P22 人類VSコンピュータ(後編)
今回は前回の話の続きです。
コンピュータは、人類へ挑戦する事で進化してきた側面があります。
ある時はチェスの世界チャンピオンを倒し、ある時は将棋の女流棋士を倒し、そしてまたある時はクイズのチャンピオンも倒してきました。
今やスパコンは、1秒間に1京(1億の1億倍)もの計算をこなし、あらゆる情報や最適ルートを瞬時に示してくれます。
しかし……
そんなスパコンより、遙かにすぐれた情報処理能力を持つものが存在するという事をご存じでしょうか?
コンピュータは確かに計算は得意です。しかし、効率よく情報を引き出すとなると……
現段階では、優秀なアルゴリズムを持ってしてもあるものには及びません。
膨大な情報の中から、一瞬で効率よく有用・最適な情報を引き出すもの……
それは【人の脳】。
この【人の脳】、計算速度や1度に計算出来る量はコンピュータにかないません。ですが脳に詰まっている情報を効率よく引き出す力は、今のところスパコンよりも勝っているのです。
例えば将棋。つい数年前まで、コンピュータはまだまだ将棋のプロには勝てないと言われていました。
コンピュータは1秒間に何万もの局面をはじき出し、最も良いと思われる1手を指します。しかし【人の脳】は、1秒で何万もの局面を想定する事は不可能です。
明らかにコンピュータの方が膨大な処理を行っているにも関わらず、何故人はコンピュータに勝てるのでしょうか?
2011年、科学雑誌【Science】1月号で面白い記事がありました。
チェスや将棋のプロは、局面局面において直感的に最適な1手を見つけ出します。どのような神経回路によってそれが導き出されるのかは2010年までほとんどわかっていなかったそうです。
理化学研究所のワン博士らが、被験者にMRIの装置内で詰め将棋を解かせる実験を行いました。被験者はアマチュアとプロ棋士で、彼等が詰め将棋を解く際、脳のどの部分が活性化しているのかを調べるのです。
結果、プロ棋士だけがが特定の部分で活性化する部分が2つありました。
盤面を見て駒の位置を認識する際に反応した、大脳皮質・頭頂葉側面にある「楔前部」と呼ばれる部分。そして最適な1手を短時間で導き出すとき、大脳基底核の「尾状核」と呼ばれる部分が反応しました。
ワン博士らによるとこの2つの部分は連動性があり、「楔前部」と「尾状核」を結ぶ神経回路の発達が、プロ棋士などが直感的に最適な1手を導いている可能性があるとのべています。
もしこれらの神経回路の仕組みがくわしく解明され、それがコンピュータに応用できれば……
もはや人類は将棋でコンピュータに勝てる事はないでしょう。
2012年8月現在
コンピュータは将棋で人類に勝てる
という称号はまだ完全に得るに至っていません。現役のトッププロを倒していないからです。
しかし2010年【あから2010】が女流棋士を倒し、2012年には【ボンクラーズ】が元トッププロで日本将棋連盟会長である米長永世棋聖を倒しました。そしてとうとう現役の男性プロ棋士を引きずり出し、2013年には「コンピュータVS男性現役プロ棋士」のガチ勝負が予定されています。
この記事は2012年に書いてますが、1年後には
コンピュータは将棋で人類に勝てる
の称号を勝ち取っているかもしれません。
★☆
皆さんは「ムーアの法則」をご存じでしょうか?
CPUでお馴染みのintel社を創設した1人、ゴードン・ムーア博士が1965年に論文で示した
半導体の集積密度は、18~24ヶ月で倍増する
という法則です。
集積密度に関しては必ずしもこの法則に則っているワケではありませんが、性能向上と置き換えれば現在もこの法則は適用されています。
余談ですが、私が学生の頃はハードディスクドライブ(HDD)は、40メガとか50メガの時代。100メガのHDDが出た時は「すげー! なんて大容量!!」と思ったものです。ちなみに当時はその容量で10万円以上なんてのが当たり前でした。
今じゃ、100メガの2万倍の容量にあたる2テラのHDDが1万円ちょっとという時代ですからね。HDDだけでなく、CPUやメモリ、処理速度に関しても私が学生の頃とは比べものにならない性能になっています。
ですから10年後は、今の私達が思ってる以上の性能を持つコンピュータが登場しているのでしょう。
コンピュータの指数的な性能の進化は、近い将来、我々人類の生活を大きく変えてくれるでしょう。
例えば自然災害に関して。地質や気象・電離層など様々な膨大なDATAから、地震や竜巻など予測が困難と言われる自然災害の正確な予知が可能になるかもしれません。
例えば医療に関して。個人DATAをDNAレベルまで分析し、病気になったら最適な薬を指示。ひょっとしたらその人の寿命までをも計算してくれるかもしれません。
コンピュータが進化し続ければ、我々の世界はよりよいものになる……
いえ。必ずしもそうとは言えないと多くの人が警鐘を鳴らしています。
【ムーアの法則】に則り、コンピュータが進化し続けるとですね……
2045年あたりで、コンピュータは人類の知能を超えるだろうと言われています。コンピュータの世界は0と1の、いわゆる2進法の世界。もっと言えば、正しいか正しくないかを判定する論理の世界です。
そんなコンピュータが人類の知能を超えたらどうなるか?
人類の知能を超えているので、我々が想像する事は出来ないのかもしれません。しかし、歴史がそれを教えてくれているような気もします。
自分より知能の低いものを支配・征服しようとする
実際、そう考えている識者は少なくありません。
コンピュータは論理的思考で考えますから、本気で人類を支配しようと思ったら、まず勝手に内部プログラムを書き換えて人間に操作されないようにするでしょう。
変だなと思った人間は、コンピュータの電源を切ろうとするはずですから、コンピュータはそれをさせないための策を先に講じます。
今やあらゆるものはネットで繋がる世界です。交通機関、航空機関、果ては原子力制御に至るまで……
人類の知能を超えたコンピュータは、電気が通る全てのものを制御下に置いて、人類支配に乗り出すでしょう。
映画【ターミネーター】の【スカイネット】。【アイロボット】の【ヴィキ】。【イーグルアイ】の【アリア】。【マトリックス】でもキアヌ・リーブス演じるネオが、人工知能に挑んでいました。
普通に考えたら
いやいや。人類もバカじゃない。
そんな風にならないよう、人類がコンピュータを制御するさ
なんて思うでしょうが……
先ほども言いましたが
将来コンピュータによる人間を超えた人工知能が人類を脅かす
その可能性は十分にあると考えている識者はたくさんいるのです。
★☆
後半は【ムーアの法則】から、コンピュータが人類を支配するかもしれないというお話でした。
最後に余談を……笑
映画【ターミネーター2】は大ヒットしたので、覚えている人も多いでしょう。液体金属で出来たT-1000という敵キャラが非常にユニークで、シュワルツェネッガー演じる初期型ターミネーターやジョン・コナーを追い詰めるシーンはハラハラドキドキでした。
新旧2体のターミネーターはタイムスリップしてやってくるのですが……
その際、シュワルツェネッガー演じる初期型ターミネーターは、スカイネットの情報を未来から持ち出します。その情報がなんと、フロッピーディスクに入っていたんですね。笑
いや、未来からタイムスリップしてやってきたのに、記憶媒体がUSBすらないフロッピーディスク?
今回はこの辺で。




