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64話 『在庫』

「え? よわっ」


 一連の流れを見ていたミフユが呟いたのが聞こえたが、直接的なフラグを立てなかったの褒めてやりたいところだ。

 しかし、フラグ関係なく勝負はこれからだ。

 メカリザードマンは、プール引き摺り込んだだけで特別ダメージを与えたわけではない。

 今は、遠距離攻撃が無くなった事を幸いとして、ナズナの雷魔法で残りのリザードマンを一掃してやれば良い。

 

 と、思っていたのだが残りのリザードマンの様子がおかしい。

 メカリザードマンがプールに落下したのを皮切りに、リザードマンの動きが止まっている。

 いや、止まっていたのは一瞬だけで、その直後にはその全てが崩れて消えてしまった。


 残ったのは10体程度のリザードマンや数体の半魚人のみだ。

 そいつらはリザードマンの中に居た、上位個体かとも思ったが、それにしては装備や風格が貧弱で、ただのリザードマン達と変わりない。


「てぃやー!」「よいしょっと」「『雷剣』!」


 違和感があったとはいえ、そいつらはモンスターに違いなく、次の瞬間にはショウゾウ先生達に呆気なく倒され、魔核へと姿を変えた。


「結局、終わりみたいね。周りのモンスターを強化する力もあったのでしょうけれど、それも無くなっているようだし」


 つまり、通常モンスターがメカリザードマンによって、新たに別のリザードマンを召喚できる程にまで強化されていたという意味だろう。

 その強化含め、召喚されていた別のリザードマン全てが消失したとすると、メカリザードマンが力尽きたと考えるのが確かに一番自然な気はする。


 あまりにも呆気ない。

 これがまだ罠なんかじゃないかと、プールサイドまで近づくが、水が濁っており中は見えない。


「これで死んでるならバグかもな。メカだから水が入って壊れたと考えるのがシンプルだろうけど、溺死したなんて可能性もある」


 水に入ると一定時間内に陸地にあがらないと体力がいくらあっても即死するあの仕様だ。

 常識的に考えればメカなので呼吸はいらないなんて答えになるが、プログラム的には水属性のモンスターのみ水中で生存可能みたいなものの方が管理は楽ではある。


「2つ目は拍子抜けだったけど、3つ目の相談に取り掛かるか」


 ショウゾウ先生からの最後の相談――それは、物資の補給だ。

 ショウゾウ先生の『修正パッチ』が『倉庫』だとはいえ、取り出せるのはショウゾウ先生の所有物に限られる。

 趣味のキャンプ用にプレハブ小屋を所有していたショウゾウ先生においても、数十人を何日も生活させるだけの食糧は所持していなかった。

 どこかで補給が必要なのも当然といえる。



  ◇  ◇  ◇



 物資の補給をするのに丁度良い場所はすぐ近くにあるらしい。

 基本的にこの学校を含め、ここら一帯は高乃宮家の土地だ。

 つまり、学校以外の施設も集中しており、その中には文字通りの倉庫として活用している場所もあるらしい。


「こっちには居ない。通れそうだ」


 倉庫に向かうにあたり、最も障害となるのは校門から校舎間の道路上に居るドラゴンだ。

 それなりに強くなったとはいえ、あれに勝てる見込みはない。

 それならば、単純に回り道をすれば良い。

 校門に向かうには坂を通るのが基本だが、別の道もある。

 それがここだ。


「校門付近まで降りてきていなくて良かったわね」


 通ったのは、メカリザードマンが居た廃プールの奥のラグビー場を抜けた先にある階段だ。

 その階段を降りると、校門横のメイングラウンドに繋がり、そのグラウンド経由で校門から出ることができる。


「目的地は、大通りにあるタカヤギの裏の倉庫です。距離的には目と鼻の先ですが気を抜かずに行きましょう」


 ショウゾウ先生が言う、『タカヤギ』とは地域に広く展開してあるホームセンターだ。

 同じ『タカ』が付くのに、高乃宮家に関連する企業という認識は全くなかった。

 クラスメートに聞いてもほとんど意識している人物は居なかったものと思われる。

 流石にホームセンターであるため、必要な物は全て揃うだろう。


 特別モンスターと遭遇する事なく校門を潜る。

 それが単純に運が良かったと判断するのも可能ではあるが、その要因は背後の坂を登った先にいるドラゴンが原因だろう。

 その姿の断片はここからでも木々に隠されながらも辛うじて確認できる。

 どうやら丸くなって睡眠を取っている様だが、その頭部を見た瞬間息が止まった。


 目があった。

 くるまった姿から片目だけを開きこちらを見ていた。

 だがそれも一瞬の事だったようだ。

 興味なさげに再び目を閉じると、そのまま再び寝息を立て始めた。



  ◇  ◇  ◇



「モンスター全然居ないっすね」


 一応、全く居ない訳ではなく、ちらほらと数体のモンスターとは遭遇する。

 だが、空を飛び交うハーピィに比べると数が全然少ない。

 ハーピィは学校に居ると思われる神様に向かって群がって来ているものと考えていたので、他のモンスター達も群がって来ているかと思いきやそうでもない。

 そうなると、そもそもの前提すら間違えていたのではないかとすら思えてくる。


 こんなバグだらけの世界であるが故に、神様なんて存在を確信して捜していたが、本当にそうだったのか。

 例えば、完全に否定しないでも、あの天使やドラゴンあたりが神様と同一な存在であるとする考えはどうだろうか。

 どちらも異世界の重要そうな存在に見えるが、やはりゲームを模している世界である以上、どちらもゲームに成通しているようには見えず違和感がある。


 よし、考えるのを止めよう。

 そもそもこういう思考実験はナズナの専売特許だ。

 そう思い、ナズナに意見を求めようと考えたところで、その必要性が突如消失した。

 

「あ、居たっすね……。でも、あれ、なんすか?」


 大通りに出た時、あれだけ居ないと思っていたモンスターが居た。それも大量に。

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