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第3話 小丑の親はどこにだって歩いてる

ガヤガヤとした話し声と蛍光灯の白い光が漏れる木造の建物、

入り口にかけられた暖簾の上には陰陽堂と書かれた大きな看板がかけらていた。

宵の時間帯は入ったばかりの依頼受け取りに来た人でごった返していた。

俺は暖簾を掻き分け五月蝿い話し声や蛍光灯の白い光を、

周りの雑居ビルから漏れた爆音や、

虹色のネオンライトの極彩色で色付けられた外へ逃してかき消していた。

暖簾の奥では依頼の書かれた木製の掲示板を凝視し何を受けるか悩む者、

依頼ごとに割り振られた番号が書かれた木板を持ち受付へ行く者、木札を奪い合う者で、

ある種スーパーの特売時の様な少し殺気帯びるもののお祭り騒ぎとも言える空気感があった。


(そう言えばそろそろ特売日だっけな)


俺がそんなことを考えながら器用に人と妖の間を潜り抜けて歩いてると、

どんどんと服の裾を引っ張る力が強くなっていくのを感じる。


「お、おじさん待って、ちょっと待って」


俺は足止め面倒くさそうな顔をしながら、

無駄にでかいツノを生やしたガキを見つめまた歩き出す。


「ちょっと待ってってば!」

「バーカ、こんな混み合ったの中で止まったら押されまくってあらぬ場所まで誘われるだろ」

「バカじゃないもん!」


俺は後ろから聞こえてくる声でガキの元気を確認しながらも歩く。

ーーー俺は人と妖でできた迷路をクネクネと進む、

そうするとまるで迷路のゴールとも思えるほどにピンポイントで人だかりの中で、

ポッカリと空いた目的の場所に着く。

そこで足を止めると服の裾が地面につくんじゃないかというくらい下へ引っ張られる。

何事かとガキの方を見ると、

ガキはへたりと足の力が抜けた様に地面に座り込み手で口を押さえ俯いている。

どうやら人に揺られ続け人酔いをしてしまったらしい。


「はぁ…たっく大丈夫かよ」

「うぅぅぅ〜」


今にも吐いてしまいそうな声を漏らしながら項垂れるガキを見ながら、

俺はどうすればいいのかわからずあたふたしていると、


「とりあいず背中を摩ってやりな、

あと手首の内側の内関(ないかん)ってツボも効くんじゃなかったか?」


そんな心底楽しそうな声が聞こえてくる。

俺は心底めんどくさそうに声のした方を見ると、

そこには橙色の髪を耳くらいまでぶら下げた亀割り色の瞳を持った女性がいた。


「おいおい睨まないでくれよ、私とお前の中だろ?」

「……別に睨んでねぇよ、

それはそうと相変わらずスッカスカだな」

「そりゃあ私の担当は報酬の受け取りだからね、

大半の奴らが夜行性のこの区画で朝っぱらから依頼を終わらせる奴なんかいないよ」


女性は依頼の受付でてんやわんやしてる同僚の女性を見て性格悪く笑っている。


「…依頼って、どんなのがあるの?」


下の方から聞こえた甲高い声の方に視線を向けると、

ガキが目をキラキラと輝かせながら女性の方を見ている。

どうやら依頼への興味が人酔いを上回ったらしい。


「なんだい、依頼に興味があるのかい?

隠し子の嬢ちゃん」

「誰の隠し子だよ、つーか誰に隠すんだよ」


女性はそんな俺のツッコミに心底おもしろそうにケタケタと笑う、

相変わらずめんどくさい奴だ。


「それで、どんな依頼があるか、だったね、

まぁ依頼と一口にいっても民間人から発注される"一般依頼"、

陰陽堂からの"黒白(こくびゃく)依頼"、

"組"から出される"区管依頼"と大体3つくらいあるけど、

まぁ大体は一般依頼で内容としては掃除、探し物、護衛ってところかな?

