第6話 - 違和感の芽生え
Lunaの人気が急激に高まる中で、光也の心には小さな違和感が芽生え始めていた。
その日の夜、いつものようにパソコンを立ち上げてLunaの配信を観ていた光也。画面の中で、Lunaは満面の笑みを浮かべながら、視聴者たちに話しかけていた。
「みんな、今日も来てくれてありがとう! 新しいファンも増えてきて本当に嬉しいよ!」
コメント欄は勢いよく流れ、光也が打ち込んだ「今日も可愛い!」というメッセージも、すぐに他のコメントに埋もれていった。
以前なら、Lunaがコメントを拾ってくれることも多かった。しかし、今ではその機会はほとんどなくなっていた。
「これが……人気ってことなのか。」
光也は呟きながらも、画面の中のLunaを見つめ続けた。彼女の温かい笑顔は変わらないが、どこか遠い存在に感じられる。
翌日、SNSを開いた光也のタイムラインには、Lunaに関する投稿が溢れていた。
「昨日の配信最高だった!」
「Lunaのグッズ、全種類揃えたよ!」
「推しは推せる時に推せ!」
その中に、ふと目を引くコメントがあった。
「Lunaって最近、なんか変わったよね?」
「ファン増えすぎて距離感がなくなった感じ。」
その言葉に、光也は胸をざわつかせた。Lunaが変わったのか、それとも自分の感じ方が変わったのか――答えは出ない。
その夜の配信中、Lunaは新しいファンに向けて語りかけていた。
「初めての方も、これからよろしくね! 素敵な時間を作りましょう!」
「初見です!」というコメントが次々と流れる。それを見た瞬間、光也は小さな寂しさを覚えた。
「もう、俺だけのLunaじゃないんだな……。」
その思いを振り払おうとしたが、簡単ではなかった。彼女が輝くほど、自分がその中で小さくなるような気がしてならなかった。
配信が終わり、光也はSNSに「Lunaを応援してるけど、少し寂しい」と投稿しようとしたが、結局何も書かずに画面を閉じた。
心に芽生えた違和感。それが何なのか、光也にはまだはっきりとわからなかった。
Xにも同時投稿中。X版はイメージ画像付き。
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