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第一話 おはよう、愚か者

貧民街のようでだけど対して文明レベルが低いわけでもなく、

そんなところどころ錆び付いた建物が歪に立ち並び、

静かな月夜を喰らう極彩色の光を放つ看板を掲げている。

裏路地のようだけれど、

れっきとしたコンクリートの雑居ビルのが壁となった迷路の様な道。

その中で巨大な看板をひとつだけ掲げた、

蛍光灯の淡い光を漏らす木造の建物、

他の建物の方が光り輝いているはずなのに、

その建物には目を惹きつけるような異様な存在感を放っており、

暖簾(のれん)を垂れ下げた入り口の上には多くき「陰陽堂」と掲げられていた。

俺は暖簾をよけて建物の中に入る、

その正面には半円状の形の受付がありその中に気だるげな橙色の髪を耳くらいまでぶら下げた女性がいた。

その女性は俺を見るなりニヤリと笑う。


「なんだ、

死ななかったんだ」

「…はぁ、

別に死ぬほどの依頼じゃなかったろ?」

「さぁ?どうだろうねぇ?

最近(あやかし)の被害が増えてるし、

族どもだって他人の島でよく暴れてやがる。

それにあんたなら任務中にわざと失敗して死ぬ、

なんて事やりかねないからねぇ」

「たっく、

人を自殺願望者みたいに言いやがって」

「…私的にはあんたは、

今すぐ自殺してもおかしくないと思うけどねぇ」

「はぁ!?

なにを根拠にそんなーーー」

「そんな目をしてる」


彼女は亀割色の目でじっとこちらと目を合わせてくる。


「…チッ、

ほらよ依頼の品だ、

依頼はこなしたんだパッパと終わらせてくれ」


俺は依頼で頼まれ回収した品を取り出し、

乱雑にカウンターへ投げおく。

その様子を見て女性はつまらなそうな顔をするが、

少ししてから大きく鼻で笑うように受付としての仕事に戻る。


「はいはい、

ーーーほれ、それが報酬だ」


女性はカウンターの裏には木製のロッカーがずらりと並んでおり、

そのうちの上の方の鍵を開け中から麻生よ巾着を取り出し俺に放り投げる。

その巾着はチャラチャラと硬貨がぶつかる音を立て俺の手に収まる。

依頼の品を確認しないのは、

ガサツととるべきか、

信頼されているととるべきか…


「…ありがとさん」


そう言い残し俺は暖簾をくぐり陰陽堂を後にする。


ーーー「……あの人、随分と態度が悪いですね」


部屋の隅っこでなが席に座っていた足まで届く赤いフードを被った人が、

カウンターの女性に近づき話しかける。

見た目こそ奇抜だが声からして年齢は20代後半というくらいだろうか。


「ん?あぁ、

あれでも随分マシになった方さ、

初めの頃なんて声は小さいはもっと態度が悪いかったはで、

ろくに会話にならなかったんだから。」


女性は懐かしむような顔をして少し微笑みながら答える。


「何者なのです?彼」

「……さぁぁ?