特に面白い依頼はないね」

「組?」


女性が大雑把に依頼について説明したが、

ガキはその説明の中で依頼には特に関係のない、

"組"という単語に興味を惹かれたらしい。


「なんだい嬢ちゃん、組も知らないのか?」

「嬢ちゃんじゃない!私ツクモ!」

「ははは!そうかそうか、

ツクモちゃん、そもそもこの場所はな全部で大体50区画くらいに別れててな、

その各区画を管理して取り締まってるのが"組"っていう組織なんだよ。」


「ちなみにここを仕切ってるのは赤川組っていう組織だな」と付け加え、

ニコニコとガキの方を見たあと、

俺の方を向いて少し軽蔑した様な眼差しを向ける。


「お前も、一般常識くらいは教えてやれよ。

こんな素直な子、すぐに騙されて原型なんか消えちまうぞ?」

「……しったこっちゃねぇよ、どぉせ養うつもりもないんだから…」

「ふぅ〜ん、そんな悲しそうな目でいわれても説得力ないねぇ」


俺は真顔で、女性は笑顔の皮を被り、2人は目を合わせたまま黙り込み、

一瞬でありながら確実に睨み合いを行う。

多くの人でごった返したこの場所ではその一瞬でも、

何言も重なってよりガヤガヤとうるさい。


「お腹すいたー」


そんな妙に甲高い声が2人の沈黙を破り捨て聞こえてくる。

あまりに空気の読めないその声に俺も女性も目を丸くして声のした方を見る。

そして2人が見たタイミングで狙った様に「ぐぅ〜」と、

これまた素っ頓狂な音が白いワンピースの奥から聞こえてくる。


「おじさん、お腹すいた〜、

おじさんご飯」

「…俺はご飯じゃねぇし、お前専属の料理人でもねぇ」

「お〜な〜か〜す〜い〜た〜」


ガキは構わずダラダラと伸ばした声で少し大きめな声で喋る。

その声に惹きつけられ周りに奴らの視線が少しこちらへと向く。

そもそもこんなに混み合ってたんじゃあろくに本来の目的の情報収集も果たせないな。


「あ〜あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!

もうわかったよ、

おい、なんか適当な依頼よこせ!」

「……私の専門は依頼の終了報告と報酬の受け渡しだけど?」

「こんな混んでる中であんな激戦区で奪い合いなんかやってられっかよ、

そもそもその役割自体おまえがかってになのお前が勝手に名乗りだしただけだろ」

「でも今は正式な仕事なんだよぉ、

……まぁいいか、お前と私のよしみだ、

適当に取り繕ってやるよ」


そう言い、女性はカウンターの奥へと消えてゆく。


「おじさん、どんな依頼が来るの?」

「しらねぇよ、あいつの勝手だ」


しばらくすると、奥から女性が出てくる。

女性の手には番号の書かれた木札とスティック状の栄養補給用の菓子があった。


「ほらよ、依頼だ。

枠組みとしては黒白依頼の護衛だけど、ほとんど内容はなし、詳細はあってその場で伝えるんだそうだ。

…ツクモちゃんはこっちね」


女性は俺に木札を投げ渡し、

手に残った栄養補給用の菓子をカウンターから前のめりになりながらガキに渡す。

にしても、何も内容が書かれてない上に、陰陽堂直々に護衛の依頼とは、

明らかにきな臭すぎる、

こりゃあ在庫処理押し付けられたな。


「なんだい、せっかく厳選して持ってきてやったのに文句かい?」


女性は心底楽しそにケタケタと効果音の出そうな笑みを浮かべる。


「たっく、これで俺が死んだらどうするんだよ?」

「あんたが死ぬなんてことはそうそうないだろう?

なんだって、()()()()()()()()()()()()()()

「………どこでそれを知った?」

「気をつけな、この場所は壁に耳あり夜闇に目あり、

そういうところなのはお前さんもわかってんだろ?

長生きしたいんなら精々静かに生きることだな」

「……はなからそのつもりだ」

「ならいい、でも今までよりももっと注意しなよ?

今のあんたの生き方はあんただけのものじゃない」


そう言って女性は小さな口で一口ずつ丁寧に美味しそうに食べるガキへ、

心底愛おしそうな視線を向ける。


「別に預かるって決めたわけじゃねぇよ。

いい保護施設が見つかればそっちに流す」

「ついさっき養うつもりはないとか言ってたくせに、

素直じゃないやつだねぇ」

「…そんなんじゃねぇよ」


俺はニタニタと心底面白おかしそうな女性の視線を無視して、

外の極彩色の光を漏らす暖簾の方へと向かう。

少しすると慌てて追いかけてきたガキのペチペチという音が後ろから聞こえてくる。


「さっきのおねぇさん、いい人だったね!」

「はっ!、そんな簡単に餌付けされてるんじゃ、

ああいう()()()()()にすぐに捕まっちまうな」

「ん!!おねぇさんは怪しい人じゃないもん!いい人だもん!」


ガキは頬をポッピンの様に限界まで膨らませ大声で叫ぶ。

客の人数が引いてきて少し広くなったこの場所ではよく声が響き渡る。

今くらいなら情報収集にもってこいなんだろうが、

ご生憎この依頼の待ち合わせ時間が迫ってるからゆっくりできないんだよな。

あ〜ついてねぇ。


「…そういえば、おねぇさんの名前って何?」

「しらねぇし、知りたいともおもわねぇよ」

「小丑!!」


俺は後ろから聞こえた心底楽しそうな声にガキと連動する形で振り返る。


「私の名前は小丑だよ、覚えておきな!」


そこでは子供の様に亀割り色の瞳を輝かせた橙色の髪の女性が、

心底可笑しそうに笑っていた。


「聞こえてたのかよ…」

積み上げた

赤い牛山

頂上で

届いたものは

白蛇の鱗


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― 新着の感想 ―
なんだこの最後の後書きは。なんかの俳句でしょうか。 あと誤字は全部は覚えとらんけど、なんか二十個ぐらいあったよ。 はっはっはっ。
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