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30話 『神様』

 ゲーム的な知識で言うならば、モンスターは何処からともなく湧いてくるし、問答無用で襲ってくる。

 一応、魔王の様なラスボスの影響と説明がある場合もあるが、メタ的な話をしてしまえば、そうでないとゲームとして成立しないからだ。

 つまり、ゲームの仕様的な話ではなく設定――人為的な思惑によるところが大きい。

 こういう分野であれば、俺よりナズナ側の領分になるだろう。


「何処からって、そりゃあ、あの隕石からじゃねぇか? 破裂したみたいだし中にわんさか詰まっていたとか」


 ナズナの疑問にカナタさんが安易に答えたが、まぁ、実際そんなところだろうとは思う。

 隕石の中に詰まっていたは言い過ぎであるが、隕石が原因であるのはほぼ間違いがない。


「まぁ、そうですね。ただそれだと外に溢れているのは判りますが、何で校舎の中にまで出現するんでしょう」


「何でって言われてもなぁ……。あぁ、ほら刺さっていたじゃねぇか。隕石の欠片が」


「そう、でもここには刺さっていません。これが1つ目ですね」


 カナタさんはナズナの説明で納得したのか「なるほどなぁ」という呟きをした後、ナズナを追い越して調理場の扉へと向かっていく。

 両手を広げて向かうその後ろ姿からは、「やはり難しい話はお手上げ」とでも言いたい事も伝わってくる。


「2つ目の何処に向かうって方ですけど、あのモンスター達に目的があるんですか? いきなり襲ってくる印象しかないんですが」


 カナタさんを引き継いだのは片岡だ。

 実際、片岡の言う通りだ。

 一応、芹沢の抱えるスライムに目を向けてみるが、『きゅい?』と鳴き声が返るのみだ。

 特別何か目的があるようには見えない。


「正にそれね。なんでモンスターは人を襲ってくるのかしら」


「えっと……」


 野生動物なら、食欲やら自己防衛やらの理由があるだろうが、ミフユ達が言うには死ぬようなダメージを浮けると消えてしまうようだし、自己防衛にせよあれだけ実力差があれ人間は脅威ではないだろう。


「こんなバグだらけな世界なんだから、単純にモンスターは人を襲うものってだけなんじゃないか?」


 片岡が答えに困窮している様なので、代わりに最初に感じた俺の考えを答えてみた。


 神様は恐らくゲームを参考にしてこの世界を構築している。

 だが、物理法則やプログラムへの知識不足なのか、慌ただしく構築したのかは判らないが、色々な考慮漏れがあってバグが多発している。

 であるならば、わざわざ特に意味のないモンスターの行動原理まで細かく設定している筈はないだろう。


「じゃあ、あのハーピィ達。なんで、こっちに来たのかしらね」


 ハーピィ達、あいつらは最初街中に出現していた。

 そいつらがこっちにやって来た訳だが、確かにただ人を襲うだけならそれはおかしい。

 人間なら街中にたくさん居る。

 わざわざ、うちの学校に来る必要もない。


「まさか、誰かを捜しているのか?」


「そうね。新校舎の方はモンスターがそこかしこに出たらしいけれど、旧校舎の方が少なかった理由もそれで説明付くわ」


 旧校舎に居たモンスターと言えば、最初に屋上に居たスライム、屋上への踊り場に居た悪魔、技術室に居たドッペルゲンガーか。

 そう言われてみれば、俺とナズナは倉庫の屋上におり、カナタさんは技術室で作業していた。

 ピンポイントに出現場所が被っている。


「人が居る場所に出現させているってことか」


「えぇ、そうよ。この建物には恐らく誰も居なかったでしょう。だからここにはモンスターも居ないって結論ね」


 途中まで話の流れが判らなかったが、どうやらこれがナズナが出した推測の根拠だ。

 恐らく、間違ってもいないだろう。

 となると、先程俺が話したモンスターに行動原理が設定されていないとする考えの方が間違えているように思える。


「ってことは、わざわざその誰かを捜すように設定をして…………いや、違うか」


 状況の変化に対応できずアワアワとしている芹沢の抱くスライムを横目で観察してみるが、こいつが何かの使命を帯びている様には思えない。

 それがこのスライム自体の性格に寄るものかもしれないが、少なくとも俺がモンスターであったのであれば捜したい人物が居る。


「設定以前の問題だな。俺なら、こんな元凶を作り出した人物を捜すだろう」


「そんな人が居るんすか?」


 ミフユがした質問は特に意識したものではないだろう。

 その質問に対する解答は、俺自身元々ある程度の確信はあったものの、どこか常識的な面で否定していたものになる。

 だが、今の状況ではその常識は完全に崩れさった。


「あぁ、いわゆる神様という奴だ。そしてそいつがきっと新校舎の何処かに居る」


 神様が居るにしても、どこか空の上や次元の間等、全く違う場所で静観しているものと思っていた。

 それがまさか現実に触れられる場所に居るだろうとの推測に至るとは思わなかった。

 しかし、そう考えれば色々と説明が付く。

 あまりに致命的なミスで世界をバグらせてしまい、地上に落とされた。

 もしくは逆に、誤って地上に落ちたのをなんとかしようとして、結果的にバグらせてしまった。

 あながち、そんな救いようのない神様なのだろう。

今日から暫くは1日1回更新になります

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