ただまぁわからないって事ならわかるけどねぇ」


女性は意地の悪い笑みを浮かべフードのの者の方を見る。


「どれくらいからいるんですか?」

「うん?さぁどれくらいだったかねぇ、

まぁ"白龍"が討伐されてちょっとしたあたりから、

顔を出すようになったねぇ」

「…白龍…ですか」

「…まぁ、あれを殺したかった奴なんてごまんといたからね。

"龍殺し"が白龍を討伐したのに憧れて、

この組織に入りましたぁ、

なんてやつはよくいるからねぇ。

あいつがそれって可能性も全然あるよ」

「…なるほど、

とても参考になりました、

…では私はここで」


そう言い赤いフードの者は暖簾をくぐり陰陽堂を出る。


「随分と妙な奴だったねぇ、

…なにを参考にしたんだか」




ーーー極彩色を放つ繁華街を抜け、

人気のない路地をさらに通り抜けた先にある古びたコンクリートの団地、

街灯ひとつなく闇に呑まれたその場所に辿り着く。

自分の部屋へ行こうとアパートの入り口を通るとそこには、

ーーー少女が倒れていた、

虫があたりを飛んでいてチカチカと切れかかった蛍光灯に、

反射させた純白の髪が薄暗いこの場所でよく目立ち、

頭にグルグルと螺旋状で、鏡のように反射するわけではないけれど、

黄色というには神々しい黄金色のツノを生やしていた。

俺の嫌いな角だ。

俺はそれを無視してその先にあるか階段へ向かう、

ガキがそこらへんでのたれてるなんてここらじゃ見慣れた光景だ。

そのまま階段を登ろうとした時「ううぅぅう」と少女が呻く。

まだ息があることに少し驚きながらも無視して階段を上がろうとした時、


「ーーーーは、優しいんだね」


脳裏にとある言葉がよぎる。

甘ったるいけどずっと聞いていられるそんな声が。

今の俺を否定するかのようにそんな言葉を思い出す。


やめてくれ、

もうあの頃の俺はいないんだ。


俺は頭をかきむしる、

脳内でガキのうめき声と甘ったるい声が混ざり喰らい蠢き苦悩となる。


「うああ゛あ゛あ゛ぁぁ…クソが」


俺は不機嫌に強く足を踏み鳴らし、

ガキに近づき服の襟を鷲掴みにしてバックを持つように肩へぶら下げ、

俺は階段を登り自分の部屋へと向かう。


⬛︎⬜︎⬛︎⬜︎⬛︎⬜︎⬛︎⬜︎⬛︎⬜︎


ーーーー「スヤァァァーーーー、

………んんんんん……ん?

どこ、ここ?」

「んぁ?

起きたか?」


ガキは億劫(おっくう)に目をこすりながら起き上がる。

そしてガキは生まれたての小鳥みたいに辺りをキョロキョロと見渡す。


「おじさん誰?」


眠気と疑問の混ざり合った声を出しキョトンとこちらを見つめる。


「おじさんじゃねぇ!

最近成人したてだわ」

「じゃあ16歳?」

「…17だ」

「それでなんで私はおじさんのとこにいるの?」

「こぉいつ……

テメェが階段っところでぶっ倒れてたのを拾ってきたんだよ」


腹が空いて仕方なかった俺は俺はガキの隣にある戸棚から買いだめしておいたカップラーメンを取り出し、

机に置いて側面についている紐を思いっきり引いて蓋をぺりぺりと開ける、

そうすると中からブワッと湯気を噴き出す。

そして俺は着色料やら添加分で、

無駄にうまそうに香りやら色をつけられた麺やらをを箸で掴み口へかきこむ。

その様子をガキは人差し指を口元に当て、

涎を垂らし腹の虫を盛大に鳴らす。


「やらねぇぞ」

「えぇぇ、ケチ!」

「礼の一つも言わねぇガキに無料でくれてやる義理はねぇよ」

「拾ってくれてありがとうございます」


ガキは腹の虫を豪快に鳴らしながら、

螺旋を描いた黄金色のツノを見事にこちらに向ける。


「……お前、

プライドとかねぇのかよ」

「お腹すいた」

「……ちょっと待ってろ」


俺は手に持っていたカップラーメンを、

火傷をしそうになりながらも口へ流し込みから台所へ向かう。


「えぇー、

その麺食べさせてよぉ」

「バーカ、

ガキにこんな不健康の具現化みたいな料理食わせられっかよ」

「…馬鹿じゃないもん」


俺はいつぞやに買っておいてから、

放置しっぱなしだった消費期限ギリギリの、

麺やら何やらの食材たちを冷蔵庫から取り出し、

油と一緒に雑にフライパンへ放り込む。

こんなんでもあのカップラーメンよりかはよっぽど健康的だ。

あとは火が通り過ぎないように肉を取り分け、

雑にソースを混ぜてから再度野菜にしっかりと火が通るように焼き、

皿にさっきの肉と一緒にぶち込めば、

ありあわせで作った焼きそばの出来上がりだ。

まぁ即席で作った物だから満足なんて一切できていないが、

別に俺が食うわけじゃないからいいだろう。


「…ほらよ」


俺は焼きそばの入った皿を健気にテーブルの前で、

涎を垂らしながら待っているガキの目の前におく。


「箸はこれ使え、

ちゃんと洗ってあるから安心しろ」

「…?、これとこれ何?」

「ん?

