表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/108

14話 『電気』

「結構旨いな、これ」


「そうね」


 まさかスライムが全てを食べ尽くしてしまうとは思っていなかったが、俺が寄せた段ボール1箱だけは残っていたので、なんとか昼飯にありつけている。


 尚、備品にあったレトルトパックは、実際は水を入れて暫く待つことで炊き込みご飯になるという代物で、レトルトと言うよりカップラーメンに近いものだった。

 お湯でなくても良いのが長期保存が必要な防災品として都合が良いのだろう。

 味は中々だ。

 流石に炊きたての炊き込みご飯とまではいかないが、十分食事を楽しめる程度には美味しい。

 ただし、ゆっくりしていられるのも今だけだろう。


「なあ、いったい何が起こったと思う?」


 隕石のエネルギーによって異世界が召喚された。

 それは判る。

 判りはするが、そもそもそんなことが起こり得るのか、仮に起こったとしてもこんなゲーム通りの世界になるのかと疑問点はいっぱいだ。


「そうね、例えば集団幻覚。ある意味これが現実的ね」


 今まで培ってきた常識で考えるならば、世界の異常より自分の異常を疑った方が理にかなっている。

 別に集団幻覚でなく俺自身の夢であるとしても成立している。

 だが、自分で頬をつねるまでもなく今が現実であることは把握している。

 そして、今もプラスチック製のスプーンを動かして口にご飯を運んでいるナズナの様子を見ると、ナズナもその可能性は低いと考えているのだろう。

 

 そのナズナがスプーンを動かす手を止めてこちらを直視してきた。

 恐らく、こちらの方が本題だろう。


「そうでないなら世界シミュレータ、もしくは異世界と知らず繋がりがあったとかかしらね」


 本題と思ったが、まだ理解できる内容になっていない。

 まだナズナが言わんとしている結論の片鱗も見えない。

 まぁ、こんな会話は日常茶飯事だ。

 いつも通り会話をすることで少しずつ理解していこう。


「そう言えば、シミュレータの話は前に聞いたな。繋がりって方はなんだ?」


 世界シミュレータとは、原子レベルまでプログラミングして世界をシミュレートすると全ての未来が予測できるという、オカルトながら現実的な理論に基づく物だった筈だ。

 要するに、この世界は最初からコンピュータの中の世界だとする話だろう。

 ゲームの様なモンスターが居るのだから、ここはゲームの中だと認識するのは判らなくもない。

 だが、それと並列的に挙げられたのが世界の繋がりってのはよく判らない。


「出てくる魔物の種類に一貫性が見られないってことよ。さっきも少し話したけれど、ハーピィはギリシア神話、悪魔は聖書に依るもので、スライムに至っては創作物に過ぎないのよ。ドラゴンは割りとどこにでも居るけれどね」


『きゅい?』


 呼ばれたと思ったのか、俺の横にいるスライムがナズナの方に向いたが、直ぐに興味を失って再びプルプルと元の作業に戻る。

 こいつがしているのは、炊き込みご飯をパックごとゆっくり消化する作業だ。

 つい先程、何百人分かの食糧を一呑にしてしまったが、まだ食欲はあるらしい。

 ただし、ゆっくり大事に食べろと言った結果か、ちまちまと食べるように変わっている。


「まぁ、確かにぐちゃぐちゃだよな。ゲームでは結構普通だけど」


「えぇ、そうだとすると逆ってことよ。元々そんなごちゃごちゃの世界があって、それを観測した人が神話や何やらを作ったという話ね」


 つまり、どちらが先かという話か。

 ただ、それだと疑問が残る。


「モンスターについてはそれだとして、それだとこれはいったい何になるんだ?」


 そう言って空中にステータスボードを出現させる。

 これが本当にステータスを示す物かはまだ不明であるが、思考で動作する点については完全にオーバーテクノロジーだ。

 世界シミュレータの方であれば納得出来るが、世界の繋がりの方は説明がつかない。


「そこは重要じゃないのよ。重要なのは、どのパターンにおいても管理者が居るってことね。どうにも、前任者よりも力不足のようだけれど」


「神は居る、と? 何か証拠はあるのか?」


 どうやらナズナが出した結論はこれだったようだ。

 しかし、オーバーテクノロジーやら異世界やら神様やら、どれをとっても可能性の優先度が高いとは思えない。

 そこから敢えて1つを選択しているとなると、何か根拠がある筈だ。


「えぇ、これよ」


 ナズナはそう言うと右手の親指と人差し指で何かを摘まんで見せるような仕草をしてきた。

 しかし、その指の間には何かがある様には見えず、崩れたOKサインにしか見えない。


「いったい何を――――何だ、それ?」


 ナズナに指摘しようとしたところで、急にそれは現れた。

 大きさ的には先程スライムに与えた飴玉と同じ様な球形の物質であり、淡く白い光を放っている。

 出現の仕方は俺が持っているステータスボードと同じであるため、恐らく異世界の物質だろう。


「これは、電気よ。電気魔法と言っても良いわね。ついさっき、付かない筈の電気が付いた時に手の中に現れたわ。まるで『魔法があるから電気が付くのは仕様です』なんて取って付けたようなタイミングでね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