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25話 『不穏』

「ねえ、案外、普通に通り抜けられそうじゃない?」


「う、うん。そうだね」


 前に居る片岡と芹沢が外の様子を見て軽く安堵している。

 だが、それはどうだろう。

 俺としては逆に不穏な気配を感じている。


 この旧校舎の玄関――1年生の昇降口から見える光景からは、モンスターの気配が見受けられない。

 確かに昨日旧校舎の1階を調査した際もこちらの方向だけはモンスターが居なかったが、その理由には予想が付いていた。


「あぁ、あの竜もどこか消えてるし、丁度良いタイミングかもしれねぇな」


 カナタさんが片岡達に同意しているが、俺の懸念は正にそれだ。

 北側の軟式野球場、南側の軟式テニス場、東側のゴミ捨て場にはトカゲのようなモンスター――リザードマンがそれなりに居たのだが、この西側の広場にはモンスターがただ1匹(・・・・)しか居なかった。

 この変質した世界において、モンスター同士でも争いが起きるのは今朝確認している。

 つまり、ドラゴンの縄張りに入るのを怖れてモンスターが居なかったと説明がつく。


 しかし、そのドラゴンは今消えている。

 であるならば、何故他のモンスターが寄り付いて来ないのか。

 ドラゴンの匂いでも残っているだけとかであれば問題無いのだが。


「とりあえず、行ってみるしか無いわね。警戒を忘れないで」

 

 一番先頭に居るナズナは、俺が感じた懸念と同じ懸念は持っている筈だが、実際問題ナズナの言うように試してみるしかない。

 目的の建物は目と鼻の先なので、懸念とは裏腹に何も起きない可能性の方が高いだろう。


 真っ直ぐ進んだ先、凡そ10メートル程先に目的の学食の建物がある。

 一応、こちら向きに学食への扉は付いているが、今はその扉は施錠されている可能性が高い。

 となると、建物を左周りにもう10メートルくらい周った辺りにある正面玄関が当面の目的地だ。

 そこへ合図と共に全力で駆け込むのが今の計画となる。


 今日は昨日と真逆で、先頭はナズナとカナタさん、中央に片岡とスライムを抱いた芹沢、最後尾にミフユと俺が居る並びで走ることにしている。

 先頭がナズナとカナタさんなのは、単純に最高戦力だからだ。

 地上にモンスターは居ないと言っても、空にはハーピィは居る。

 走り出すと共にナズナは近くのハーピィへ雷魔法を撃つ手筈となっており、その護衛がミスリルバールを持つカナタさんだ。

 中央の2人は先頭の2人に遅れずに付いていくのが役目で、やや体力があるミフユと俺が殿を努める形となっている。


「ふふふ、何か出てきてもあたしの敵じゃないっすよ!」


 ミフユが変な自信を持っているのは、手に持っている鉄パイプ――もとい、神銀パイプに寄るものだ。

 カナタさんの精錬能力の実権で何度か強化した結果、不思議な事に持つだけで筋力や敏捷性に補正が掛かるようになった。

 そんな精錬装備を持っているのがカナタさんの他にミフユしか居ないのは、単純にカナタさんのSP(スキルポイント)切れによるものだ。

 どうやら、ミフユの魔法で使うポイントとは別扱いのようで水を飲んでも回復しなかった。


「じゃ、そろそろ行くわね。準備は良いですか?」


「おう、お前らしっかり付いてこいよ。3、2、1、ゴー」


 号令と共にカナタさんとナズナが走り出した。

 遅れて、片岡と芹沢が走り出す。


「さ、俺らもいくぞ」


「了解っす」


 昇降口を出ると、後は走るだけだ。

 外に出ると共に今まで見えなかった部分も見えてくるが、特別変わったところはない。

 右側には第2体育館が見えるし、左側には新校舎の昇降口があり、その隣の道はこの広場に上がるための坂道になっていて奥は見えない。

 その坂道を通って家に帰りたいところだが、坂道の途中にドラゴンが居る可能性は結構高そうだ。

 仮に居なかったとしても、モンスター溢れる町中を無事に潜り抜けられる自信はない。


「ふぎゅっ」


「え?」


 向いていた方向とは逆方向から、なんとも間抜けな声が聞こえ、隣に感じていた気配が消え去った。

 足を止めて振り返ると、なんてことはない。

 特にモンスターが居るわけでもなく、ただ単純にミフユが転んで倒れていた。


「おいおい、大丈夫か?」


「むー、なんか変に足がもつれて……痛いっす」


「あー、なるほど。原因は多分それだな」


 俺が示したのは、ミフユの持つ神銀パイプだ。

 ゲームでは装備品でステータスが強化されるのはよくある話だが、それがいきなり現実になった場合はどうだろう。

 脳が上手く処理できずに身体が制御できないなんて想像に難くない。

 バグとまでは言えないが、これも恐らく神様の想定外の事象に違いない。


「ほら、立てよ」


 昨日に続いて、ミフユが立ち上がるのを助ける為に今回も手を延ばす。

 が、そこで邪魔が入った。


「なんすか? 地震っすか?」


 ミフユの言うように地面が振動している。

 だが、今まで経験したような規則正しい振動とも違い、それでいて大きい。

 立ち続ける事ができず俺も尻餅をつくが、そこで振動が止まった。

 ただの地震ではなく、これが異世界絡みであることは直ぐに理解できた。

 

 今、自分とミフユが居る場所は何かの影に覆われている。

 つまり、背後――学食へ向かう道の間に巨大な何者かが地面から出現した。

 一瞬ドラゴンが帰ってきたとも思ったが、影の形はもっと丸みを帯びている。

 恐らく、別のモンスターだろう。


『ゴオオオオオオオオ!!』


 モンスターの雄叫びを聞き、その存在を確認するために振り向く。

 そこに居たのは、地面のコンクリートが盛り上がる様な胴体、そこからツギハギは無く、頭部と両腕が生えている人型のモンスターだ。

 下半身が地面に埋もれたタイプは初めて見るが、こういう土や金属で身体を構成するモンスターは割りと有名だ。

 そういうモンスターの名前は総じて――――、


「ゴーレム……なるほど、こいつのせいか」

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