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P16 ケーニヒスベルクの橋

前回「大統領の握手数は?」という問題の解答をやりました。解答の際、人物を円で表しました。そして握手することを、円と円を線で結ぶという形で表しました。


実はその解答法、【グラフ理論】で用いられる手法なのです。


簡単に【グラフ理論】というものを紹介しますとですね……


  頂点と辺で構成される【グラフ】を扱う数学の一分野


です。いや、ホント簡単に紹介してますが。笑


高校数学で学ぶ、【2次関数のグラフ】とか【三角関数のグラフ】とは違う意味の【グラフ】を扱う事になります。【頂点】とはなんぞ、【辺】とは何ぞと説明するより、具体的な例で理解してもらう事にします。


挿絵(By みてみん)


例えばこの図形も【グラフ理論】における【グラフ】になりますが……


挿絵(By みてみん)


6つの【頂点】と


挿絵(By みてみん)


10本の【辺】を持つ【グラフ】となります。これで【頂点】と【辺】というものがおわかりになったでしょう。


突然ですが……


挿絵(By みてみん)


みなさんは、この図形を一筆書きで描く事が出来ますか?


同じ頂点を何度通っても構いませんが、同じ辺は2度通る事は出来ません。


挿絵(By みてみん)


頂点につけた数字で説明すると、例えば


  3→6→5→1→2→6→4→5→2→3→4


といけば、一筆書き出来る事が確認出来るハズ。では次。


挿絵(By みてみん)


この図形は一筆書き出来るでしょうか?


その答は後半で。



☆★


冒頭で出てきた【グラフ理論】。その発端ほったんは、かの有名な数学者【レオンハルト・オイラー】。彼については語りたいことが山ほどありますが、今回は【グラフ理論】の話だけに集中します。


時は18世紀。当時プロイセン王国の首都はケーニヒスベルク(現ロシア領)という町でして、そこには


挿絵(By みてみん)


このような地形の場所がありました。水色の部分は川が流れていて、白色部分は陸地と陸地を結ぶ橋となります。橋は7つありますが、わかりやすいように番号をふっておきます。


挿絵(By みてみん)


さて。当時の町の人々の間で


  7つの橋を全て渡り、元の場所へ戻るにはどのように行けばよいか?

  ただし,同じ橋を2度わたってはいけない (※出発地点はどこでもよい)


という問題が話題になっていました。いっけん簡単そうな問題ですが、答に辿り着く者はいつまでたっても現れない。


たまたまこの地を訪れていた大数学者【レオンハルト・オイラー】。町の人が彼にその問題を質問したところ彼はこう言いました。


  どんなに知恵をしぼっても、出来ない


これを聞いた町の人は


  すごい数学者と名高い、オイラー先生でも出来ない?


と思いましたが、オイラーはこう言うのです。


  誰がどんな方法をとろうと、それは出来ないという意味だ


オイラーは


  そもそも条件に合うような橋の渡り方自体が存在しない


として、町の人々に向けて説明を始めました。



★☆


オイラーの説明に対し、町の人々は首をかしげたそうです。いわゆる


  イマイチ理解出来ない


状況で、オイラーはさらにくわしい説明をしたとか。


オイラーがどのように説明したかはともかく……


今回はみなさんに、一筆書きが可能かどうかの判定法をお教えします。いわゆる【一筆書きの定理】と呼ばれるものです。


まず、ケーニヒスベルクの橋の問題を、【頂点】と【辺】を扱う【グラフ理論】の問題に置き換えます。


挿絵(By みてみん)


この図について、陸地になってる部分に【頂点】を配置。


挿絵(By みてみん)


こんな感じで、4つの頂点が配置されます。


挿絵(By みてみん)


わかりやすいように、【頂点A】~【頂点D】と名前をつけておきます。


挿絵(By みてみん)


橋以外の境界線を消して


挿絵(By みてみん)


橋の部分を図のように【グラフ理論】における【辺】で表します。これで4つの【頂点】と7つの【辺】からなる、立派な【グラフ】が完成しました。


少しだけ【グラフ】の【頂点】における【次数】の説明を。


頂点に接続してる辺の本数をその頂点の【次数】と言います。


挿絵(By みてみん)


この【グラフ】の場合、頂点Aには①,②,⑤の3本の辺が接続しているので


  頂点Aの次数は3


となります。頂点Bには①,②,③,④,⑦の5本の辺が接続しているので


  頂点Bの次数は5


となります。以下、同様に


  頂点Cの次数は3  頂点Dの次数は3


となるのを確認して下さい。

 

では。証明とか抜きに、【オイラーの一筆書きの定理】を紹介しましょう。この定理によれば、グラフが一筆書き出来るパターンは2つ。


  case1 全ての頂点の次数が偶数である


  case2 次数が奇数となる頂点が2つで、残りの頂点の次数が全て偶数である

       (次数が奇数となる頂点が2つのみで、他に頂点がなくてもよい)


この2パターンが


  一筆書き出来るための必要十分条件


なのです。逆に言えばこのパターンに当てはまらないグラフは、一筆書きが不可能であるとオイラーが証明したんですね。


ちなみに「case1」のグラフは、どこからスタートしても(辺の途中でもOK)うまく進めば、一筆書きで元の場所に戻って来られます。「case2」のグラフは、スタートは必ず次数が奇数の点で、ゴールはもう1つの次数が奇数の点になるよううまく進めば、一筆書きが可能です。


とまぁ、この【一筆書きの定理】を頭に入れると


挿絵(By みてみん)


ケーニヒスベルクの橋のグラフは、4つの頂点全ての次数が奇数であるため、一筆書きは不可能。すなわち


  7つの橋を1回ずつ渡って、元の場所に戻ることは出来ない


という事になります。



★☆


オイラーの示した【一筆書きの定理】は、【グラフ理論】の起源と言われ、数学の世界では広く知られた定理です。


初心者にとってもこの定理は理解しやすいため、アマチュア数学愛好家にも有名な定理となっております。この記事を読んだ方も是非【一筆書きの定理】を覚えて、何か図形を見たら


  あ、これは一筆書き出来るや  いや、できねー!


なんて判定するのもいいでしょう。


と、いうわけで……


挿絵(By みてみん)


この図形。一筆書きは出来ますか?



★☆


実は以前紹介した4色問題もグラフ理論の問題として捉える事が出来たりするんです。


グラフ理論は、パイプラインの配置や集積回路の設計、さらにはコンピュータプログラムのアルゴリズムなど、現実世界でも多くの領域で応用されている分野です。


【ケーニヒスベルクの橋】についてオイラーは「出来ない事を証明」したわけですが、数学の世界ではこの「出来ない事を証明する」ってとても難しい事なんですね~。


  5次以上の方程式には、解の公式が存在しない


という事を示した悲運の天才数学者ガロアやアーベルの話もいつかしたいと思います。


それでは今日はこの辺で。

【問題の解答】


みなさん、答は解っていると思いますが答合わせをしておきます。


挿絵(By みてみん)


この図形、各頂点の次数を調べると


挿絵(By みてみん)


次数が奇数となる頂点が4つあるのがわかりますね。


てなわけでこの図は……


  一筆書きできない!


が正解でした。

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