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みんな一緒が、みんないい

作者: げん0303


僕は普通の人間だったが、ところどころかけているところがあった。

さみしいという感情が人よりもずっと薄かったのだ。

どうしてみんな人と一緒にいたがるのか、疑問だった。

だってひとりの方が楽だし、相手に気を遣う時間はそんなに楽しくない。

もちろんそんな相手ばかりではなかったと思う。

僕にだって友人がいないわけではなかった。一緒に遊んで笑っているときは楽しいと思えた。

でも、家にかえるとふと気づくのだ。

ひどく疲れている自分がいると。

楽しいかもしれない。けど正直疲れる。一人の方がいい。

そんな風に思っていると、自然と相手は離れていく。

離れて行ってくれると言い換えてもいいかもしれない。

だれとも繋がらない人生があるなら、それも悪くないように思えた。

もちろん完全につながりを断つのは難しい。

現代は携帯端末ひとつあれば簡単につながってしまう。

完全なる孤独を味わうには、現代社会は便利にすぎる。

うまれる時代が遅かったのかもしれない。

―――天涯孤独。

この言葉には子供のころから無性に惹かれてしまう。

両親や家族に申し訳なかったから、だれにも言えなかったけど。

僕はずっとひとりになりたかった。

最初からひとりなら、だれに気を遣うこともない。

僕がふといなくなっても、だれにも迷惑をかけることがない。

立つ鳥跡を濁さずという言葉がある。

だれの意識に傷を残すことをなく最後を迎えられたら、それは僕の思う理想的な将来像そのものと言えた。

悲しいことに僕は自分に価値がないと思っている。

ひとに親しくされてもなにも返せないのだ。

親しくされても同じ価値観を持たない僕は、誰かととずっと同じところにいることはできないのだ。

そう、価値観だ。

僕は他人に対して心底うらやましいと思うのは、彼らがお互いに対してつながりを求める感情を持っていることだった。

ある人は言う。

「みんなひとりでいるのが好きだよ」と、そう言う。

でも違うのだ。僕と周りと同じではない。。同じだったら苦しまない。同じにはなれない、なれなかった。

皆が当然のように持っているだろう人との繋がりを大切に思う感情が、僕にはほとんどない。ともすれば一切ないものとして扱えるほどに。

ともすれば、劣等感を感じてしまうような心の繋がりを疎ましく思う感性を、卑屈な意地で上等なものだとずっと言い張っている奴の気持ちを簡単に同じといわないでほしい。

僕だってみんな同じだと思おうとしたことは何度もある。

だって、その方が楽だ。みんなと同じ方がいい。

でも違うのだ。同じではない。数十年の葛藤の結論だ。

遠くに行きたいと思う。

誰もいないところへ。

ここまで人との違いを訴えておいて、結局は月並みな願望に苦笑いしてしまいそうだ。

ああ、こころから寂しいと、人恋しいを思えるような感性が僕にも備わっていれば、また違う人生を歩めたのかもしれない。

願わくば、死ぬまでに一度でいいから、こころの底からの寂寥を味わってみたい。

この葛藤を無知な馬鹿の戯言だと笑えるくらいの強い感情を一度でも味わうことができたなら、僕の人生もきっと報われるだろう。








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