000兆
と続いたその次の単位は?
答えは「京」。この単位はつい最近まで「馴染みが無い単位」と言われていましたが、あるニュースをきっかけに、少しは国民にも知られる単位となったようです。
そのニュースとは、日本がほこるスーパーコンピュータ「京」。1秒間に「1兆の1万倍」、すなわち「1京」回もの計算をしてしまうという事からその名がつきました。
この計算処理能力について、2011年6月に世界ランキング1位を取ったものの、1年後の2012年6月にはTOP2となってしまいました(2012年10月現在も2位)。
まぁスパコンの話は、「人類VSコンピュータ」のところもやったので、是非そちらも読んでみてください。
「1京」という単位がある事を、多くの国民が知ったそうですが
1京、10京、100京、1000京
この次の単位を知ってる人は、数学屋か数学マニアではないでしょうか。この次は
垓
と言います。さらにその1万倍は、
この漢字は「じょ」と読みます。以下、1万倍ずつしていった時の単位だけを見てみますと
穣、溝、澗、正、載、極
恒河沙、阿僧祇、那由他、不可思議、無量大数
と続きます。日本では以上にあげた「数の単位」が用意されております。
日本でこれら「数の単位」がハッキリと確立したのが江戸時代初期。1627年に出版された塵劫記に記載されています。
塵劫記は、明(中国)で刊行された算法統宗と呼ばれる数学書を参考に、吉田光由という人物が執筆しました。
この塵劫記も数学屋の間では非常に有名な書物で、多くの数学啓発書で引き合いに出されます。江戸時代のベストセーラー&ロングセラー書物でして、鎖国だった日本において独自の数学を発展させるきっかけとなっています。
鎖国だった江戸時代において、世界に誇る数学者としてその名を歴史に残す「関孝和」や、その弟子「建部賢弘」らも、この塵劫記に夢中で読破しました。
「関孝和」は聞いたことあるけど、「建部賢弘」は聞いたこと無いって人もいるでしょうが、彼らや塵劫記については、またいつかくわしい話をできる機会があればと思います。
1つだけ言うなら、日本数学会では「関孝和賞」と「建部賢弘賞」というのがあります。
さて、塵劫記によって大きな数の単位が紹介されたわけですが、元は明で刊行された書物を参考にしているので、これらの単位は日本独自のものではなく、中国が起源という事になります。
ただし時代が進んでいくと、よりよい数の単位の表し方が改善され、1634年の改訂版において、今の単位で統一されました。
また
恒河沙、阿僧祇、那由他、不可思議、無量大数
これらの単位の呼称は仏教用語に由来しております。仏教と言うことはインドが発祥なわけです。ただし当時のインドの数の単位の取り方は今とは若干違っておりまして、さらに後の仏典ではこれらの数における定義が異なります。
日本だけでなく世界においても、数の数え方はいろいろな変遷をたどってきたわけなんですね。
華厳経において、これらの数は全く違う単位となります。例えば「那由他」は日本において10の60乗ですが、華厳経では10の28乗。阿僧祇は、日本ですと10の56乗なんですが、華厳経だと
10の(70988433612780846483815379501056)乗
という、とんでもない数になります。日本の数の単位における最高値が「無量大数」で10の68乗ですから、上記の数がどれだけばかでかいものかがわかります。
以前「人類VSコンピュータ(前編)」のとこでも言いましたが、スパコンと将棋ソフトを組み合わせたシステムを「あから」の名前は、この華厳経の数の単位「阿伽羅」からきています。
棋の全局面数といわれる、10の226乗通り。それに近いのが「阿伽羅」で10の224通りです。ちなみに「阿伽羅」の次の単位は「最勝」という、なにやら縁起の良さそうな呼び方で、これは10の448乗をあらわします。
ちなみに華厳経では「不可説不可説転」という数が最高らしく、
10の(37218383881977644441306597687849648128)乗
だそうです。もう「どんだけ~」ですね。笑
まぁ、我々は「兆」ぐらいが日常会話(というかニュースの国家予算とか)で使う最大限の数かなと思いますがね。
今回は数の単位の紹介でした。
一、十、百、千、万、億、兆、京、……、恒河沙、阿僧祇、那由他、不可思議、無量大数
私はこれを3秒で言える特技を持ってますが、人生、これほど無駄な特技は無いでしょう。笑




