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63話 『水銃』

 水砲に似た攻撃をして来たモンスターは、プールの飛び込み台の上に居た。

 他より1段高いので、周りのリザードマンを無視して攻撃してきた訳だが、そこに上がったが為に俺の視界に映り、防御が間に合った。


「あいつがボスっすかね。でも、思ったのと違うっすね」


 リザードマンの親玉なのでドラゴニュートかとも思ったが、見る限り別種、いや、もっと別の事情が察せられる。


「敵対戦力でもいるのかしらね」


「えぇ。校舎で見たものと色や形状の方向性が違います。恐らく別の勢力のものでしょう」


 そこに居たのは、姿こそリザードマンのフォルムをしているが、明らかに質感が金属であるモンスターだ。

 機械生物であれば、校舎の中のガードロボと同種かと考えたくなるが、ガードロボや隔壁は赤系統の色が入っていたのに対し、こいつは青系統の色になっている。

 そして、銃の様な武器を持っているところを見ると、ガードよりはアタックに重きを置いている様に見える。


 となると、校舎の元となっている施設側の勢力に対し、攻勢を掛けていた別勢力が居たという構図が想像できるが、そんな事情は無関係だ。

 今の俺達にしてみたらどちらも敵であることに変わりはない。


「こんな敵だったなら、ヤスタカに来て貰えば良かったな」


 ヤスタカが居ればハッキングして終了な簡単な敵だった。

 しかし、居ない以上は正攻法で倒すしかないだろう。


「ナズナ」


「えぇ。『電光』!」


 メカリザードマンに真っ直ぐ向かった雷魔法であるが、そうあっさりと倒す事はできず、左腕の盾により防がれた。


『ギュル、ギリルルル』


 そのメカリザードマンから機械音の様な声がすると、そいつの周囲にリザードマンが現れ、戦線に加わっていく。


 相手の攻撃手段は、どうやらリザードマンの壁と銃による遠距離攻撃の様だ。

 それを突破するには、親玉の遠距離攻撃を捌きながら周りのリザードマンを一掃するか、こっちも遠距離攻撃で対抗するかだ。

 前者の方が確実かもしれないが、流石に時間が掛かりすぎてしまうし、ボスを放置し続けるのも何かしてきそうで気持ち悪い。

 最悪逃げることも可能なので、ここは後者でいく。


「つまり、こちらは私達の役目ということですね」


「トカゲ肉にしてやるっす」


 右側にショウゾウ先生、左側にミフユが向かっていく。

 ショウゾウ先生は相変わらず安定しているが、ミフユも安定してリザードマンを切り刻んでいる。

 鬼包丁が機能しているということは、どうやらミフユにとってはリザードマンも食材として有効らしい。


「『電光』!」


 改めてナズナは雷魔法を放つが、それは再び雷魔法が盾で弾かれ、代わりに銃による水砲が放たれる。

 それを俺がステータスボードで防ぐが、恐らく暫くはこの繰り返しになるだろう。

 ショウゾウ先生やミフユはリザードマンを押しているのでこちらが優勢ではあるが、できればもう1手欲しいところではある。


『きゅきゅい』


 その1手を持っているであろう暴食スライムだが、そいつは前線に加わるでもなく、俺達の足元に居る。


「お前も手伝えよ。食い物ならあっちに沢山あるだろ」


 リザードマンの大部分は魔核も残さず消えてしまうため、暴食スライムにとっては全く美味しくないモンスターであるが、ミフユの方には副産物としてトカゲ肉が無数に落ちている。

 好き嫌いはあるらしいが、無機物すら消化するこいつにとってはご馳走だろう。


『きゅー……。きゅきゅい』


 その言葉に反応してやる気でも出したのか、暴食スライムから水魔法の前兆である青い光が発せられ、そこから水砲が放たれた。

 だが、その行動には2つ予想外の事があった。

 1つは暴食スライムが水砲を放った先が、周囲のリザードマンではなく、ナズナが対応していたメカリザードマンであることで、もう1つは水魔法であることだ。


 暴食スライムは他にも風魔法も使っていたし、あれだけ捕食していたので他の属性も使用可能だ。

 にも関わらず水属性の相手に、対抗するようにわざわざ水魔法の選択した理由が判らない。


 しかし、それに対するメカリザードマンの行動も不可解だった。

 今までナズナの雷魔法は盾で防いでいたにも関わらず、体勢を崩しながら回避していた。

 威力的には暴食スライムの水魔法よりも、ナズナの雷魔法の方が強いのでわざわざ回避しなくても言い筈だ。


 これらの違和感から導きだされる結論は――――、


「ナズナ、水魔法だ! あいつ、あの見た目で土属性だ」


 他のリザードマンは水属性で、そいつらのボスでリザードマンの形をし、青い色のボディをしているメカリザードマンは、同じく水属性だと思っていた。

 水属性には雷魔法が効き、土属性には無効だ。

 メカリザードマンがそれを認識した上であのフォルムをしているのは、塗壁の様な擬態のように相手を騙す罠の様なものだろう。

 盾で防いでいる様に見せていたのも偽装で、恐らく直接食らってもノーダメージだと思われる。

 そこまで考えると、水銃にせよ何故銃である必要があるのか、水銃の後ろに付いている謎の管は何故プールの方へ延びているのか、そんなところにも気付けたりする。


 どうやら暴食スライムはその偽装に気付き教えてくれていたらしい。


「機械――つまり、鉄の様な金属は土属性扱いという訳ね。それなら、『水網(ウォーターネット)』!」


 ナズナが新しい水魔法の詠唱をすると、水銃が吸収していたプールの水が、今度は網目状になって立ち上ぼった。

 雷魔法で使用した『雷網』の水魔法バージョンとでもいうものだろう。

 その網は、逃げることもできずにメカリザードマンを絡め取り、プールの中にまで引き摺り込んだ。

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