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機甲科13班  作者: 来知
プロローグ
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プロローグ

 2030年、新型ウィルスの世界的騒動も収まり、平穏を迎えていた頃。人類は新たな脅威と立ち向かうことになる。


 ――東京都足立区より北、埼玉県越谷市付近にまで展開される、東京北部戦線機甲科第一戦隊。その13班。

 AI補助と、鍛錬された操縦士によって扱われる、三一式単座多脚戦闘車両。市街地での高機動性を維持するために脚部に取り付けられた小型輪が、地面と独特の奇妙な音を奏でる。


 暗い夜の景色を、暗視装置越しに確認する。

「こちらアルファ、敵影見えず」

 息の詰まるような狭い空間で、一人電波の先の相手に報告する。

『こちらブラボー、小型集団の進行を確認』

 音割れ気味の無線が返ってくる。

「了解、そちらに合流する」

 もはや車の走っていない道を、時速60kmで走り抜ける。正直言って加速性は悪いし、現代戦車の最高速度に追いつかない鈍足。ドライブするなら絶対にこの車両を選ぶことはない。

「あれか」

 ブラボー地点に到着すると、すでに”それら”は元荒川を渡ろうと橋を南下している最中だった。

 蟻のような風貌だが、それでも全長2mはあるだろう見た目に合わない巨体。これでも小型なのだ。

 水が苦手なのだろう、律儀に橋を渡ってくれるおかげで狙いがつけやすい。陣取った川岸から姿勢を調整し、無理やり付けたような105mmライフル砲を橋を渡り終えた場所めがけて照準を合わせる。

 橋を落としてしまうのも手ではあるが、離散されると厄介だ。

 最初の一撃で楽に事態を終えるか、厄介ごとになるかが決まりがちなので、部隊員全員に緊張が走る。幸い、向こうはこちらの存在に気づいていない様子だ。

 先頭蟻が橋を渡り終えた途端、冷静にそれでいて力強く指示する。

「撃て」

 機械による補正がなければ何も見えないほど、次々と車両から閃光と爆轟が放たれ、隊列をなしていた蟻たちは木端微塵に飛散する。

 もちろん主砲だけではなく、12.7mmの機関銃の弾をたっぷりと浴びせるのも忘れない。

 いまだに人が住んでいれば暴動が起きるだろうその行為も、もはや人のいないこの場所でなら何でもありだ。ひとしきり撃ち終えると、目標群の沈黙を確認する。

『目標の殲滅を確認』

 観測班が無線を入れてくる。緊張を解くように一息吐き出し、無線を返す。

「了解、哨戒任務に戻る」

 今晩の襲撃はただの斥候みたいなもので、損害等でなくて当たり前だ。まだ熱を持った砲身を揺らし、元の哨戒ルートに戻る。


 2030年より始まった特異生命体の進行は突如としてユーラシア大陸北部より始まり、今や世界全土にわたって特異生命体による侵攻が行われている。辛うじて大国は戦線を築きなんとか通信が取れて存在が確認されているが、近隣の小国などはもはや通信が途絶して一年以上は経つ。

 他国に軍事力を頼っていた国なんて滅んでいても不思議ではない情勢だ。

 それでも何とか国が生存できている背景には奴ら特異生命体は陽に弱く、日中は活動しないことにある。

 日本では北海道札幌市を中心とした北部エリア、東京都23区を中心とした東部エリア、大阪府大阪市を中心とした西部エリア、福岡県福岡市を中心とした南部エリアを支柱に防衛ラインを築き、生活圏を維持することでなんとか国を保っている。

 そして、我ら東京北部戦線機甲科第一戦隊はこの戦争勃発後新設された国防軍の新装備を有する主力部隊。主に埼玉県内で東部エリアを防衛する部隊。

 特異生命体は大陸北部で確認されたこともあって、日本にも北部から侵入していることが多く、東部エリアとしては一番最重要かつ最も戦闘が多い。しかしそれでも、俺たちは守りたいものがあるから戦い続ける。

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