第2話 - 大ブレイクの兆し
朝の通学バスで、光也は何気なくスマートフォンを開き、Lunaの配信アーカイブを再生した。日課のように繰り返し観るお気に入りの配信だったが、今日は違うことが目に留まった。
「え、これ……再生回数、100万回超えてる……?」
配信アーカイブの下に表示された数字は、見慣れないほど跳ね上がっていた。普段は数十万回程度だった再生回数が、突如として桁違いになっている。
「一晩でこんなに増えるなんて……」
その原因を探ろうとSNSを開くと、Lunaの名前がトレンド入りしていた。無数の投稿が彼女のことを話題にしている。
「これ、やばくない? Lunaの歌声、マジで天使!」
「初めて見たけど、この子めっちゃ可愛い!」
「LunaってVtuber知らなかったけど、完全に沼った……」
見知らぬユーザーたちが次々とLunaを絶賛する言葉を連ねていた。その中には、著名なクリエイターや配信者の投稿も混じっていた。
「これ、バズってる……」
光也の胸が高鳴る。推しが注目を集めることは嬉しい反面、胸の奥底に小さな棘が刺さったような違和感も生まれていた。
昼休み、学食で友人の大輝にその話をした。
「すごいな、それ。お前の推し、めちゃくちゃ人気じゃん!」
大輝の言葉に、光也は曖昧に頷いた。
「まあ、そうなんだけど……なんか、複雑なんだよな」
「なんでだよ? 応援してるんだろ? 人気出るのはいいことじゃん」
言葉に詰まる光也。彼の中では、Lunaが「自分だけの特別な存在」であるという感覚が揺らいでいた。
その日の夜、Lunaが配信を始めると、コメント欄の流れはこれまで以上に速かった。光也が送ったメッセージは、あっという間に流され、Lunaが拾うことはなかった。
「これが……人気になるってことなのか」
モニター越しのLunaは変わらず可愛く、笑顔を振りまいていた。けれど、光也の胸にはぽっかりと穴が空いたような感覚が広がっていった。
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