焼きそばと箸だ、

しらねぇのか?」

「しらなぁーい」

「…….はぁ、

さっき俺がやってたみたいに、

その棒切れ使って皿の中にある細長いやつとかを掴んで食うんだよ」

「へぇー」


ガキはそれだけ聞き箸を持って焼きそばを食べ始めた。

しかし箸を握りしめて持っているのでろくに食べられていない、

いちいち指摘するのも面倒臭かったのでそのまま放置した。


「おじさーん、

これキラーイ!」

「ああぁぁ?」


ガキがぎこちなく持つ箸には黄色く光沢を放つパプリカがあった。


「お前なぁ、

せっかく人が出してやったんだから文句言わず食えよ」

「でもこれ美味しくないー」

「うるっせぇ!

じゃあ食うな」

「それはやーだー」

「じゃあ避けて食え」

「…はーい」


そう言いガキはぎこちなく持ってた箸でパプリカを串刺しにし皿の端へと避けていく。

そうしていくうちにまた先ほどのような勢いが戻ってきたのか、

口にかきこむように焼きそばを完食した。


「ごちそうさまでした」

「お粗末さん、

結局パプリカ残しやがって…」


ガキは焼きそばを食べ終わり何か面白い物でも探しているのか、

辺りをキョキョと見回す。


「?、あれなに?」


ガキは先ほど俺がカップラーメンを取り出した戸棚の、

となりにある戸棚を指差す。

そこには刀がもたれかかっていたが、

おそらくガキが言っているのはその隣の戸棚の扉と扉の間に貼ってある、

一枚の札のことだろう。


「…それは別に気にするな」

「えぇ、

でも気になる」


ガキはテクテクと歩き札に近づいてから剥がし取ろうとするが、

その札は一向に剥がれずガキは全体重を乗せその札をひっぺ剥がそうとする。

俺はガキの襟を掴み離れた所へ放り置く。


「うぇぇえ、なんでよもぉ!

ケチケチケチケチー」

「つーかなそもそも俺はお前を養う気はこれっぽっちもねぇんだ、

タダで飯くれてやったんだからパッパと出てけ」

「えぇー養ってよぉ」

「たっくうっせぇなぁ、

出てった出てった」


その時ドアがコンコンと叩かれる音が辺りに響く。

滅多に来ない来客に戸惑いながらも扉を開けると、

そこには足まで届くほど長い赤いフードを被った者がいた。


「ドアを叩いてしまって申し訳ございません、

インターホンを鳴らしたのですが出る気配がなく…」

「あー、

このアパートのインターホンだいたいぶっ壊れてますからねぇ。

それで今回はなんのご用件で?」


正直ここら辺で赤いフードを被って全身を隠してる奴なんでそんな珍しくはない、

けれどこいつはそこらへんの奴とは違う異様な雰囲気があり、

あまり家にあがらせたくはなかく、

あわよくばこのまま帰って欲しかった。


「…忘れ物を探していまして」

「忘れ物?」

「はい、

白髪で黄金色の角を生やした幼い少女なのですが」


フードからチラリと覗かせる眼球が、

チカチカと切れかかった蛍光灯により逆光を作らされ不気味な色を放っていた。

直感的にわかる、

関わってはいけないと、


「おや?

