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84話 『肉塊』

「カグラ、複数行った。行けるか?」


 大鎌を振り抜いた際、肉塊もただ斬られる訳ではなく、回避を試みる。

 しかし、優秀なのはアルのサポートだ。

 回避した方向を読み解き、僅かに鎌の方向を操作して追い縋る。

 その結果、命中率は100パーセントだ。


「わ。あわわ……」


 問題――というよりも極めて普通なのは、カグラの攻撃だ。

 神様に向かって普通なんて表現は無礼なのかもしれないが、本来戦闘には向いていないのだろう。

 攻撃も珠に外すし、こうやって複数の肉片ができた等の突発的事象に弱い。

 とは言え、カグラが攻撃を外したところで1回分の大鎌による攻撃が無駄になるだけで特別支障はない。

 それに、今であれば――――、


「『電光』!」


 本体の肉塊に戻らず、意表を突く形でカグラに対して攻撃を仕掛けた肉片は、奥から放たれた雷魔法により倒れた。

 それを放ったのはナズナだ。

 体育館で折れた左腕の治療を簡易的に行なった上で戻ってきていた。

 左腕は垂れ下がったままだが、魔法を使う分には問題ないらしい。

 尚、戻ってきたのはナズナだけで、カナタさんやヤスタカ、天使は安静にしており、ミフユもその看護をしているとの事だ。


「ご、ごめんなさい……。ありがとうございます……」


「問題ないわ。こっちはそれ程でもないもの」


 何故かカグラは俺とナズナに対して頭が低い。

 神様という存在だと考えると違和感が半端ないが、正直今はそれどころではない。

 神様とはいえ、使える者は使わないといけない。

 後からバチでも当たらない事を祈るしかない。


 尚、今回カグラのサポートをナズナが実施したが、本来の仕事は別にある。

 学校の周囲から群がってくるバグモンスターの処理だ。

 カグラが神様としての正体を現したからではないかと予想しているが、そこからバグモンスターの襲撃が余計に激しくなってきていた。

 正直、今更バグモンスター程度が集まって来たところで肉塊との戦闘に支障が出るわけではないが、肉塊は相変わらず他のバグモンスターを吸収するし、何かの妨害で対処が疎かになる懸念もあった。

 その点、ナズナが戻ってきたのは助かっている。


 そのナズナの手が空き始めたのはつい先程からだ。

 周囲のバグモンスターを狩り尽くしたのかどうか定かではないが、最も多かった坂から上がって来るバグモンスターが居なくなっている。


『そろそろ、終わりが見えてきたな』


 アルの言う通りである事は、俺も実感している。

 肉塊から急に別のモンスターの手足が生える様な現象は既に起きなくなっているし、あるタイミングから肉塊自体のサイズも減少してきている。

 俺の身長程のサイズがあった肉塊も、今では元のゴブリン程度のサイズ感だ。

 更に、大鎌を通じて感じていた防御シールドの様な障壁も今や感じない。

 先程の肉片の様に、これまでと違う行動を取り始めるのも、終わりが近い証拠だろう。


「よし、じゃあ一気に決めるか」


 これまでは、肉塊から力を削り取る事に注力してきた。

 つまり、カグラが対処できる程度に敢えて(・・・)少しの肉片だけを斬り落とす様にしていた。

 但し、その過程で余りにも小さい肉片であれば、肉片単独で動くことはなく、そのまま消滅する事を発見している。

 要するに、全て細かく斬り刻んでしまえばそれで討伐できるのだろう。


 これまでは肉塊の限界が掴めず、最悪逃げられる事も考慮して実施していなかったが、今であればその懸念も払拭できそうだ。


『グ、グゲゲ』


 それが肉塊の最後の悲鳴となるだろう。

 肉塊が感知できない速度で、肉塊の身体を半分に切り裂く。

 更に縦に2分割。

 だが、それだけで終わらない。

 レベルによる補正をフルに使用して大鎌を縦横無尽に振るい、肉塊を細かい肉片へと変えていく。


 その過程で消滅する肉片も数多く出てくるが、それでもまだ動く肉片には容赦なく斬り刻んでいく。

 逃げようとする肉片も生じるが、当然逃がさない。

 カグラも状況を察して、赤い光を円形に展開したのだが、その配慮も特別必要ない。

 どんな行動を示そうが、全て察知している。

 潜ろうとする奴、飛ぼうとする奴、消えようとする奴無関係に斬り刻む。


 どれくらい繰り返していただろうか。

 それが完了した。

 倒し残しという事もない。

 その証拠は俺自身の感覚で判る。

 それは漠然とした感ではなく、もっと身体的な要素によるものだ。


 つまり、レベルがまた一気に上がった。

 前回はあまりの変化に気を失う程であったが、今回はそんな事もない。

 ただ単純に自分の力として落とし込めている。


 とにかく、レベルが上がったのであれば討伐が完了している。

 そして、討伐が済んだのであればやることは1つだ。

 むしろ、それの為に戦っていた訳なので忘れる事もない。


「あれか。確か触れば良いだけだったな」


『うむ。後のサポートは我がしよう』


 向けた視線、そこにはある物質が転がっている。

 緑色の強い光を放つ宝玉――ゴブリンの魔核に触れ、コアを奪取する。

 そして、そのコアを制御する事で、こんなバグだらけの世界からバグを取り除く。

 そこまでやって、ようやくゆっくり休めると言うものだ。

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