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38話 『宝箱』

「宝箱? 胸熱っすね!」


「そんなものまであるのね。でもどうかしら、ミミックや罠なんかもあるのでしょう?」


 俺が示した宝箱という意見についてはミフユもナズナも納得したようだ。

 その上で警戒してくるのは流石ナズナであるが、今回の場合は状況的にその可能性は低いと思っている。


「いや、こんな辺鄙な場所で、且つ明らかにレア感がある宝箱が罠な可能性はほとんどないだろう」


 あるとすれば空っぽであり、それをトリガに別イベントが進行するようなパターンだが、今の状況とはあっていない。


「気になるって言うならそうだな。なぁ、お前。あれ開けられるか?」


『きゅい』


 生け贄にするようで悪い気もするが、スライムであれば体長も小柄で、触手を伸ばせば開けられるのでリスクも低いだろう。

 まして、スライム自体もやる気があるようでスルスルと宝箱へと近づいていく。


 そして案の定何の問題もなく、パカッという効果音が鳴りそうな勢いで宝箱が開く。

 変化と言えば、宝箱自体が発していた虹色の光が消えたくらいか。


「ありがと、スラボウ。あ、なんか木の棒が入っているっすよ」


 スライムに続いて宝箱の中身を見たミフユは、その中身を手にしてこちらに掲げて見せてくる。


「杖ね。樫の杖と言ったところでしょう」


 ナズナの見解には同意だ。

 異世界による装備品であるためレアアイテムであるのは違いないが、そのデザインは簡素だ。

 2本の木が捻れたような構造をしており、その先端には丸い紫色の石が嵌め込まれている。

 とても最強の杖とは言えそうにないが、杖といえば当然魔法使い用の装備だろう。


「丁度良かったわね。これで多少でも威力が増せば対処できるかもしれないわ」


 ミフユは樫の杖を持ってくると、その杖をナズナに渡し、ナズナはステータスボードを見てその効果を確認し始める。


「どうっすか? 使えそうっすか?」


「そうね。多分これが魔力か何かのパラメータだと思うからこっちよりは十分効果があるわね」


 ナズナが持ち変えているのは、ゴーレム戦でミフユが持っていた神銀パイプだ。

 ミフユの方は模造刀を背中に背負っている。

 なんでも模造刀の方が格好いいからとかそんな理由で持ち変える結果となった。


「じゃあ、これはやっぱり貴方用ね」


 樫の杖を装備し直したナズナが、神銀パイプを俺に渡して来るので素直に受け取る。

 武器を選ぶ際、前衛の方が使い勝手が良さそうな装備であったが、持つだけで敏捷性等が向上する効果もあるためナズナに持たせた。

 その際、カナタさんがバールを渡して来たが、そこは待機組に何かあった時の為に固辞している。

 結果、装飾品としてアミュレットの装備はあるものの武器は装備していなかったので、助かると言えばその通りではある。


「じゃあ、装備も一新したことだしやってみるか」



  ◇  ◇  ◇



「『電光』!」


 ナズナが杖越しに放った雷魔法の第一撃目、その紫電はトレントの左側の太い枝に命中すると、その辺り一帯を吹き飛ばした。


「おぉ! 今までの2倍くらいあったっすよ」


「思ったより効いているな」


 属性の観点から考えると良いとこ等倍ダメージだと思っていたが、実際はそれ以上のダメージに見える。

 属性による相性は無関係で、個別に弱点等があるのかもしれないが、今回は良く効いているようなので考えるのは後にする。


『クカカカカカカカ』


 雷魔法の着弾により俺達に気づいたようで、トレントの枝からぶら下がる青い果実が口のように割れて笑い声の様な鳴き声を上げた。

 もしかすると、あの果実がトレントの本体なのかもしれない。


「来るぞ。ミフユ予定通り頼む。無理そうなら直ぐに撤退だ」


「あいあい。でも駄目そうならヘルプっすよ」


 ミフユはそう言うと肩から模造刀を抜き放ち、トレントへ向かっていった。

 案の定、トレントの根は近づいてきたミフユに反応して地面から無数の攻撃を仕掛けて来た。

 ミフユは「きゃあ」やら「うひゃ」やらの声と共にそんな攻撃をギリギリ回避するが、どの根の攻撃も不思議とそんなミフユを捕らえきれない。


「ナズナ!」


「判ってるわ。『電光』!」


 ミフユが囮になり、ナズナが攻撃する。

 これは先程考えた通りのフォーメーションだ。

 これで少しずつダメージを稼いで行けばいずれ倒せるだろう。


『クカカカカカカカ』


 だが、ナズナの雷魔法はトレントに弾かれた。

 どうやったのかと言えば、トレントは枝を動かし茶色の果実で雷魔法を防いでいた。


「なるほど、あれは土属性だな。あいつは色々な属性を持っているのか」


 先程、雷魔法の効果が高かったと感じたのは、水色――水属性の果実が全体の半数程を占めていたからだろう。

 今はゴーレムと同じ土属性の果実で防御したので、雷魔法は無効化されたという事だ。


「となると、これは俺がなんとかする必要があるか」


 簡単に思い付くのは、茶色い果実の動線にステータスボードを出現させる事だ。

 その間無防備になるのがネックだが、実行自体は可能だと思う。


「待って。属性の相性があるのであれば、1つ試したい事があるの」

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