どうやらいるようですね」


赤いフードごと不気味な眼球をの位置をずらし、

俺の背後をギョロリと覗く。

ふと背後を見ると怯えた目でこちらを見つめるガキが一人。


「預かって頂きありがとうございます。

それでは返させてもらいます。」


赤いフードの下から一本の黒い腕が生えて出る。

その手は支柱に(すが)(つる)のようにウネウネと伸びてゆき、

蛇のようにニョロニョロと進む。

そしてその腕がガキに触れようとした時、

俺は真横で伸びるその手を掴み引っ張りガキから引き離す。


「…なんの真似ですか?」

「すいませんねぇ、

まだこいつだした飯食い終わってないんですよ。

なので今回のところはお引き取り願いたい。」

「…おじさん…」


ガキの今にも泣き出しそうなか細い声が耳に染みる、

なにやってんだ…俺。


「そうですか、

それは残念です。

では、

不本意ながら実力行使といかせて頂きます。」


その瞬間ブワリと舞い上がった紅いフードが蛍光灯の光を隠し、

俺を闇で包む。

そして俺はいきなり目の前に現れた無数のドス黒い手に顔、腕、足、胴、

いろいろなところを鷲掴みにされ、

部屋の奥へ壁を抉りながら押しつけられる。


「ッッッッカハッ!」

「おじさん!」

「…全く、

手間をかけさせないでいただきたい。

さぁ、

行きましょう」

「いや、や、おじさん!」


ガキは目に涙を浮かべより一層光を反射させる。

そして黒い腕がガキの体包み込み消してゆく、

そして多くの腕が絡まり合った丸い球体ができる。

紅いフードの者はその球体を満足げに見つめ、

こちらをチラリと見てから部屋を後にする。

俺はただその光景をただ背景に見つめていた。


ーーーあー、本当にやってんだろう俺。

別に他人のことなんでどうでもいいし、

ましてや、ついさっき知り合ったばっかのガキを、

訳もわからず守ろうとした結果がこれだ。

盛大に壁ぶっ壊しちまったし掃除だけしてパッパと大家に謝りに行くか、

こっぴどく怒られるだろうなぁ。

面倒くせぇ。

ーーー『ごちそうさまでした』

……他のやつに「ごちそうさまでした」なんて言われるの、

いつぶりだったかな。

…そういやあいつに最後に振る舞ったのも焼きそばだったな。


「ーーーーは、料理も美味しいし、強いし、最強じゃん!」


やめてくれ、

もう俺はあの時ほど強くはない。

もうお前の知ってるお前はいない。

ーーー『いや、や、おじさん!』


あの時の年相応に泣き喚き始めそうながきガキな顔が、

なぜだかあいつの声と同じ様に脳にこびり付いてはならない。


………やっぱりお前はガキを取り見殺しにする俺は嫌いか?


俺は立ち上がり乱雑に置いてあった刀を手に取り扉へ向かおうとする。

その時、視界に札の貼られた戸棚が映る。


「…まぁ念には念…か」


俺はその戸棚の前に立つ。


『開ケ』


その言葉を発した瞬間札が急に燃え始めギシギシと音を立て戸棚が開く。

その中には小さな腰掛けバックがあった、

俺はそのバックを取り出し俺はそれを腰に取り付ける。

そして俺は走り出し扉を越えて向かう、

嫌いなツノを生やしたお残し少女の元へ


⬛︎⬜︎⬛︎⬜︎⬛︎⬜︎⬛︎⬜︎⬛︎⬜︎


極彩色の看板の光と喧しい有象無象の声をを足ものに、

赤いフードの者はフードを風に靡かせ空を流れる。

警戒を少しといたからか少女を拘束していた腕の数が減り、

その隙間から少女がチラリと顔を出す。

その少女は泣きすぎたせいか目が赤く渇ききっていた。


「ご安心をもう少しで着きます、

そうすれば遂に我々の悲願は達成される。」


赤いフードの者は声を振るわせ、より一層強く少女を持つ。


「うぅぅう……おじさん、助けて」


少女はなぜ自分が攫われるのか、

そもそも自分は誰なのか、

分からないままだった。

少女の記憶には自分を助けてくれた優しい人の姿と、

自分のせいで傷ついてしまったその人の姿があった。

少女の目はもうとうに枯れたはずの涙を振り絞り出しそうであった。

しかし少女は建物に立ち一人の男性を視界に収めた。


「またおじさんって言いやがって、

俺そんな老け顔か?」

「!?、貴様!」

「おじさん!!」


俺は思いっきり地面を踏み込み赤いフードを目印に高くジャンプし、

そしてその勢いを利用し赤いフードの者を持っていた刀で斬ろうとしたが、

ギリギリで躱されその刃は、

下の繁華街の看板に薄く色づけられた空を斬った。

俺は体制を立て直し再び建物の屋上に着地しする、

赤いフードの者は無理な体制で避けたせいで、

バランスを崩しうまく飛べなかったのか同じく屋上に着地する。


「全く、

なぜあなたはそこまでこの子に固執するのですか?」

「あぁ?

固執だぁ?

