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65話 『結界』

「入っては来ませんね。音も聞こえません」


 大通りに出た所に居たのはモンスターの大群だった。

 見渡す限りモンスターに囲まれており、大通りの向こう側の建物は何1つ見えない。

 しかし、そいつらはある程度の位置で留まり、俺達を襲ってくる様子は見えない。

 一応、気付いてはいるようで騒がしそうにわめきたてているが、騒がしくはないし、わめき声も聞こえない。


 その原因は大通りの中央に引かれている、虹色の壁が原因だろう。

 虹色といっても、シャボン玉の泡のように絶えず変化しており、薄くて今にも弾けそうなイメージがあるそんな壁だ。


「結界……とでも言うところね。空は開いている様だけれど」


 その虹色の壁は地面に垂直に伸びていて10メートル程で消えている。

 水平方向を見ると、俺達を内側に置くように弧を描いてどこまでも延びている。


「半球じゃなくて輪っかの中に居るんだろうな」


 ある程度近づかないと見えてこなかった壁ではあるが、空方向は見えていないのではなく、実際に開いているのだろう。

 そうでなければ水平方向が見える説明が付かないし、ハーピィが侵入して来ている事の説明も付かない。


「さて、疑問はあるにせよ、目的地に向かいませんか。幸いにして目的地は結界の内側です。変に干渉して結界が壊れても大事です」


「えぇ、そうしましょう。案内お願いします」



  ◇  ◇  ◇



「どうやって入るんですか?」


 ホームセンターの倉庫とは聞いていたが、その形状は倉庫と言うよりは事務所とか工場とか言った方がしっくりくる。

 だが、その玄関は固く閉ざされ開きそうもない。

 恐らく中には誰も居ないのだろう。

 今のナズナやショウゾウ先生であれば、強化ガラスであっても破壊出来そうな気もするが、破壊して入るのも火事場泥棒みたいで忍びない。


「なんてことはありません。社員証と暗証番号で裏口が開きます。しかし、今後は非常時の入口でも設置した方が良いかもしれませんね」


 ショウゾウ先生は、何もないところから手品の様に社員証を取り出すと、玄関横の金属扉に向かう。

 そこであっさりと扉を開くと、「どうぞ」と俺達を招き寄せてきた。


 中に入るとそこは真っ暗だった。

 どうやら裏口は玄関や事務所ではなく倉庫フロアに直接繋がっている様で、うっすらと棚が見える。


「さて、電気をつけますね」


 そう言ってショウゾウ先生が壁の配電盤を操作すると、倉庫フロアに電気が灯り、中の様子が鮮明になった。

 外から見た限りは普通の建物であったが、中は2階まで吹き抜けになっており、その高さまで棚になっている。

 当然棚の中は物で一杯なのだがそれよりも気になるのは本来の(・・・)通路――床一面まで段ボール箱が山積みになっている事だ。

 明らかに許容量をオーバーしている。


「物が多すぎませんか?」


「えぇ。ここは、中継ステーションとしての倉庫でしてね。港にある倉庫からここまで一気に運び込んだのですよ。お陰でこの有り様です」


 世界の終わりとの事で、商社はあらゆる在庫を無償か格安で配っていた。

 高乃宮家系列もその限りではない。

 その裏ではこのような状況になっていたらしい。


「ここで皆さんにお願いしたいのは開梱作業です。中身が何であるかを確認し、有用そうであれば私に見せて下さい」


 箱は見るからに大量にある。

 これは重労働になるなと辟易するが、まぁやるしかないだろう。



  ◇  ◇  ◇



「思ったより余裕っすね」


「そうだな」


 開梱作業とは言ったものの、実際に蓋まで開けないといけない物は少数だった。

 何せ、特に重要な食糧については段ボールに商品名が書かれている事が多く判別に困らなかった。

 また、レベルが上がっているせいか全く疲れない。

 力も上がっているので持ち運びも容易だ。

 数があるので時間だけは掛かるが、既に必要最低限は回収済ではある。


「ショウゾウ先生、そういえば収納も出来たんですね」


 ショウゾウ先生の使う『倉庫』は、異空間から物を取り出すのではなく、世界のどこかにある自分の所有物を取り出す仕組みだと聞いた。

 しかし、今は段ボールの中身を確認した後、その段ボールは忽然と消えてしまう。

 では、それらは何処に行ってしまったのだろうか。


「えぇ。扱える物は所有物である必要があるのですが、そこの判別が少々複雑でしてね。ここに置いていても良いのですが、この建物に誰かが入ってきてしまうと所有物でなくなってしまうので」


 所有物にするには、貰う、購入する、そして拾うという行為に起因する。

 今していたのは正に拾うという行為だ。

 拾う時にそれに元々の所有者がいることは無関係なのだろう。

 現実的には拾っただけで所有物とはいえないが、この世界――ゲーム的には主人公が民家のタンスの中からアイテムを得る行為と同列に扱われているものと思われる。


「つまり、他の人に拾われ返されない場所に移動している、という事ですか」


「えぇ、具体的には自宅です。それも私室になるので今家に帰ると大変な事になっていますね。プレハブ小屋の方は皆が使っていて私の所有物からは離れておりますし」

 

 ハハハとショウゾウ先生は答えるが、私室に全て置いてあるという事は既に足の踏み場もないどころか、天井付近まで積み上がっていることだろう。

 今まで収納してきた容量からショウゾウ先生の私室は相当広そうではあるが、それも限界がありそうではある。

 倉庫内の品を根こそぎ収納せず、わざわざ厳選しているのもそれが要因なのだろう。

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