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66話 『崩壊』

 ――――ゾワッ――――


 倉庫での作業が一通り完了し、辺りも暗くなり始めようかというタイミング。

 背筋が凍える様ななんとも言えない感覚が身体に走った。


「な、なんだ今の。まさか今のがアップデートか?」


 皆、動きが止まっていたので、俺と同じ感覚を感じているのは明らかだ。

 こんな違和感は経験した事がないが、世界がこんな状態になった際に世界が反転した様な謎の現象を感じていたと言っていた。


「いいえ。アップデートは意識も一瞬持っていかれる様な感覚ね。とはいえ、確かに似てはいるのだけれど」


「何か変わったのかもしれません。一度外に出てみましょう」


 この倉庫フロアは、日光による物品の劣化を防ぐ為か窓は無い。

 外を確認するには事務所のフロアへ移動するか、入ってきた入口から再び外に出る必要がある。

 当然距離的には入口の方が近く、そこへショウゾウ先生が近づき、扉を開けた。


『グォォォォ』『ガァァァァ』『キャインキャイン』『プルルルルルル』『クアナッハ』『バリバリバリバリ』『ゴゴゴゴゴゴゴゴ』『ワオーーーーン』『クケケケケケケ』


 そこへ飛び込んで来たのはモンスター達の咆哮による大音声だった。

 あまりの五月蝿さにショウゾウ先生は扉を閉めると、今まであった大音声はピタリと静かになった。

 とてもそこまで扉に防音効果があるとは思えないので、研修棟や校舎の時と同じ様に外の音は聞こえない空間的な仕様だろう。


「これは一旦様子見ね。暗くなりそうだし今日はここで待機が良いでしょうね」



  ◇  ◇  ◇



「多少のズレはあるでしょうけれど、あの結界の中心はやっぱり新校舎ね」


 場所は倉庫エリアから、2階にあった会議室に移動している。

 ここには窓があるので外の様子が見えるが、夜行性のモンスターがちらほらと学校の方へ向かっているのが確認できる。

 幸いにしてモンスターはこの倉庫をスルーしているのでゆっくりと考える事が可能だ。


 そんな中で用意したのは、この辺りの地図だ。

 当然ショウゾウ先生が『倉庫』から取り出した物になる。

 そこには円が描かれているが、その中心に新校舎が置かれている。

 円は結界を示しており、黙視上確認した結界の円弧から拡張したものだ。

 そこから中心を導きだしているので誤差はあるだろうが、学校の敷地内を外れる事はなく、その中心にあるのは新校舎だ。


「やっぱり、そこに居るのは神様っすかね?」


「もしくは、ヤスタカが言っていた施設の中枢だな」


 つまり、結界を維持していた存在が居た筈だが、そいつに何かがあって結界が崩壊したと考えるのがシンプルだろう。


「えぇ。そしてその場所の最有力の候補は体育館なのだけれど」


 俺達が捜している神様が生徒に混じるか擬態して隠れている可能性だ。

 可能性としては最も高いと思っているのだが――――、


「いいえ。それは否定されました。向こうに特に変化はありません」


 可能性を否定したのはショウゾウ先生だ。

 携帯電話で向こうと通話していたが、どうやら無事だったようだ。


「となると、3階に居たかもしれない人物か、あの天使辺りか?」


 3階はグリフォンが居た場所の奥だ。

 グリフォンが、奥の教室にでも逃げ込んだ人物を追い掛けてそこに居たとする考えだが、何日も閉じ籠るには窮屈な場所であるし、曲がりにも神様ともあろうものがそんなところに居るのだろうか。

 ただ単純に逃げきれずにやられている可能性の方が高いように思えるし、単純に翼を使ってゴブリンから逃げた先がそこだった可能性も高い。


「神様の方は判らないけれど、施設の中枢の方なら思い当たる物があるわね」


 それは初耳だ。

 これまで色々な所を通ったが、特別それっぽいものは見た事はなかった。

 答えはなにかと聞こうとするが、ナズナはじっとこちらを見てきている。

 どうやら、当ててやる必要があるようだ。


「中枢って言うのは何かのエネルギー源の方だろ?」


「そうね」


 中枢とは、戦艦で例えるなら艦橋か動力源のどちらかとなるが、艦橋の方はシステムと艦長揃って初めてシステムの制御ができる。

 だが、動力源を落としてしまえばシステムも停止する。

 今、艦長たる神様の予測がつかないのであれば、考えるべきは動力源の方だ。


 とはいえ、これだと言える様な物は思い付かない。

 とりあえず思い付くのはあの巨岩であるが、あれがエネルギーを持っている印象はない。

 可能性はあるとも思えるが、ナズナも似たような印象であれここで発言するとは思えない。


 逆に、エネルギーを持つものとして思い付くのはモンスターくらいだ。

 例えばドラゴン――あいつが世界の中心だと考えれば辻褄が合うようには思えるが、ゴブリンや天使にさえ簡単にやられるようには思えないし、そもそも校舎の外に居る。

 ゴブリンは論外だ。

 あいつは他のモンスターの魔核を食い漁り、著しく成長しているだけだ。

 そして、天使はエネルギー源と言うよりは神様寄り、先程の例えでは副艦長の様な印象がある。


 他のモンスターといっても、遭遇したモンスターは基本的に全て倒している。

 残っているモンスターといえば――――、


「あー、そういえば居たな。中央広場の空中でフワフワ浮いていた宝玉型のモンスターが」


「えぇ。浮くことで倒されにくいにしても、あれだけゆったりとしていれば狙われはするでしょう。それで倒されていないのであれば、とてもレベルが高かったのではないかしら」


 見た目と強さがリンクしていないのは、このバグった世界ではおかしい事ではない。

 だが、それであれば倒せるのはゴブリンか天使くらいであり、天使がわざわざ倒す必要もないだろう。

 そうなると、ゴブリンと天使の勝負が決着し、ゴブリンが勝利した事になるのではないだろうか。

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