勘違いすんな、

俺はただテメェーにもらった分を返しに来ただけだ」

「……なるほど、

ではやはり実力行使しかないようですね」


ふわりと赤いフードが舞い、

今度ば薄く虹色づいた空を包み隠す。

その瞬間フードの裏から無数の手が生え出てこちらへ向かってくる、

数は…5本、

さっきの時のよりも明らかに数が少ない、

あのガキに結構な量を割いているらしい。

俺は素早く刀を構え向かってくる腕を全て切り落とす。


「たっくお前、そのガキを攫ってなにするきだ」

「それはあなたが知る理由も意味も価値も必要もありません」

「あっそ、まぁそりゃそうなるか」


俺は少し納得をし鼻で笑う。

そのあと少し間をおいて再び赤いフードを空へ舞ませる。

そのフードの隙間から覗かせた目は、

闇に沈んだように黒く光からせたまま沈黙をしていた、

どうやらもう会話にはならないらしい。

まぁこっちもする気はあまりなかったが。

黒い腕がこちらへとニュルリヒョロリと5本這い寄ってくる。

()()()じゃあ短期決戦を狙うしかないな。

俺は地を強く蹴り黒い腕をを1つ、2つ、3つ、4つと斬り進み、

繁華街の極彩色を薄く反射する刀を天高く上げ、

赤いフードの者へ斬りかかろうとする。

ん?4つ?

一つ足りない?


「!?」


突然足物でコンクリートを貫く音がしたと思ったら、

ドス黒い手が地面貫通して生えてきて、

俺の足を掴む。

それに動揺し止まった俺の隙を逃すことなく、

復活した残りの4本の腕が俺の右手や足を掴み、

身動きを封じられる。

あらかじめ一本潜らせてあったのか。


「戦い慣れてやがるな」

「短期決戦を狙っているのがあなただけだと思わないことです」


ガキを取り囲んでいた腕がいくつかスルスルとフードの中へ戻ってゆき、

一つの腕に集約し、

そして一つの巨大な腕が完成する。


「それではさようなら、

蛮勇な子守り人よ」


とてつもない勢いで拳はおれのもとにせまってくる。


「おじさん!」


これは…耐えられないな。

受け流すのも斬るのも不可能、

となれば、どうすればいい?

俺は思考を巡らせこの状況を切り抜ける方法を探す、

その時ふと左手が腰のパックに触れる、

念には念を、

もってきとおいてほんとうによかった。

俺はありったけの力を振り絞り黒い手の拘束の中ギリギリ動かせた左手で、

バックから一枚の札を取り出し迫ってくる巨大な腕へと貼り付ける。

巨大な黒い手が邪魔をして赤いフードの者にはその札が見えていないらしく、

勢いを弱めずその拳は飛んでくる。


『貫ケ』

「!!??、なっ」


俺がその言葉を発した瞬間札が急に蒼く燃え、

赤いフードの者を腕どころかその体ごと貫通して貫く衝撃波が発生する。

自然と俺を取り巻く腕の拘束は解け、

その隙を逃さず俺は強引にガキを取り囲む手を切断する。

素早く腕切ったせいでガキの体は空に取り残され、

鳥の羽が落ちるかのようにふわりと落ちそうになる、

俺はそのガキ服の襟を掴み宙にぶら下げる。


「もー、

まだ襟掴んだー」

「あ?

…はいはい」

「ごめんなさいって言って!」

「はいはい。

…それで、お前はどうしてこのガキをさらった?」


俺は少し息を切らしながらも壁にもたれかかる赤いフードのものに尋ねる。

体を引きずり壁まで移動したせいで、

赤黒い絵の具をぶちまけたみたいな道ができている、

そいつは肩で呼吸をしているがその目はまだ生きていた。


「…言うと…思って…いるのか?」

「だろうな、お前口硬そうだ。

………白龍関係か?」

「!?、なぜそれを」

「ふーん、

やっぱりそうなんだな。

…おいガキ」

「ガキっていうな」

「…少しどっか行ってろ」

「え、

…また攫われちゃうかもよ」

「近くに怪しいやつの気配はねぇ」

「でも…」

「聞こえなかったか?

どっか言ってろ」

「………分かった」


そう言いガキは先ほどまでの光輝いていた瞳を少し曇らせ、

下の階へと下がる階段に座る。


「貴様…どうして…"白龍様"のことを…知って…」

「あのガキを使って白龍をどうする気だ」

「…だから…答えると…思ってーーーーッギヤァァァァァァ」


俺は無言で、

そして唐突に赤いフードから露出した眼球を刀で突き刺す。

体を貫かれても顔色ひとつ変えなかったそいつの必死の叫び声は、

ビルから漏れる音楽や有象無象の雑音にかき消され呑み込まれる。


「答えろ、

白龍をどうするつもりだ」


俺の問いに対してはただ悲鳴が返ってくるだけだった。

俺は刀を突き刺したまま直角に傾け、

さらに傷口を抉る。


「おい、

そろそろ叫ぶのをやめてくれないか鬱陶しい、

それとも記憶中枢を刺激したら少しは思い出すか?」


俺はさらに刀を傾け刃を脳の方向にその刃を向ける。


「さっさと答えたほうがいいぞ。

次ので記憶がぶっ飛んでも、

別に俺はこれを止めるきわはないぞ?」


そうして俺はジリジリと少しづつ刃を進めの上と迫っていった。

赤いフードから覗かせるその目はとうに恐怖で支配されていた。


「…復活…させるのだ…」

「あ?」

「白龍様…の復活に…あの少女が…必要なのだ…」

「てぇ、

冗談いってんじゃねーぞ」

「冗談などではない!」

「不可能だ、

と言うより厳密には"そう言うやり方"で、

呼び出せるようなやつじゃない」

「"教祖様"が…言っておらっしゃったのだ…、

それでもう十分に我々には信じる理由になるのだ!」


紅いフードの者は先ほどまでの途切れ途切れとした、

喋り方が嘘かのように声を荒げる。


「教祖?

テメェら何者だ?」


俺は赤いフードの者を急かすように刀を進める。


「…っ我々は…

我々の…名は…【純白正教『純粋』】、

白龍様を崇拝し…信仰する者たち…だ」

「純粋教ねぇ、

純粋が花言葉のサボテンがあったな、

確か名前は…ハクリュウマル、

…はっ、まんまじゃねぇかよ」

「……お前は…何者なのだ!

ここまでの…ことを理解していて…しかも…その力…人というよりそれは………ただの…人と言うわけでは…あるまい」


先ほどまでの威勢を取り戻した赤いフードの者は、

赤いフードから覗かせる半分潰れた眼球でこちらをジロリと見つめてくる。


「俺か?

俺は…そうだな、

ただの愚か者さ…大切なやつ一人守れない、

世界で一番憐れな化け物だ」

「なにをゆうか、

私が聞きたいのはそれでは…」

「はい時間切れだ、

バイバーイ」


そう言い俺は刀を上へと思いっきり上げる、

刀にはこびり付いた脳やら血肉やらのせいで少し重かった。


「ギヤァァァァァァ、

何をする!私は全てを話したぞ!

なのに!どうして!」

「別に喋ったら生かしてるなんて言った覚えはねぇーよ、

それに、俺の前で白龍を復活させるなんて言った野郎を生きて返す義理はねぇよ」

「クソ…がッ」


そう言い残し赤いフードの者は黒い塵となり舞消えていった、

しかしその漆黒の塵も繁華街の放つ極彩色に塗り潰され変えてゆく。

……やっぱり俺はこの場所が嫌いだ、

心から安らぎを奪うこの場所が、

雨でも降れば少しはマシになるんだがな。


白龍を復活させようとしている存在、純白正教『純粋』か。


俺は落下防止の鉄パイプの柵に身を任せる様にもたれかかり深いため息を吐き捨てる。

白龍の復活、その言葉に思うところがありしばしガキことを忘れていた。


「ーーーはすごいよ!」


そんな甘ったるいけどずっと聞いていられるようなそんな声の言葉がいくつも浮かんでくる。

それはまるで脳を抉りながら思い出している様で、

思い出している間は他のことが考えられなくなる。


「っっはぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


手で触れている鉄パイプ柵は雨で錆びて凸凹としていて触感がよくわかる。

錆びれたこの街に鞭を打つ様に吹く冷風は、

今だけはこの街を心地良く感じさせられてくれた。


「……復活…させるわけねぇだろ」


もうこの物語は終わったんだ悲劇で幕を閉じたんだ。

バッドエンドのその先にあるのは、絶望の平行線だ。

純白正教『純粋』教徒の末端の末端まで、

逃しはしない。


ーー俺はその決意を胸にし、

ぱっぱと家に帰るためガキを探し下の階へ降りる階段へと向かったのだった。

あの夜の

悲劇で閉じた

あの幕の

覗いた裏に

絶たれた望み

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― 新着の感想 ―
読んだよー。 なんかダークな話ですねぇ。 普通に面白そう
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